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斎藤美奈子さんのコラム・その9

2017-01-04 11:21:00 | ノンジャンル
恒例となった、水曜日の東京新聞に掲載されている、斎藤美奈子さんのコラム「本音のコラム」の第9弾。
まず、12月7日に掲載された「おもてなしの目玉」と題されたコラム。
「旅行サイト『トリップアドバイザー』が6月に発表した『外国人に人気の観光スポット2016』を見てみた。
一位は伏見稲荷神社、二位は広島平和記念資料館、三位が厳島神社、四位が東大寺、五位がサムライ剣舞シアター。以下六位新宿御苑、七位奈良公園、八位鹿苑寺(金閣寺)、九位アキバフクロウ、十位清水寺と続く。
サムライ剣舞シアターとは剣舞の鑑賞や体験が楽しめる京都の施設。アキバフクロウは猛きん類のフクロウとふれあえる秋葉原のカフェだそう。新旧とりまぜ日本的な文化や景観が支持を集めているのにまあまあ納得。
ところで政府は、こうした観光地だけでは魅力に乏しく経済効果も低いので、カジノを観光振興の目玉にしたいという。
それはそれはけっこうなお話で、さすがは『美しい国』を標榜する民度の高い方々だ。外国人観光客の増加を目指してここまでやってきた『おもてなしの心』は、なーんだ、ギャンブルに帰結するものだったのね。
6日に衆院を通過したカジノ解禁法案には珍しく全国紙すべてが(たぶん地方紙も)反対した。それでも強引に採決したのは、2020年の東京五輪に間に合わせたいという思惑があるからだろう。しかし、マカオやシンガポールと競争して勝てますかね。日本には日本のブランドイメージがあるだろうに、バカみたい。」
 また、12月14日に掲載された「あの賞の価値」と題されたコラム。
「流行語大賞や『今年の漢字』が話題になる中、この時期になると気になる賞がもうひとつある。ブラック企業大賞だ。
今年で五回目を迎える同賞は、労働法などの法令に抵触する可能性のある企業を表彰する賞で、一日に発表された2016年のノミネート企業は全十社。エイジス(棚卸し代行業)、電通、ドン・キホーテ(ディスカウントストア)、プリントパック(印刷サービス)、関西電力、佐川急便、サトレストランシステムズ(飲食店)、仁和寺(宗教法人)、ディスグランデ介護(デイサービス)、日本郵便だ。
今年は違法な長時間労働を強いる企業が多く、自殺を含めて社員の死亡したケースも目立つ。
流行語大賞にはあんなに大騒ぎするマスメディア(特にテレビ)がこの賞を無視する最大の理由は、もちろん広告がらみで大企業を敵に回したくないからだろう。
だが、不名誉なレッテルを貼られた企業の側もこの賞は屁とも思っていない気がする。大賞を受賞した企業は、12年は東京電力、13年はワタミフードサービス、14年はヤマダ電機、15年はセブン---イレブン・ジャパンだったけど、その後、少しは労働条件が改善されたのだろうか。
それでも企業イメージは確実に悪化する。地味でも働く側に立った賞だ。ほんとはもっと大騒ぎしてもいいんじゃない?」
また、1月4日に掲載された「開戦80年の年」と題されたコラム。
「12月27日(日本時間28日い)、オバマ大統領とともに日米開戦の地であるハワイの真珠湾を訪問した安倍首相。
日米首脳は『歴史的和解』を強調し、メディアも一応歓迎ムードだけれども、なんとなく白けた気分は否めない。
ひとつには『日米なんて事実上とっくに和解してんじゃん』ということで、和解どころか日本は米国中心の軍事同盟にとうの昔に取り込まれている。もうひとつは『不戦の誓いなんて口先だけじゃん』ということで、片方では集団的自衛権の行使を認め、改憲を目指す首相が美辞麗句をいくら重ねても『巧言令色鮮(すくな)し仁』という感想しか浮かばない。現にハワイから帰国した翌日、首相に同行した稲田防衛相はもう靖国神社に参拝した。
今年は日中開戦80年の年である。1937年7月7日、中国の北京郊外の盧溝橋付近で日本軍と中国軍が衝突(盧溝橋事件)、日中戦争がはじまった。同年12月には南京大虐殺が起き、南京陥落の際には日本中が提灯行列で祝った。
安倍首相の真珠湾訪問を受け、中国外務省の華春瑩報道官は『戦争の犠牲者の弔いができる場所は中国にも多くある』と述べたそうだ。『歴史的和解』というのなら、日中開戦の地にこそ首相は足を運ぶべきだろう。むろんそのためには加害の歴史と向き合わなくてはならない。その覚悟はある?」

いつもと同じく、切り口の鋭い文章でした。