えくぼ

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「それから」を読む ⑤

2015-05-18 09:05:27 | 歌う

            ・・・ 「それから」を読む ⑤ ・・・

☁ 窓を打つ夜風がこころの窓を打ち打ちやまぬまま夜はふけゆく   松井多絵子

 「男には友情があるが女にはない」が口癖の女がいる。「それから」を読みながら、男の友情を思う。5月13日の第30回は大助が親友・平岡の家を訪ねる。「尤も粗末な見苦しき構え」であり「今日の東京市には、至る所にこの種の家が散点している」と視線は冷たい。

 「君はどこか奉公口の見当は付いたか」と、結婚後に失業した平岡に聞く。独身で働いていない代助が。粗末な茶の間で 「仕事は探せば何とかなる」、などと強気な態度の平岡。妻の三千代が酒を持ってきて御酌をする。平岡は酔っても平生を離れない。「僕は失敗しても、また働くつもりだ。君は意志を発展させることの出来ない男だろう」 などと絡む。今日の第33回では二人の舌戦がエスカレートする。

 平岡は「君は酒を呑むと、言葉だけ酔っぱらっても、頭は確かな男だから、僕も言うがね」
と言われ代助は「働かない働かないと言って大分僕を攻撃したが、僕は黙っていた。僕は働かないつもりだったから黙っていた」と代助が言えば、平岡は「なぜ働かない」かと迫る。大助はエコノミスト気取りで話し出す。現在の日本のことを106年も前の小説で語られているかのような、、。、私は政治、経済のことはほとんど分からないので以下は今朝の「それから」の引用である。

 大助は働かない理由を話す。「日本対西洋の関係が駄目だから働かないのだ。日本ほど借金がありながら貧乏震いをしている國はありゃしない。この借金が何時になったら返せるか。外債位は返せるだろう。日本は西洋から借金でもしなければ、到底立行かない國だ。それでいて一等国を以て任じている。無理にも一等国の仲間入りをしょうとする。その影響はみんな我々個人の上に、、。こういう西洋の圧迫を受けている国民は頭に余裕がないから、碌な仕事ができない。こき使われるから、神経衰弱になってしまう」

 代助の話はまだまだ続く。三千代から借金を申し込まれている彼は平岡に対して威張れるのだ。「お金が絡むと人間関係はムキだしになる」、ある本の広告の言葉がチラつく。「何だか厭世のような呑気のような妙なのね。私よく分からないわ。少し胡麻化していらっしゃるようよ」という三千代。なかなか聡明な女に思える。この言葉に代助も平岡も黙り酒の盃を交す、ここで本日の 「それから」は終わっている。   5月18日  松井多絵子、