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ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄(上)』の続き

2010-05-08 11:10:00 | ノンジャンル
 (昨日の続きです。)
 次に民族による他民族の征服の歴史では、多くの食糧を得ることのできる環境にあった民族が余剰食糧によって移動、戦闘することが可能になったこと、馬を家畜化することができる環境下にあった民族が特に早期に征服戦争を推進していったこと、家畜を早くから飼うことができる環境下にあった民族は家畜を通して様々な病原菌に対する耐性を身につけ、そのことによってそれらの民族に接触された他民族は病原菌を移されることにより死に絶えたことが多く見られることが語られます。
 以下、食糧生産に対して地域的環境に恵まれていた地域、恵まれていなかった地域の具体例が示され、農業の発生状況についても具体例を挙げて説明がなされ、いかにして現在の家畜が誕生していったのかも具体的に説明され(家畜に選ばれた動物の条件として、餌の問題、成長速度の問題、繁殖上の問題、気性の問題、序列性のある集団を形成しているかどうかという問題が挙げられています)、文化の伝播の速度が東西方向には早く、南北方向には遅い(類似の気候間では早く、異なる気候間では遅い)という当たり前といえば当たり前の事実が確認され、最後に家畜を媒介して病原菌が他民族を滅亡させた具体例が語られます。
 
 この本は鋭い指摘が随所でなされているのですが、そのうちの幾つかをここに紹介すると、例えば、著者が現在のニューギニア人のほうが現在の西洋人よりも頭がいいと感じているその理由として、西洋人は生活環境に恵まれているので遺伝的資質に劣るものも淘汰されずに生き延び続けてしまうこと、そして西洋人の子供たちがテレビを見るなどして受動的に時間を多く過ごしてしまっているのに対し、ニューギニアの子供たちは受動的な娯楽には恵まれず、たいていの場合、他の子供たちや大人と会話したり遊んだりして、積極的に時間を過ごし、知的な刺激を多く受ける中で成長していることが指摘されていること、そして当たり前のことなのですが、歴史は恵まれた環境で育たった民族が恵まれない環境で暮らして来た民族を征服することによって作られたものであって、もともと「頭のいい」民族が「頭の悪い」民族を征服したことなど一度としてないこと、です。この本を読めば民族の優劣などという愚かな(というか実証的ではない)概念がいかに机上の空論であるかがよく理解できると思います。今まで直感的に感じていたことがこれだけ実証的に「正しい」ことだと説明されていることは、今考えていることに後ろ楯を与えてもらう気がして意を強くしました。ということで、人種差別の好きな方、リベラルな考え方が嫌いな方には特にオススメです。

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