クエンティン・タランティーノとブラッド・ピットの共演！
さすが返金保証キャンペーンをうっただけのことはあって、物語は5章仕立てでナチ占領下のフランスを舞台にテンポよく進んでいく。1941年、フランスのある農家に「ユダヤ・ハンター」と呼ばれるナチス将校のハンス・ランダ大佐がやってきて匿われていたユダヤ人一家を発見し始末するが、そこからただ一人逃げ延びたのがショシャナ（メラニー・ロラン）。
場面は変わり、アメリカ軍によるバスターズの結成からそのナチ狩りを痛快に描く。バスターズの名はヨーロッパ中に響き渡り、ヒットラーでさえ忌み嫌うものとなっていた。そして時は過ぎ1944年、ショシャナはエマニエル・ミミューと名を変えてパリで映画館主となっていた。ショシャナに惹かれるドイツ軍将校のツォラーは、鐘楼にこもり一人で敵を撃退したドイツの英雄で、彼を主人公にした国策映画のプレミア上映をショシャナの映画館でやるようゲッペルスを口説き落とす。密かに復讐の機会を待っていたショシャナは、肉親の仇である「ユダヤ・ハンター」ハンス・ランダ大佐もこのプレミア上映に関わっていると知り、この機会に復讐を実行するべく、使用人で恋人のマルセルと準備を進める。
一方、イギリスもプレミア上映の情報をかぎつけて、オペレーション・キノを計画する。ドイツ語とドイツ映画に堪能な兵士を選抜し、バスターズの元に送り込む。バスターズではドイツ語を流暢に話す二人がこの作戦に従事して、バスターズの隊長アルド中尉（ブラッド・ピット）たちは後方支援。内通しているドイツ人女優ハマーシュマルクと郊外の酒場で落ち合うが、あいにくその日はドイツ兵がパーティをやっていた。ほろ酔い気分のドイツ兵に邪魔され作戦の話もできないうちに、ドイツ語のアクセントの違いを指摘され、さらにナチのＳＳ将校まで出てきて絶体絶命。案の定、バスターズとドイツ兵とは銃撃戦となり、生き延びたのはハマーシュマルクだけだった。
面子が狂ったオペレーション・キノだが、プレミア上映は予定どおり行われる。急遽、残りのバスターズの面々がハマーシュマルクと一緒にプレミアに行くことに。しかし、ハンス・ランダ大佐は郊外の酒場の銃撃戦を見逃してはいなかった。
プレミア上映の当日、ショシャナ、バスターズ、ナチ、そして「ユダヤ・ハンター」それぞれが思惑を抱いてショシャナの映画館に集まる。。。
さすがタランティーノ監督、押さえどころをきっちりと押さえていて、ナチを描いた戦争映画でもエンタメ精神を忘れずに観客を楽しませてくれます。ブラッド・ピットも『ベンジャミン・バトン』のときのスーパーメイク＆ＣＧとは違って、生の迫力を出してます。でもこんなに皺が多くなったんだと、ちょっとびっくり。
ナチへの恨みと復讐心で生きているショシャナはもちろんのこと、気味が悪いほどなんでも見透かしているような「ユダヤ・ハンター」ハンス・ランダ大佐、アクセントを聞き分ける恐ろしいＳＳ将校、好青年っぽく振舞っているが結局は居丈高になるツォラーなど、キャラ立ちもばっちり。ハンス・ランダ大佐を演じたクリストフ・ヴァルツはカンヌで主演男優賞を獲得していて、さすがの名演技でした。ハマーシュマルクが内通者にしてはドイツ兵がくる地下の酒場を密会の場にするなど抜けている感じがしたけれど、女優だからそんなものなのかな。そして指の立て方がドイツとイギリスで異なるなんて、まるで広東語と北京語の違いのようなマニアックな演出ですね。
そういえば、映画フィルムが燃えやすいっていうのは『ニューシネマパラダイス』でもあって、アルフレードの火事の原因も映画フィルムだったんだよな。
農家でのユダヤ人の惨殺に始まり、バスターズのナチ狩り、酒場の銃撃戦、ツォラーの主演映画、そしてプレミア上映の惨劇などバタバタと山のように人が死んでいくんだけど、それほど湿っぽい雰囲気にならなかったのもタランティーノの演出のなせるわざか。バスターズのナチ狩りで、生かして解放する兵士の額にナチのマークを刻みつけるアルド中尉のやり方が衝撃的。軍服を脱げば一般人と変わらないナチに対して、生涯消えない傷跡をその額に刻印する、そのやり方に感心して最後にニヤリとさせてくれる。
超一級の娯楽映画でした。
公式サイトはこちら。
12/5 川崎チネチッタ
12/26からシネスイッチ銀座他で公開！
