えくぼ

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笹公人の念力

2015-05-19 09:03:50 | 歌う

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 むかしむかし娘のころ、私は「もっとゆっくり歩きなさい。一緒に歩くと疲れる」と母に度々言われた。たしかに歩くのが早かった。でも今は後ろから歩いて来る人にどんどん追い越されている。短歌だって追い越されてばかりである。「未来短歌会」にわたしより遅く入会し、さっさと私を追い越し遙か彼方へ行ってしまった若者・笹公人。5月18日朝日短歌時評で彼の活躍に注目した松村由利子が、次のように書いている。

 「思いがけない言葉の結びつくところに、詩は生まれる。NHK・Eテレで放映中のドラマ 「念力家族」の原案は笹公人の同名の第一歌集である。「念力」と「家族」という言葉が結合したときに生じるエネルギーは、かなり大きい。

 ✿ ベランダでUFOをよぶ妹の呪文が響くわが家の夜に   

 ドラマは1首から1話が導きだされる形で展開してゆく。『念力家族』は今月、朝日文庫として再刊され、新たな歌集 『念力ろまん』 も出版される。

 ✿ 雨ふれば人魚が駄菓子をくれた日を語りてくれしパナマ帽の祖父

 独特なパワーに満ちたこの歌集は今春スタートした「現代短歌シリーズ」のひとつである。

 笹公人は1975年生まれ。「未来短歌会」の選者。現代歌人協会理事、日本文芸家協会会員。笹が短歌を始めたのは17歳、寺山修司の没後10年だった。修司ブームに乗せられたらしいが笹の魅力はユーモア、「おとぼけ」 ではないか。司会も上手い。新年歌会のときユトリロの絵の歌の評を 「ユトリロってゆとりのある人のことかと思ったら、画家の名前ですか」 難解な歌が多い3時間以上の作品批評に疲れている会員たちの緊張をほぐす、彼のの言葉は気が利いている。気配りが伝わってくる。辞書には「念力」とは思い込んだ精神力と書いてある。笹公人には独特の「念力」があるような気がする。

                            5月19日  松井多絵子