・・・ ブームになるか「コンビ作家」 ・・・
♠ わたくしが今夜は君になりて書く 「仮面を脱ぐ」とう推理小説 松井多絵子
共同のペンネームを使い、友人同士や夫婦で小説を書く 「コンビ作家」が相次いでいるらしい。漫才や歌手などコンビで活躍している人たちが多いのだから当然かもしれないが。
▲ ミステリー小説 『女王はかえらない』 が昨年の 「このミステリーはすごい!大賞」に選ばれた。著者・ 降田天は 早大出身の同級女性コンビ、荻野瑛(33) と 鮎川颯(33) 大学時代から新人賞に小説を投稿していた鮎川、その原稿を見た荻野は「文章は上手、物語の展開を変えればもっと面白くなる」、そして原案は荻野、執筆は鮎川という分業で30冊以上を生み出してきた。
▲ 獄中小説 『女たちの審判』で日経小説大賞受賞の作家・紺野仲右ヱ門は紺野信吾
(51)と真美子(53)夫妻の共同ペンネーム。夫は身体教育技法の指導者。妻は主婦業の傍ら小説を書いてきた。「自分1人では書かないものが生まれた」と語る。
▲ 青春小説 『僕は小説が書けない』 は人気作家・中村行航と中田永一の共作。
芝浦工大が開発したパソコンの小説創ソフトを使い、2人が交互に書き継いだ。
作家の辻原登は「共作は文学の可能性を広げる」と評価する。「そもそも、1人の作家が自己表現として一つの文学作品を生み出すという考え方自体が、近代が生んだ幻想」と指摘。例えば「四谷怪談で知られる鶴屋南北は襲名制のペンネーム。共作は1人では出せぬ魅力があるとしたら、今後 、コンビ作家がブームになるかもしれない。1人称文学と言われる短歌では、コンビ歌人なんて考えられない。でも短歌結社やグループ誌などは古くからあり、普及している。歌会や添削などで、作品は共作になってしまうこともあるが。
5月9日 松井多絵子