ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

御殿ダム(御殿貯水池)

2022-04-09 08:00:00 | 香川県
2022年3月29日 御殿ダム(御殿貯水池)
 
御殿ダム(御殿貯水池)は香川県高松市鶴市町にある香川県広域水道企業団が管理する上水道用水目的のアースフィルダムです。
高松市では1921年(大正10年)に全国で40番目の近代水道が創設され、その際浄水場として建設されたのが御殿浄水場で、当初は香東川および本津川から取水が行われていました。
戦後の水道需要拡大に対処し1954年(昭和29年)に上水用調整池として建設されたのが御殿池で、需給ギャップのバッファとして香東川および元津川で取水された水がここに貯留されます。
2017年(平成29年)に高松市の水道事業は新たに設立された一部事務組合である香川県広域水道企業団に移管され、御殿池の管理も同企業団に移っています。
御殿浄水場のうち、大正時代に建設された旧浄水場は旧御殿水源地(高松市水道資料館)として整備され、施設の多くが登録有形文化財に指定されるとともに近代水道百選に選ばれています。
 
御殿池は高松市鶴市町の石清尾山西山麓にあります。
堤高17メートル堤頂長497メートルの規模ですが、池の周囲は宅地化が進み堤体を一望できる場所はありません。

総貯水容量は52万4000立米
香東川と本津川から取水された水がいったんここに貯留されます。
貯水池一帯は開放され周辺住民の散策コースになっています。


直下の御殿浄水場。


堤体中央の階段
完成当時は浄水場と直結していました。


右岸の横越流式洪水吐。
堤体中央に切欠があります。

洪水吐導水路
市街地を抜け香東川に流下します。


桜越しに
ちょっと桜は早かった。


左岸の流れ込み口
貯留の大半は香東川および本津川からの揚水ですが、周辺の小河川の水も取り込んでいます。

 
上流から
対岸に斜樋と揚水設備が並びます。
湖面にあるのは水質改善装置。


残念ながら旧御殿水源地(高松市水道資料館)は改修工事のため見学中断中。
写真の喞筒場(そくとうじょう)は1986年(昭和61年)までポンプ場として使われていた建屋で、他の施設ともども登録有形文化財に指定されています。

2067 御殿ダム(御殿貯水池)(1788)
香川県高松市鶴市町
香東川水系香東川
17メートル
497メートル
524千㎥/524千㎥
香川県広域水道企業団
1954年

松尾川ダム

2022-04-07 08:00:00 | 徳島県
2022年3月28日 松尾川ダム 
 
松尾川ダムは左岸が徳島県三好市西祖谷山村坂瀬、右岸が同村小祖谷の吉野川水系松尾川源流部にある四国電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編令で誕生した四国電力は戦後の電力不足に対応するため各所で新たな電源開発を進めます。
1953年(昭和28年)に完成した松尾川ダムもそんな発電施設の一つで、ここで取水された水は松尾川第一ダム(最大出力2万800キロワット)及び松尾川第二ダム(最大出力2万1400キロワット)に送られダム水路式発電に供されます。
当ダム集水面積103平方キロのうち自己流域は26平方キロにとどまり、その大半は祖谷川からの導水に依っており、取水ダムと言うよりは調整池と呼ぶ方が妥当です。
また1961年(昭和36年)に集水の大半を占める祖谷川取水堰直上に名頃ダムが完成したことで取水量の季節変動が平準化され松尾川発電所の発電効率が大きく向上しました。
 
今回は三繩ダムから松尾川沿いの県道139号線を使って松尾川ダムに至りましたが、県道とは名ばかりの酷道で至る所に落石、木の枝が散乱し22キロの距離を移動するのに1時間以上かかってしまいました。
下流からダムとすっきり正対できる場所はなく、下流面が撮れるのはこのアングルだけ。
余計な構造物を排したシンプルな造形。
クレストにはラジアルゲートを2門装備しています。


ダムサイトの水利使用標識。


上流面
堤頂長は195メートルで対岸に祖谷川からの導水路流入口があります。


円筒形の取水口。


取水ゲート。

 
関電か?と思わせる黒いゲート
昭和20年代のダムらしくゲート部分が高くなっています。


天端はフェンスのドアで閉じられていますが施錠されていません。
連絡先に確認したら立ち入り可能
見た目、堤体や導流壁のコンクリは何となく粗い作りのような気が?
後付けの河川維持放流用パイプが伸びています。


ダム湖は総貯水容量1430万立米
山は低く、源流感の強い眺め。


祖谷川はじめ支川からの導水路流入口
ダムの集水の7割超がこの導水路に依ります。


天端から
右手は管理事務所、左手はかつて職員が常駐していた時代の宿舎。


導水路流入口を直上から
発電所の使用水量から推察すると毎秒4立米以上の水が流れ込んでいると思われます。

 
帰路はダム東方を走る県道44号線を使いましたが、こちらの方が断然道がいい。
四国電力の巡回もこちらを使っているようで…

(追記)
松尾川ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2121 松尾川ダム(1787)
左岸 徳島県三好市西祖谷山村坂瀬
右岸          同村小祖谷
吉野川水系松尾川
67メートル
195メートル
14300千㎥/12600千㎥
四国電力(株)
1953年
◎治水協定が締結されたダム

三繩ダム

2022-04-06 20:00:00 | 徳島県
2022年3月28日 三繩ダム
 
三繩ダムは左岸が徳島県三好市池田町川崎、右岸が同町松尾の吉野川水系祖谷川にある四国電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
水量豊富で急流河川である吉野川水系では戦前から活発な電源開発が進められ、当地でも1912年(大正元年)に当時の四国水力(株)が最大2000キロワットの水路式発電を行う三繩発電所を建設しました。
日本発送電による接収ののち1951年(昭和26年)の電気事業再編令で誕生した四国電力が事業を継承しました。
同社は高度経済成長による電力需要拡大に対処するため各所で電源開発や既設発電施設の増強を進め、三繩発電所の再開発に合わせてその取水ダムとして1959年(昭和34年)に竣工したのが三繩ダムです。
再開発により新三繩発電所の能力は旧発電所の3.5倍となる最大7000キロワットに増強されました。
 
国道32号線から祖谷橋を渡り県道32号線を3.7キロ東進すると眼下に三繩ダムが見えてきます。
ダムへの管理道路には関係者以外進入禁止の警告板があります。
通常ならダムカード受け取りのため立ち入りができるのですが、訪問時はコロナ警戒中のためカードの配布は中止、敷地内への立ち入りはご遠慮くださいとのことで県道からの見学にとどまりました。
ちょうどダムそばの桜が満開、桜越しの見学となります。
右岸にローラーゲート3門、左岸は自由越流頂になっています。
ローラーゲートの導流部は石張りとのことですが、遠くからは視認できません。
通常なら天端も見学できるようですが、コロナのためそれも叶わず。

上流側から広角で。




ダムをズームアップ
ここに限らず祖谷川の水はとてもきれいです。
不純物が少なく光路長が長いので深い青やエメラルドグリーンになるようです。


こうなるとダムよりも桜がメイン。


水利使用標識。

 
追記
三繩ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2123 三繩ダム(1786)
左岸 徳島県三次市池田町川崎 
右岸        同町松尾
吉野川水系祖谷川
17メートル
80.8メートル
299千㎥/183千立米
四国電力(株)
1959年
◎治水協定が締結されたダム

若宮谷ダム

2022-04-06 08:00:00 | 徳島県
2022年3月28日 若宮谷ダム
 
若宮谷ダムは徳島県三好市西祖谷山村一宇の吉野川水系祖谷川右支流若宮谷川にある四国電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
包蔵電力豊富な吉野川水系では戦前より複数の事業者により電源開発が進められ、これらの発電施設は日本発送電を経て四国電力に引き継がれました。
若宮谷ダムもそんな発電施設の一つで1935年(昭和10年)に四国で3番目のコンクリートダムとして四国水力(株)により建設されました。
若宮谷ダムは発電用調整池で祖谷川で取水された水をいったん貯留し、若宮谷川の水と併せて約300メートルの導水路で一宇発電所(最大出力8700キロワット)に送りダム水路式発電を行います。
 
西祖谷中心部から若宮谷川沿いの市道を300メートルほど東進すると若宮谷ダム右岸ダムサイトに到着します。
戦前のダムらしい年季の入った堤体が川を閉め切ります。
非越流型堤体なので『閉め切る』という言葉がぴったり。


道路わきの水利使用標識。


上流面
こちらも赤錆と苔が80年以上の時代感を醸し出しています。
堤体中央は排砂ゲートのバルブとシャフト、手前の円形は取水口。


こちらは祖谷川からの導水路吐口。
ゲートが2門あり、当ダムの水位に合わせて使い分けるようです。
エメラルドグリーンの水が美しい。
不純物が少なく光路長が長いのでこういう色になるようです。


天端も開放されています。
親柱は四角を基調にした意匠。


ここは非越流型堤体、では洪水吐はどこにあるのか?
きょろきょろ探したら右岸堤体直上にありました。
若宮谷川の流域面積が大きくないので、こんな簡易な洪水吐で十分なんでしょう。
越流した水は隧道で流下させます。


円形の取水口
手前の設備がよくわかりません。


天端から
直下に排砂ゲートがありますが、非越流型のため減勢工もありません。


ダム湖は総貯水容量9万4000立米
右手が上記祖谷川からの導水路流入口
奥に見える堰堤は砂防ダム。


天端高欄は親柱同様四角基調のデザイン。


左岸から下流面。

発電ダムとしては珍しく天端が開放されており、戦前のビンテージダムをじっくり堪能することができます。
水の美しさも印象的。
 
(追記)
若宮谷ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2120 若宮谷ダム(1785)
徳島県三好市西祖谷山村一宇
吉野川水系若宮谷川 
 
 
32.2メートル 
93メートル 
94千㎥/58千㎥ 
四国電力(株) 
1935年 
◎治水協定が締結されたダム 

名頃ダム

2022-04-05 20:00:00 | 徳島県
2022年3月28日 名頃ダム
 
名頃ダムは徳島県三好市東祖谷菅生の吉野川水系祖谷川上流部にある四国電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
包蔵電力豊富な吉野川水系では戦前から活発な電源開発が進められてきましたが、1951年(昭和26年)の電気事業再編令で誕生した四国電力は高度経済成長による電力需要拡大に対処するため各所で電源開発や既設発電施設の再開発を進めます。
祖谷川では1954年(昭和29年)に高野発電所、1959年(昭和34年)に三繩発電所再開発が竣工、次いで1961年(昭和34年)に祖谷川最上流部に建設されたのが名頃ダムです。
ここで取水された水は約450メートルの導水路で名頃発電所に送られ最大1300キロワットのダム水路式発電を行ったのち、その放流水は約19キロの導水路で遠く松尾川ダムまで送られ、松尾川第1発電所(最大出力2万800キロワット)及び松尾川第2発電所(最大出力2万1400キロワット)の発電に供されます。
名頃ダムの完成により祖谷川流量の季節変動が平準化され、松尾川第1および第2発電所の発電効率が大きく向上しました。 

祖谷川沿いの国道439号を剣山方面に東進、三嶺登山口を過ぎると名頃ダムに到着します。
まずは下流から
クレストにラジアルゲート1門、雪が多いのか?ピアは被覆されています。

左岸(向かって右手)に放流設備があり、河川維持放流が行われています。


ゲートをズームアップ。


天端高欄には戦前、戦中のダムでよくみられる三日月形の『抜き』。
堤体のくたびれ具合も併せて、ぱっと見戦前のダムか?と思しき様相。


ダム右岸を国道が通りますが、ガードが厳しく撮影はこのアングルのみ。
総貯水容量136万7000立米に対し有効貯水容量115万立米と、発電ダムとしては堆砂がほとんどありません。


天端高欄の三日月形の抜きは下流側のみですが、このアングルで見た天端高欄の意匠は、戦中に建設された広島の高暮ダムを想起します。


水利使用標識。


ダム入り口の銘板
四国電力では『○○堰堤』という表記が多いのですが、ここは『ダム』。
 
追記
名頃ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2127 名頃ダム(1784)
徳島県三好市東祖谷菅生 
吉野川水系祖谷川
37メートル
119.4メートル
1367千㎥/1150千㎥
四国電力(株)
1961年
◎治水協定が締結されたダム

明谷ダム

2022-04-05 08:00:00 | 徳島県
2022年3月28日 明谷ダム
 
明谷(みょうだに)ダムは徳島県美馬郡つるぎ町一宇の吉野川水系貞光川左支流明谷川にある四国電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
包蔵電力豊富な吉野川水系では戦前より複数の事業者により電源開発が進められ、これらの発電施設は日本発送電を経て四国電力に引き継がれました。
明谷ダムもそんな発電施設の一つで1931年(昭和6年)に貞光電力(株)により四国初のコンクリートダムとして建設されました。
明谷ダムは発電用調整池で貞光川で取水された水がいったん貯留され、明谷川の水と併せて約3.5キロの導水路で切越発電所(最大出力4500キロワット)に送られダム水路式発電を行います。
四国最古の貴重なコンクリートダムでしたが、老朽化が著しく2017年(平成29年)の改修で全面越流式ダムに生まれ変わり、この際当初19.6メートルあった堤高が14.7メートルになったためダム便覧からも削除されました。
しかし改修後も四国堰堤ダム88箇所巡りに採用されていること、名頃ダムへの途上にあることから立ち寄ることにしました。

貞光から国道438号線をひたすら南下、一宇地区に入り明谷川沿いの県道菅生伊良原線を2キロほど進むと明谷ダムに到着します。
樹間から真新しい白い堤体が姿を見せます。


堤体は全面越流式で左岸に放流ゲートがあります。


左岸から越流!かと思ったら、導流面に河川維持放流用の切れ込みがありそこから放流されています。


堤体に貼り付けられた真新しい銘板。


対岸の取水口。
手前側に貞光川からの吐口があるはずですが見ることはできません。


奥のコンクリートは水位観測施設。


天端から。


水利使用標識。

 
明谷ダム
左岸 徳島県美馬郡つるぎ町一宇 
吉野川水系貞光川左支流明谷川
14.7メートル
34.8メートル
52千㎥/---千㎥
四国電力(株)
1931年 竣工
2017年 再開発竣工

池田ダム

2022-04-03 20:00:00 | 徳島県
2022年3月28日 池田ダム 
 
池田ダムは左岸が徳島県三好市池田町西山、右岸が同市池田町ウエノの一級河川吉野川本流にある水資源機構が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
『四国三郎』の異名を持つ吉野川は、日本屈指の暴れ川でその治水は歴代為政者の至上命題となる一方、水利に乏しい瀬戸内海沿岸地域では水量豊富な吉野川からの導水が江戸時代からの悲願でした。
戦後、建設省を軸に『吉野川総合開発計画』が企図されますが利害の対立もあり調整は難航、一方当地には電源開発による大歩危ダムの逆調整池が建設される予定でしたが環境破壊を理由にこちらもとん挫。
そんな中、1966年(昭和41年)に『吉野川水系水資源開発基本計画』(フルプラン)が採択され、吉野川水系では水資源開発公団(現水資源機構)による河川総合開発が進められることになりました。
水資源開発公団は早明浦ダムを水源とする香川用水等の取水地点として当地に着目、1974年(昭和49年)に池田ダムが竣工しました。
池田ダムは水資源機構法(当時は水資源開発公団法)による多目的ダムで、吉野川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、香川用水を通じた上水道用水・工業用水・灌漑用水の供給、吉野川北岸用水を通じた灌漑用水の供給、旧池田町への上水道用水の供給、四国電力池田発電所でのダム式発電(最大5000キロワット)を目的としています。
 
右岸高台から
全長247メートル、9門のローラーゲートで吉野川を閉め切ります。


鋼鉄トラス製のゲートピアは同時期に建設された早明浦ダムと共通
天端は両岸の連絡道路として開放されそこそこの通行量。
手前上流側に池田発電所の取水ゲートが、下流に池田発電所があります。


右岸ダム湖畔に積まれた分割式予備ゲート。


上流面
右手は魚道用ゲート。

 
右岸の魚道
手前は発電所の放流口。


ダム湖右岸寄りにある旧池田町向け上水道用水取水塔。
ダム湖の総貯水容量は1265万立米ですが、死水容量が多く有効貯水容量は440万立米にとどまります。


左岸にある艇庫とインクライン
訪問したタイミングで出庫中。


左岸から下流面
ここからの眺めが一番いいかも?
対岸段丘上にはかつて甲子園で一時代を築き上げた池田高校があります。


左岸高台から。


左岸から上流面。


こちらはダム直上左岸にある吉野川北岸用水取水工
吉野川北岸土地改良区が管理を受託し約70キロの幹線水路で6000ヘクタール超の農地に灌漑用水を供給します。


ダム上流約1.8キロにある水資源機構香川用水取水工。
約8キロの阿讃トンネルを抜け香川県に送水されます。


取水ゲート
立入禁止ですが、職員さんの許可を得て撮影しました。


取水工の除塵機
奥は徳島道の『池田へそっこ大橋』。


早明浦ダムには『四国のいのち』の石碑がありますが、こちらは『四国は一つ』
四国を象った緑色片岩。

2230 池田ダム(1783)
左岸 徳島県三好市池田町西山 
右岸        同町ウエノ
吉野川水系吉野川
FNAWIP
24メートル
247メートル
12650千㎥/4400千㎥
水資源機構
1974年 

蛙子池

2022-04-03 08:00:00 | 香川県
2022年3月27日 蛙子池
 
蛙子池は香川県小豆郡土庄町肥土山の二級河川伝法川源流部にある農地防災・灌漑目的のアースフィルダムです。
起源は江戸初期の1636年(貞享3年)まで遡り、その後幾多の改修が行われましたが1960年(昭和35年)の県営防災ダム事業で農地防災容量が配分され、ダム便覧はこれを竣工年度としています。
管理は蛙子池土地改良区が行い約120ヘクタールの農地に灌漑用水を供給するとともに洪水期には洪水調節により伝法川流域の農地防災を行います。
溜池築造に至る苦難は『肥土山農村歌舞伎』として今に伝えられており、2010年(平成22年)には農水省により『ため池百選』に選ばれています。

寒霞渓スカイライン銚子渓駐車場から蛙子池の標識に従い東進すると池に到着します。
下流面は草刈りのあと野焼きが行われ縞模様に。
実は堤頂長は420メートルに及び、これはその一端にすぎません。


基部は石積みで、現在はコンクリートの擁壁で守られています。


底樋管は木板で仕切られ2方向に分水されます。


天端に建つため池百選の案内板。


歴史の古い溜池らしく記念碑も3基並びます。


総貯水容量63万4000立米は小豆島の溜池最大。
ここから見れば堤頂長420メートルが実感できるでしょう。


斜樋。


上流面は花崗岩の谷積みで護岸。


通常溜池は川を塞き止めて築造されますが、蛙子池は池の右岸側を伝法川がかすめます。
そこで池の右岸前方に水路のように池を延ばしここから集水を行っています。
つまり蛙子池は池の下流方向から集水するという珍しい構造となっています。

最奥が伝法川からの取水ゲート
目の前の水路も実は貯水池の一部です。


水路途中に洪水吐があります。
自由越流頂のほかに鋼製起伏ゲートを備えており、このゲートの開閉で農地防災目的の洪水調節を行います。


同じ洪水吐を下流側から。


伝法川上流から見た取水ゲート
左手が蛙子池の取水ゲートで右手の鋼製起伏ゲートが伝法川の締め切りゲート。
取水ゲートが閉じられるのは改修や水抜き、豪雨の際など非常時のみです。


江戸初期に遡る由緒ある溜池というだけではなく、その集水システムの珍しさからもダム愛好家なら一度は目にしておきたいため池だと思います。

2172 蛙子池(1782) 
ため池コード 373220001 
香川県小豆郡土庄町肥土山 
伝法川水系伝法川
FA
15.3メートル
420メートル
634千㎥/634千㎥ 
蛙子池土地改良区
1960年

新中山池

2022-04-02 20:00:00 | 香川県
2022年3月27日 新中山池
 
中山池は左岸が香川県小豆郡小豆島町池田、右岸が同町中山の伝法川水系殿川源流部にある農地防災・灌漑目的のアースフィルダムです。
香川県のホームページによれば農林省(現農水省)の補助を受けた香川県営防災ダム事業により1959年(昭和34年)に既存の中山池直下に建設されました。
中山池ともども蛙子池土地改良区が管理を行い、300ヘクタールの農地に灌漑用水を供給するとともに洪水期には農地防災を行いを行います。
なおダム便覧ではダムの目的はAとなっていますが、農地防災容量の配分があるので正しくはFAとなります。

殿川ダムから川沿いを東に遡上すると新中山池に到着します。
直上の中山池同様下流面は冬場に草が刈られ、虫除けの野焼きが行われています。


天端からの眺め
受益地は遥か下流の伝法川流域となります。
当池の完成で特産の除虫菊など園芸農業への転向が促進されたとのこと。


左岸の横越流式洪水吐と斜樋。

 
下流面。


総貯水容量60万立米は蛙子池に次ぎ小豆島の溜池2番目の規模。


上流面は花崗岩の谷積みで護岸。


洪水吐導流部。


横越流式洪水吐には鋼製起伏ゲートがついています。
このフラップの高さ分が農地防災容量となります。


洪水吐越しの上流面。


直上、中山池からの眺め。

3368 新中山池 (1781)
ため池コード 373240001
左岸 香川県小豆郡小豆島町池田
右岸         同町中山
伝法川水系殿川
FA
26メートル
182メートル(ため池データベース 181メートル)
600千㎥/591千㎥ 
蛙子池土地改良区
1959年

中山池

2022-04-02 08:00:00 | 香川県
2022年3月27日 中山池
 
中山池は左岸が香川県小豆郡小豆島町池田、右岸が同町中山の伝法川水系殿川源流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には1979年(昭和54年)に土地改良区の事業で竣工と記されています。しかし当然あとから建設されたであろう新中山池の竣工が1959年(昭和34年)ですので、これはあくまでもダム化された年もしくは確認できる最古の改修年度で、中山池の起源はもっと古いはずです。

殿川ダムから川沿いを東に遡上し新中山池をやり過ごすと中山池に到着します。
下流面は冬場に草が刈られ、虫除けの野焼きも行われています。


天端は車両通行可能
奥に林道が続いているので通行する車も多いのでしょう。しっかり固められています。


眼下に新中山池が見えます。


池の直上には護国寺というお寺があります。
真言宗の別格本山でもある由緒正しきお寺ですが、なぜか小豆島八十八箇所霊場に含まれていないため訪れる人は多くないようです。
どうでもいいことですが、宗教は信仰の世界にもあれやこれや大人の事情があるようです。
池の右岸は小豆島らしく火山角礫岩の断崖が続きます。


右岸の斜樋。


上流面はコンクリートで護岸。
堤体は緩やかに弧を描いています。


左岸の越流式洪水吐。薄く越流しています。


洪水吐導流部
越流した水は直下の新中山池に流入します。


下流面
基部は石積み。


斜樋からのパイプ
このパイプは新中山池をバイパスしており、中山池と新中山池の水利権は厳格に区別されているようです。


2170 中山池 (1780)
ため池コード 373240045
左岸 香川県小豆郡小豆島町池田
右岸         同町中山
伝法川水系殿川
17メートル
144メートル
72千㎥/72千㎥ 
蛙子池土地改良区
1979年

殿川ダム

2022-04-01 22:00:00 | 香川県
2022年3月27日 殿川ダム 
 
殿川ダムは香川県小豆郡小豆島町中山の伝法川水系殿川にある香川県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
年間降水量1200ミリ弱という少雨に加え大河のない小豆島では慢性的な水不足に悩まされる一方、各河川は急流のため洪水が多く抜本的な利水・治水対策が急がれていました。
小豆島の玄関口で島の経済の中心でもある土庄を貫流する伝法川も例に漏れず、1961年(昭和36年)の水害1967年(昭和42年)の渇水を契機にダム建設が採択され1974年(昭和49年)に竣工したのが殿川ダムです。
殿川ダムは建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、伝法川の洪水調節と土庄町への上水道用水に供給を目的としています。

殿川ダムは小豆島で唯一ゲートを持つダムで、クレストにローラーゲート1門を備えています。


大きなゲートピアとゲート部分が前面に張り出した形状は同時期に建設された大川ダム前山ダム大内ダムなど香川県営ダムの特徴的デザイン。

フーチングが開放されここから天端に登ります。
堤高は35.6メートルですがこれは基礎地盤からの高さと思われ、実際には25メートルほどしかなさそう。
フーチング中段に監査廊入り口があります。


天端は車両通行可能
香川県営ダムではピアの階段はらせんが多いのですがここはジグザグ。


ダム下は広場に、下流左岸は桜が植えられ小さな公園になっていますが桜はまだ蕾。
放流設備には調圧水槽が併設され、ここから下流約100メートルにある浄水場に直接送水されます。


天端からの眺め
正面には観光名所でもある中山千枚田が広がります。


総貯水容量62万立米のダム湖
奥には安山岩の板状節理で形成された銚子渓谷が遠望できます。


ゲートはローラーゲート1門で、こちらは予備ゲート。


左岸には艇庫とインクラインを併設した管理事務所。


下流面。

上流面
ゲートが2枚で上段が予備ゲート
円形の取水設備がレトロな雰囲気を醸し出しています。


2183 殿川ダム(1779)
香川県小豆郡小豆島町中山 
伝法川水系殿川
FW
35.6メートル
192メートル
620千㎥/620千㎥
香川県土木部
1974年

吉田ダム

2022-04-01 12:00:00 | 香川県
2022年3月27日 吉田ダム 
 
吉田ダムは香川県小豆郡小豆島町吉田の二級河川吉田川にある香川県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
年間降水量1200ミリ弱という少雨に加え大河のない小豆島では慢性的な水不足に悩まされる一方、各河川は急流のため洪水が多く抜本的な利水・治水対策が急がれていました。
島北東部の吉田地区を流れる吉田川や福田地区を流れる森庄川も例に漏れず、吉田ダムは吉田川および森庄川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、小豆島全域へ上水道用水の供給を目的として1996年(平成8年)に竣工しました。
吉田ダムの堤高74.5メートルは竣工当時は香川県内最高で、現在も椛川ダムに次いで第2位の高さとなっています。
森庄川については上流部に分水堰を設け、洪水時にはカットした水をトンネル導水路で吉田ダムに送る形で洪水調節を行います。

小豆島町北東部の吉田地区から吉田川沿いを西進すると吉田ダムに到着します。
吉田ダムの売りはダム左岸の花崗岩の大断崖です。
全国で見てもダム至近にこのような花崗岩のトアが林立すところはまずないんじゃないでしょうか?
さしずめ岩の殿堂ダムと言った風。


いったんダム下に戻り、堤高74.6メートルの堤体を直下から見上げます。
クレスト自由越流頂4門、自然調節式オリフィス1門を備えたゲートレス。
このほか利水放流用バルブを2条装備しています。
ゲート左手にエレベーター棟がありますが、香川県でエレベーターを備えたダムは現在吉田ダムのみ。


サルが描かれたユニークな看板。


吉田ダムのフーチング階段は遍路道として開放されています。
今回はここを登って天端にアプローチ。


登ること12~3分で天端左岸に到着。
ここには巨大なモニュメントが建っています。
本体着工が1988年(昭和63年)とバブルの真っ盛り、余計なものを作る資金が潤沢だった時代です。


右岸の艇庫とインクライン。


左岸高台の展望台から
こういうアングルでダムが見れるのはうれしい限り。
ダム湖は総貯水容量236万立米と小豆島最大。
このダムからは島内全域に上水道用水が供給されます。

ダムから海まではわずか1.2キロ
家島諸島右手には遠く六甲の山並みも望めます。


天端から
減勢工左手には放流設備や揚水機場が並びます
右手には「吉田ダム」の植栽。


天端は徒歩のみ開放。


右岸から超広角で
右岸のフーチングも開放されています。


右岸にも『うるおい』と命名されたモニュメント
本来なら1.4トンの石の円球が水圧でクルクル回るはずなんですが残念ながら故障中。


上流面
こちらからも海が見えます。


右岸のフーチングを下ります。
放流バルブが2条、スルースバルブから河川維持放流中。


小豆島一番のお目当てはこの吉田ダムでしたが、お天気にも恵まれ岩と海のサイコーの眺めを堪能することができました。

2955 吉田ダム(1778)
香川県小豆郡小豆島町吉田 
吉田川水系吉田川
FNW
74.5メートル
218メートル
2360千㎥/2100千㎥
香川県土木部
1996年