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「連作はとにかく一気呵成の勢いでつくる。考えすぎるとかえってつまらなくなる。そのときどきの勢いに任せてしまう能天気な没頭が力を持つのではないだろうか」と「短歌5月」で書いているのは「塔短歌会」✿大森静佳。2010年に角川短歌賞を受賞している。まだ20代。
「応募作<硝子の駒>を作ったのは大学二回生の春で、五十首という長さは初めてだった。知識も自覚的な方法もなく、短歌に夢中だということだけが武器だった」。それでも彼女なりに戦略はあったのだ。箇条書きにしてみる。
① 初句から順に書きすすめる。1首目を詠んだその勢いで2首目を、3首目を。
② 言葉が言葉を導く、理性では辿りつけない思いがけない所へ連れて行ってくれる。
③ 響き合う、ということを大切にする。言葉やイメージが縺れ合い溶けあう効果。
④ 「言い尽くせない何か」を1首の裏に感じさせる。静かな熱が必要である。
⑤ 50首という長さの場合、中盤でどう盛り上げるか、転調が重要。
※ 光りつつ死ぬとうことをひけらかし水族館に魚群が光る (受賞作より)
⑥ イメージの連鎖が分かりやすかったり、筋が通り過ぎると退屈だ。
大森静佳は5月の数日間、コタツに入り夜明けまで熱に浮かされたように歌を作ったそうだ。(トマトジュースばかり飲みながら)。私はトマトジュースを飲みながら歌を作ると駄作になるのでトマトはあてにならない。選考委員を退屈させない作品をつくるにはは作者のパワーが何より大切だろう。「うまい短歌」には飽きている選考委員たちにアナタの歌を買わせる、アナタはセールスマン。ひたむきに作歌している熱意が伝わる歌を詠めばいいのかもしれない。5月はもう残り少なくなった。やるなら今ですね。
四百の窓を開いてわが歌を待ちわびている原稿用紙
5月22日 松井多絵子