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ジョン・フォード監督『海の底』

2011-08-06 06:21:00 | ノンジャンル
 ジョン・フォード監督の'31年作品『海の底』をWOWOWで再見しました。
 洋上の帆船の映像の後、「米軍 第2偽装船 航海日誌 艦長ボブ・キングスリー 米軍海軍少佐」と印字された冊子が映され、「1918年8月18日 1,ヨークタウン港を秘密裏に出港 2,目的地不明 3,作戦任務は全乗員に秘すること」「以下の者は乗組員名簿より除外のこと a、艦上未経験の海軍予備役部隊 b、ミズーリ号の優秀な機銃班」という内容も読み取れます。キングスリー艦長は民間の輸送船を装って囮となり、有能なシュトイベン男爵率いるUボート・U172を誘い出し、味方の潜水艦の魚雷で撃沈させる作戦を、洋上で初めて乗組員らに明かし、艦上に隠された見事な機銃を披露します。
 Uボートが補給基地として使っているカナリア諸島に至った偽装船は、そこに停泊しますが、キングスリーは秘密を乗組員に守らせるため、女性と親しくなることと強い酒を禁じて上陸を許可します。しかしキングスリー自身がアンナ・リーという女性とすぐに親しくなり、ドイツ軍の女スパイである酒場の女は、有能なキャボット少佐をたらし込むことに成功し、薬を盛って少佐を眠らせ、彼の身元を突き止め、ドイツの将校に教えます。
 キャボットを見つけるのを諦めた艦長は彼を島に置いて出港してしまい、キャボットが気が付いた時には、偽装船は既に沖合いに出てしまっていました。酒場の女がドイツ将校から金を受け取っているところを見たキャボットは、ドイツ将校たちとアンナ・リーが乗りU172へと向かう船に忍び込むことに成功します。
 洋上で浮上したU172へ横付けした船は、水と燃料をU172に補給し、アンナ・リーはU172の艦長である兄と束の間の再会を喜び合います。キャボットは彼らのすきをついて、船に穴を開け、燃料に火をつけますが、見つかってその場で射殺されます。
 キャボットの遺体は燃える石油缶とともに偽装船に発見され、正式に水葬に付され、船が沈没して救命ボートに乗っていたアンナ・リーらも偽装船に助けられます。やがて偽装船に気付いたU172は浮上し、接近を続けながら偽造船への砲撃を開始し、偽装船は民間人を装った乗組員がパニックを演じる一方、近くにいる味方の潜水艦にU172の出現を知らせます。
 機銃の射程にU172が入るまで耐えた偽装船は、射程に入るとすぐに機銃による反撃を開始し、また味方の潜水艦からの魚雷もU172に命中します。U172の船長たちは甲板に出てくると、脱出を試みずに自分たちの潜水艦と運命をともにし、キングスリーらは彼らを救おうとしますが、ドイツ軍の将校たちはあっという間に海に飲み込まれていきます。
 キングスリーらは残ったドイツ軍の生存者を助け、港の捕虜収容所まで送りますが、アンナ・リーはそこで自分がドイツ人であることを明かし、困難に直面している故国に帰ることを告げ、捕虜の一団に自ら合流していくのでした。

 潜水艦の甲板上に取り付けられたカメラが、海面下から浮上する潜水艦の甲板の様子を、潜水艦の甲板目線で捕えた素晴らしいショット、マストのてっぺんから海へ身を踊らせるキャボットの見事な飛び込みのショット、そして潜水艦の甲板上に立つドイツ将校がみるみる海水に飲み込まれていくショットは、この映画の白眉だったと思います。それ以外にも、島に取り残されたキャボットを夕陽の逆光で捕えたショットや、その直後のやはり夕闇迫る偽装船上の逆光のシルエットの画面なども記憶に残るものでした。メロドラマとしては古びていると思いましたが、生々しいショットが今でも息づいている、そんな映画だった思います。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/

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