カンヌ国際映画祭でカメラドールを受賞した作品。シンガポールが抱える社会問題を背景にして、やんちゃな男の子ジャールーとフィリピン人のメイド、テレサの交流を描く。
共働きの夫婦はやんちゃな一人息子ジャールーに手を焼き、もうすぐ下の子も産まれることからフィリピン人のメイド、テレサを雇う。しかし、ジャールーはテレサの言うことを聞かないどころか、たちの悪いイタズラまで仕掛けてくる。故郷に残してきた幼い子供のため必死にメイドの仕事をするテレサは、ジャールーのイタズラでクビにされてはたまらないと悪いことは容赦なく叱りつける。自分と真剣に向き合ってくれるテレサにジャールーは次第に心を開くが、ジャールーの父親の会社が倒産して風向きが変わってくる。。
小気味いい編集でテンポよく物語が進んでいきます。このスピード感もシンガポール社会の特徴なのでしょうか。リーマンショック後の不景気で母親が勤める会社では解雇が続出し、ジャールー一家の住んでいる公共高層住宅では飛び降り自殺もありました。小学校でムチ打ちの体罰が残っていることも驚きです。校長先生がインド系だったように色んな人種の人がいて、宗教や考え方も一つではないから却ってわかりやすいものが残っているのかもしれません。
腕を骨折して不自由なジャールーの髪の毛を洗ったり、ギブスを外すところに立ち会ったり、親戚のお祝いの宴会で狭くて個室に席がなく、部屋の外で食事するテレサのところでジャールーが一緒にご飯を食べたり、それぞれのシーンでテレサとジャールーの間が親密になっていく様子が手に取るように感じられます。母親は、かまってやれていないという負い目があるだけになおさら嫉妬心を抱くのかも。
父親の失業、という下手をしたら一家離散にもなりかねない大事件が起きているのに、あくまでジャールーとテレサに焦点を当てているから、大きなうねりとして2人の人生に影響してくるけれど、失業そのものは淡々と日常を流れていき単なる出来事の一つになっていきます。
鮮やかというわけではないし、リアルを追求しているわけでもない、でもどこかしら惹きこまれてしまう、そんな不思議な魅力のある映画でした。
公式サイトはこちら。
12/14 新宿K'sシネマ
『KANO』
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