ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

藤津川ダム

2022-04-27 23:00:00 | 新潟県
2022年4月22日 藤津川ダム
 
藤津川(とうつがわ)ダムは左岸が新潟県佐渡市中興、右岸が同市泉の国府川水系藤津川上流部にある灌漑目的のロックフィルダムです。
大佐渡山脈南麓各河川は流域面積が小さく雨水の河川流出が早いため、灌漑期に用水不足が頻発していました。
そこで1974年(昭和49年)に農水省の補助を受けた県のかんがい排水事業藤津川地区が着手され、その灌漑用水源として1987年(昭和62年)に竣工したのが藤津川ダムです。
運用開始後は金井土地改良区が管理を受託し、藤津川流域250ヘクタール強の水田に灌漑用水を供給しています。
同時期に建設された佐和田ダム同様、ロックフィルとしては珍しい傾斜コアを採用しています。

ダム下は立ち入り制限の鎖が架かっていますが、事前に土地改良区の許可を得ています。
堤高41.3メートル、右岸に洪水吐斜水路が伸びます。


ダム下で取水設備からの水路と洪水吐導流部が合流します。
個人的に好きな絵柄。


左岸から下流面
ロック材には流紋岩が使われています。




左岸のインクライン。


天端からは真野湾が遠望できます。


ダム下。
2枚目写真を上から見たところ。


総貯水容量74万4000立米のダム湖。
奥には大佐渡山脈が聳えますが、あいにく雲の中。


右岸から洪水吐越しの下流面
対岸に立派な管理事務所がありますが職員の常駐はありません。


上流面。


右岸の横越流式洪水吐
越流部のコンクリートが新しく、近年改修があったようです。


右岸機械室の銘板。

取水設備は佐和田ダムと同じ、フローティングアーム方式。

0777 藤津川ダム(1791)
左岸 新潟県佐渡市中興
右岸     同市泉
国府川水系藤津川
41.3メートル
142メートル
744千㎥/718千㎥ 
金井土地改良区
1987年

新保川ダム(元)

2022-04-27 18:00:00 | 新潟県
2022年4月22日 新保川ダム(元)
 
新保川(しんぼがわ)ダム(元)は新潟県佐渡市千種の国府川水系新保川にある新潟県土木部が管理する治水目的の重力式コンクリートダムです。
1955年(昭和30年)に新保川上流域への航空自衛隊佐渡分屯基地建設に合わせて防災調整池として丸壺ダムが建設されました。
しかし昭和40年代に入り2度の水害が発生、これを契機に防衛施設庁の補助による佐渡分屯基地周辺障害防止対策事業が採択され、丸壺ダムの嵩上げ再開発により1972年(昭和47年)に新保川ダムが完成しました。
新保川ダム(元)は新保川の洪水調節、不特定灌漑用水への補給および安定した河川流量の維持を目的とした補助治水ダムです。
このうち不特定灌漑用水については、新たな灌漑用水源ができたことで用水補給は行われておらず、実質的には治水専用ダム運用となっています。
さらに1991年(平成3年)には洪水調節機能の増大や佐渡市への新規上水道用水の供給を目的とした『新保川生活貯水池再開発事業』が採択され、2度目の再開発が決定しました。
再開発事業は現在も継続中で用地取得はほぼ終了しているものの、その後の社会情勢の変化などもあり具体的な事業は未着手の状態です。

クレスト自由越流頂2門、自然調節式オリフィス1門を備えたゲートレスダムです。
このほか不特定灌漑用水向け利水放流バルブを備えていますが上記のような理由で稼働しておらず、常時オリフィス放流が行われています。




堤高29メートル、堤頂長199メートルの横長ダムで、ゲートは堤体左岸側にあります。
丸壺ダムからの嵩上げの痕跡を探しましたがわかりません。
手前は監査廊入り口。


下流面
ゲートは最奥、左岸側にあります。


取水設備がないのですっきりした上流面
奥の白い建屋は補助ゲート操作室、手前は利水放流バルブ操作室。


天端は徒歩のみ開放。


ダム下に浄水場がありますが、ダムとの関係はありません。


総貯水容量50万立米と溜池サイズの貯水池。
ダム便覧では目的は『F』となっていますが、不特定利水容量4万5000立米が配分されており、正確には『FN』となります。
貯水池には堆砂容量9万3000立米が貯留されています。


減勢工とエンドシル。


オリフィス予備ゲート
ゲートの上にカニの遺骸が…。


上流から遠望。


ダムの直上では馬が飼育されています。


さらにダムの上流2キロにはミズバショウの群生地があります。

職員さんのお話では再開発は手つかずの状態。
当面『新保川ダム(元)』の状態が続きそう。

0761 新保川ダム(元)(1790)
新潟県佐渡市千種
国府川水系新保川
FN
29メートル
199メートル
500千㎥/407千㎥
新潟県土木部
1972年
-----------
3115 新保川ダム(再)
新潟県佐渡市千種
国府川水系新保川
FNW
38メートル
254メートル
1150千㎥/1040千㎥
新潟県土木部
1991年事業着手

吉井開田溜池

2022-04-27 08:00:00 | 新潟県
2022年4月22日 吉井開田溜池
 
吉井開田溜池は新潟県佐渡市安養寺の国府川水系地持院川上流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
現地竣工記念碑には1932年(昭和7年)に吉井開田耕地整理組合の事業により工事完了と刻されています。
一方、ダム便覧や佐渡市の溜池ハザードマップでは竣工年度は1930年(昭和5年)になっています。
管理は耕地整理組合を改組した吉井土地改良区が行っており、約60ヘクタールの水田に灌漑用水を供給しています。

下流から
堤頂長は250メートルありますが左岸側で提体が直角に折れており、堤頂長の半分以上は左岸を形成しています。
正面に見えるのは下流面。


ダム便覧では堤高は19.1メートル、一方ため池データベースでは17メートル
右岸に洪水吐斜水路があります。


堤体中央の底樋管と分水ゲート
灌漑用水路と地持院川への分水ゲートになります。


左岸にある堤体の『カド』
コンクリートダムでは『カド』は複数存在しますが、ダム便覧掲載の溜池では初見。
強度は大丈夫なんでしょうか?


右岸上流にある竣工記念碑と改修記念碑。


左岸上流側から
左手も堤体の一部になっており、左岸でほぼ垂直に折れます。


上流面の斜樋。


総貯水容量は22万5000立米
春が遅い佐渡では4月末で山桜が満開。


天端から
佐渡では早い水田では4月に田植えが始まります。
ダム下の田んぼもすでに水が張られています。


斜樋。


右岸の横越流式洪水吐。


貯水池右岸の縁に水路があり洪水吐に流れ込みます。
溜池ができる前の既得灌漑用水かと思います。


湖畔に咲いていたイワカガミ
高山植物ですが、ここは標高90メートル。
佐渡の冬は厳しいのでしょう。

0726 吉井開田溜池(1789)
ため池コード 152240102
左岸 新潟県佐渡市立野
右岸     同市吉井本郷
国府川水系地持院川
19.1メートル(ため池データベース17メートル)
250メートル
225千㎥/225千㎥ 
吉井土地改良区
1930年