ルイ・フイヤード監督の1914年作品『ファントマの偽判事』をDVDで観ました。
リフレットの「物語の構成」に一部加筆修正させていただくと、
「プロローグ 財政難に陥ったテルガル侯爵が、夫人の宝石を売り払うことに決める。侯爵が翌日にサン=カレのホテルの一室(30号室)で宝石商と会合する取り決めをしているのを、メイドのローザが盗み聞きする。次の日、ホテルで宝石商と会った侯爵は、宝石の買い取り料金として小切手を渡され落胆する。そこで宝石商は部屋の机の引き出しに買い取ったばかりの宝石箱を隠しておいて、近場の銀行へ侯爵を連れて行き、現金25万フランを渡す。二人が部屋に戻って来ると宝石箱が空になっており、宝石商は警察を呼ぶ。捜査の結果、30号室と隣の29号室を仕切る壁に穴が開けられていた。その部屋に滞在していた聖職者が疑われるが、そこに列車から投げ落とされた聖職者の衣服を携えた二人の女が姿をあらわし、彼の嫌疑は晴れる。聖職者に化けて29号室に出入りしていた賊が真犯人だったのだ。その後、帰宅途中の侯爵は二人組のチンピラ(ベベとリポナール)に襲われて25万フランをうばわれる。
「第一章 ルーヴェンの囚人 ジュ―ヴがファンドールに、ファントマはベルギーの刑務所に収監中だと話す。ジュ―ヴの発案で、ベルギーの刑務所内で彼とファントマを入れ替える計画が移される。計画は成功し、看守の制服に身を包んだ刑務所を出てゆくファントマを、二人のフランスの刑事が尾行する。
「第二章 プラディエ予審判事 パリ行きの列車に乗り込んで尾行に気づいたファントマは、刑事たちをまいて別の列車(貨物列車)に乗る。途中駅で列車の出発時刻に遅れ、貨物車両に慌てて乗り込んだプラディエ予審判事(サン=カレに赴任するべく旅をしていた)は、さっそくファントマの餌食となる。殺した判事になりすましたファントマは、サン=カレに到着。初めて扱うことになった事件は「プロローグ」で描かれた宝石および25万フランの盗難だった。
「第三章 泥棒判事 ファントマは手下のベベとリボナールが潜伏するアジトを突き止め、二人に宝石とカネを寄越せと要求する、その後、侯爵の狩猟パーティーに招かれたプラディエ=ファントマは、侯爵夫人が愛人に宛てた手紙を見つける。そこには、狩猟中に体調を崩し、自室に戻ってうたたねを始めた侯爵をガス中毒死させたプラディエ=ファントマは、その後夫人に例の手紙の件を持ち出し、50万フラン払わなければ殺人で警察に突き出すと伝えて彼女を強請る。
ファントマは教会でリボナールと落ち合うと、鐘のなかに隠してある宝石箱を取りに行かせる。リボナールが箱を落とすと、ファントマは梯子を外して前者が降りて来られないようにするが、箱の中身は空だった。侯爵の葬儀に出席しなければならないプラディエ=ファントマはひとまず宝石を諦める。その後、葬儀の最中に鐘が鳴らされ、いまだ鐘の舌(ぜつ)にしがみついていたリボナールは内壁に激突して死亡、携えていた宝石類は彼の血とともに列席者に降り注ぐ。ファントマは「証拠」と称して宝石を懐に入れる。
「第四章 ルーヴェンの犯罪人 ホテルに食事をしに来たファンドールは、たまたまた遭遇したプラディエ=ファントマに疑念を抱く。ジュ―ヴ(いまだファントマと思われて、ベルギーの刑務所に収監中)は取調べのため、フランスに引き渡されることになる。捜査網が狭まってきたことを察したプラディエ=ファントマは、二人の手下(ベベとその子分)を釈放して、ジュ―ヴが到着したら殺させるべく派遣する。だが二人がいざ囚人に襲いかかってみると、それはジュ―ヴだった。襲撃を予期して二人の警官とともに囮になったのだ。逮捕された手下を、プラディエ=ファントマは刑務所送りにせざるをえなくなる。ベベたちの釈放を許可したことで、プラディエに対するファンドールの疑念は深まる。
ベルナルディ検事のもとへ「ファントマ」が連行されてくるが、検事やその場にいたファンドールはすぐさまそれがジュ―ヴであることに気づく。ジュ―ヴとファンドールはベルナルディに頼んで建物を封鎖してもらい、プラディエになりすましたファントマが外へ出られないようにする。まもなく捉えられることを悟ったファントマは、看守長にメモを渡し、この命令は内密にかつ間違いなく遂行しなければクビだと話す。やがてジュ―ヴやファンドールらが判事室に入って来てファントマを連行するが、悪漢は動じない。翌日、ジュ―ヴとファンドールが刑務所に赴くと、ファントマは「プラティエ予審判事」の命令で真夜中に釈放されていた。「囚人はファントマではなくジュ―ヴであり、これは捜査上の戦略的逮捕あった」のだという理由で、こうして、またもファントマは法の手を逃れたのだった。
ここでもすべて固定ショットでした。