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鈴木清順監督『踏みはずした春』その3

2021-03-27 09:03:00 | ノンジャンル
 2020年刊行の『秋吉久美子 調書』を読みました。樋口尚文さんによるロング・インタビューと、やはり樋口さんによる俳優論が掲載されている本で、秋吉さんのインテリぶりがうかがわれる本でした。

 さて、また昨日の続きです。

 俯瞰で拘置所の信夫と、待合室の恵子。面会で駆け寄る恵子とゆっくる加速していく信夫。二人の間には金網。「信夫君」。包帯に包まれた右手を見て「その傷」「姉ちゃん、俺一体どうしたらいいんだよ。俺が和江をやる訳ねえじゃねえか」「わかってるわ。あなたがそんなことする訳ないってこと、知ってるわ。信じてるわよ」。金網に頭をくっつける信夫。「信夫君」。右手同士をくっつける。信夫、後ろを指さし「あいつらだ。そこにいる奴らだ。みんな寄ってたかって、俺をまた少年院に送り込もうとしやがってる。俺は和江にそんなことする訳がないって言っても、こん畜生、(中略)俺が少年院に二度いたってだけで、そんなに俺を信用できないのかよ」「知ってる。知ってるわよ。ただの間違いだと思うの。信夫君、こっちへ来て。負けたらダメよ。自分を大事にするのよ。どんなことがあっても、自分を大事にするのよ」「だけど、だけどよ。姉ちゃん、和江、和江の奴、もうどうなったっていいんだ。刑務所だって少年院だって、どこにだって行ってやらあ」「そんな弱気を出しちゃダメよ。和江さんだってまだはっきりわからないじゃない」「そんな気休めはよしてくれ。梶田、梶田の奴、殺してやる」「信夫君」「よう、出してくれよ。ちきしょう、姉ちゃん、出してくれよ。よう。よう」「落ち着いて」刑事「やめにせんか」「信夫ちゃん! あんたが正しいのよ。あんたが乱暴しないってこと、よく知ってるのよ」。信夫の左手を両手で包む。刑事、信夫の肩を叩き、「おい、時間だ」。
 取調べ室。「どうも腑に落ちない点がありますので、念のためトンガリと会わしてみたら、どうでしょう?」
 ざあざあ降りの雨の中、夜。傘を差して帰る恵子。
 口笛を吹きながら、取調べ室へ来るトンガリ。
「だんな、タバコぐらい恵んでくれよ。え? いいじゃない」。投げられたタバコ。「いいんですかい?」。信夫に気づき、驚いて壁に引っ付く。「塚本、お前が主犯だと言った笠原は、お前と絶交したと言ってるんだ」「お前が悪いことしたっていうんで、笠原はお前を殴ったと言ってるんだ。どうなんだよ。え? 塚本」信夫「おい、お前、俺に殴られたこと、忘れたのか? 仲間を売って恥ずかしくねえのかよ。トンガリ、てめえ、あの時なんと言ったんだよ。少なくとも絶対やらねえって約束したじゃねえか。その約束を破ったから俺はぶん殴ったんだ。(中略)。情けなかったんだよ」「兄貴、勘弁してくれよ。俺やめようやめようと思ったんだよ。俺、兄貴に殴られてカーっときちゃって、それで梶田と組んだんだよ」「それで梶田までやったんかい?」。首振るトンガリ。「和江を一体どうしてくれるんだ。ちきしょう。傷物にしやがって」「でもよう,和ちゃん、何でもなかったんだから。兄貴、勘弁してくれよ。なっ、なっ」「何でもなかった? 嘘つけ」「お前本当に知らんのか?」「~の男が無事助けたんだ。笠原、私たちが悪かった。何もないお前を疑ってたんだから。勘弁してくれよ。な。梶田たちはお前の一番大切な物を壊して、お前の鼻を明かそうとしたんだ。お前はいつまでも奴らと付き合ってると、また和江さんって子、いじめられるよ。わかったな。笠原」。
 バスの事務所。「おい、BBS、今日は元気がないな」「やだわ」「覚えちゃったよ」「おい、緑川君、電話だよ。やっぱりBBSからだよ」恵子「もしもし。あっ、信夫が無実で……、やっぱり梶田君だったんですか」。
 舗道。恵子に山田「警察からの電話だと梶田と喧嘩したときになくしたネクタイが、その関係のデザイナーに拾われて、使いたいって言ってきてるそうだ」「へーえ、信夫君の描いたネクタイが」「何て言うのかなあ。ロカビリー時代のセンスに会うんだろ?」「信夫君、そこで働けるようになるといいわね」「うん。多分そうなるだろう。和江さんにも連絡したら、とても喜んでいたよ」。走り出す恵子。前から信夫。和江と信夫、出会う。二人、笑顔に。心配そうに二人を見つめる恵子。山田と車の後ろに隠れる。腕を組んで歩きだす信夫と和江。「私たちの仕事は終わったらしいわ」。二人の後ろ姿を見送る恵子と、恵子の様子を見守る山田。山田「これでいいんだよ。BBSは人の幸せを遠くから見守ってやるのが本当なんだ」。音楽、長調に。恵子、しゃがんで靴紐を直し、空を見上げると笑顔に。元気に歩き出す恵子の映像で、映画は終わる。

 移動撮影が多く、コントラストのきいた黒い色が印象的な映画でした。