ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

池田ダム

2022-04-03 20:00:00 | 徳島県
2022年3月28日 池田ダム 
 
池田ダムは左岸が徳島県三好市池田町西山、右岸が同市池田町ウエノの一級河川吉野川本流にある水資源機構が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
『四国三郎』の異名を持つ吉野川は、日本屈指の暴れ川でその治水は歴代為政者の至上命題となる一方、水利に乏しい瀬戸内海沿岸地域では水量豊富な吉野川からの導水が江戸時代からの悲願でした。
戦後、建設省を軸に『吉野川総合開発計画』が企図されますが利害の対立もあり調整は難航、一方当地には電源開発による大歩危ダムの逆調整池が建設される予定でしたが環境破壊を理由にこちらもとん挫。
そんな中、1966年(昭和41年)に『吉野川水系水資源開発基本計画』(フルプラン)が採択され、吉野川水系では水資源開発公団(現水資源機構)による河川総合開発が進められることになりました。
水資源開発公団は早明浦ダムを水源とする香川用水等の取水地点として当地に着目、1974年(昭和49年)に池田ダムが竣工しました。
池田ダムは水資源機構法(当時は水資源開発公団法)による多目的ダムで、吉野川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、香川用水を通じた上水道用水・工業用水・灌漑用水の供給、吉野川北岸用水を通じた灌漑用水の供給、旧池田町への上水道用水の供給、四国電力池田発電所でのダム式発電(最大5000キロワット)を目的としています。
 
右岸高台から
全長247メートル、9門のローラーゲートで吉野川を閉め切ります。


鋼鉄トラス製のゲートピアは同時期に建設された早明浦ダムと共通
天端は両岸の連絡道路として開放されそこそこの通行量。
手前上流側に池田発電所の取水ゲートが、下流に池田発電所があります。


右岸ダム湖畔に積まれた分割式予備ゲート。


上流面
右手は魚道用ゲート。

 
右岸の魚道
手前は発電所の放流口。


ダム湖右岸寄りにある旧池田町向け上水道用水取水塔。
ダム湖の総貯水容量は1265万立米ですが、死水容量が多く有効貯水容量は440万立米にとどまります。


左岸にある艇庫とインクライン
訪問したタイミングで出庫中。


左岸から下流面
ここからの眺めが一番いいかも?
対岸段丘上にはかつて甲子園で一時代を築き上げた池田高校があります。


左岸高台から。


左岸から上流面。


こちらはダム直上左岸にある吉野川北岸用水取水工
吉野川北岸土地改良区が管理を受託し約70キロの幹線水路で6000ヘクタール超の農地に灌漑用水を供給します。


ダム上流約1.8キロにある水資源機構香川用水取水工。
約8キロの阿讃トンネルを抜け香川県に送水されます。


取水ゲート
立入禁止ですが、職員さんの許可を得て撮影しました。


取水工の除塵機
奥は徳島道の『池田へそっこ大橋』。


早明浦ダムには『四国のいのち』の石碑がありますが、こちらは『四国は一つ』
四国を象った緑色片岩。

2230 池田ダム(1783)
左岸 徳島県三好市池田町西山 
右岸        同町ウエノ
吉野川水系吉野川
FNAWIP
24メートル
247メートル
12650千㎥/4400千㎥
水資源機構
1974年 

蛙子池

2022-04-03 08:00:00 | 香川県
2022年3月27日 蛙子池
 
蛙子池は香川県小豆郡土庄町肥土山の二級河川伝法川源流部にある農地防災・灌漑目的のアースフィルダムです。
起源は江戸初期の1636年(貞享3年)まで遡り、その後幾多の改修が行われましたが1960年(昭和35年)の県営防災ダム事業で農地防災容量が配分され、ダム便覧はこれを竣工年度としています。
管理は蛙子池土地改良区が行い約120ヘクタールの農地に灌漑用水を供給するとともに洪水期には洪水調節により伝法川流域の農地防災を行います。
溜池築造に至る苦難は『肥土山農村歌舞伎』として今に伝えられており、2010年(平成22年)には農水省により『ため池百選』に選ばれています。

寒霞渓スカイライン銚子渓駐車場から蛙子池の標識に従い東進すると池に到着します。
下流面は草刈りのあと野焼きが行われ縞模様に。
実は堤頂長は420メートルに及び、これはその一端にすぎません。


基部は石積みで、現在はコンクリートの擁壁で守られています。


底樋管は木板で仕切られ2方向に分水されます。


天端に建つため池百選の案内板。


歴史の古い溜池らしく記念碑も3基並びます。


総貯水容量63万4000立米は小豆島の溜池最大。
ここから見れば堤頂長420メートルが実感できるでしょう。


斜樋。


上流面は花崗岩の谷積みで護岸。


通常溜池は川を塞き止めて築造されますが、蛙子池は池の右岸側を伝法川がかすめます。
そこで池の右岸前方に水路のように池を延ばしここから集水を行っています。
つまり蛙子池は池の下流方向から集水するという珍しい構造となっています。

最奥が伝法川からの取水ゲート
目の前の水路も実は貯水池の一部です。


水路途中に洪水吐があります。
自由越流頂のほかに鋼製起伏ゲートを備えており、このゲートの開閉で農地防災目的の洪水調節を行います。


同じ洪水吐を下流側から。


伝法川上流から見た取水ゲート
左手が蛙子池の取水ゲートで右手の鋼製起伏ゲートが伝法川の締め切りゲート。
取水ゲートが閉じられるのは改修や水抜き、豪雨の際など非常時のみです。


江戸初期に遡る由緒ある溜池というだけではなく、その集水システムの珍しさからもダム愛好家なら一度は目にしておきたいため池だと思います。

2172 蛙子池(1782) 
ため池コード 373220001 
香川県小豆郡土庄町肥土山 
伝法川水系伝法川
FA
15.3メートル
420メートル
634千㎥/634千㎥ 
蛙子池土地改良区
1960年