ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

早明浦ダム(元)

2021-12-05 15:00:00 | 高知県
2021年11月23日 早明浦ダム(元) 
 
早明浦ダム(元)は左岸が高知県長岡郡本山町吉野、右岸が土佐郡土佐町田井の一級河川吉野川本流にある水資源機構が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
『四国三郎』の異名を持つ吉野川は、四国最大の河川ながら日本屈指の暴れ川でその治水は歴代為政者の至上命題となっていました。一方、四国瀬戸内海沿岸地域は少雨に加えて大河がなく水量豊富な吉野川からの導水が江戸時代からの悲願となっていました。
戦後、建設省を軸に『吉野川総合開発計画』が企図されますが利害の対立もあり調整は難航します。
1966年(昭和41年)に『吉野川水系水資源開発基本計画』(フルプラン)が採択され、吉野川水系では水資源開発公団(現水資源機構)による河川総合開発が進められることになりした。
そして香川用水をはじめとした各種計画の水源として、1974年(昭和49年)に竣工したのが早明浦ダムです。
早明浦ダムは水資源機構法(当時は水資源開発公団法)による多目的ダムで、吉野川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得灌漑用水への補給、吉野川北岸用水香川用水高知分水を通じた各地への利水供給、電源開発(株)早明浦発電所(最大出力4万2000キロワット)でのダム式水力発電を目的としています。
 
総貯水容量3億1600万立米は四国最大、全国9位の規模で文字通り『四国の水ガメ』となっており、ダムは日本ダム協会により日本100ダムに、ダム湖の『さめうら湖』はダム湖百選に選ばれています。
一方でダム完成後も渇水被害や計画を超える洪水が多発、とりわけ治水については放流設備の増強が必至となっていました。
これを受け、2018年(令和元年)に利水容量の一部の洪水調節容量への振り替え、予備放流の導入、放流設備の増強を柱とする『早明浦ダム再生事業』が採択されました。
具体的には堤体右岸を掘削して新たな放流設備及び減勢工が増設されることになり、2028年(令和20年)の竣工を目標にダム再開発事業が進行中です。

 ダム下流から
早朝の訪問でしたが、ちょうど朝日が堤体を照らしやや黄金色がかった美しい眺めとなりました。
堤高106メートル、堤頂長400メートルと日本を代表する重力式コンクリートダム。
放流設備はクレストローラーゲート6門とホロージェットバルブ2条を装備
武骨で質実剛健と言った風 
再生事業が本格化すればこの眺めも見納めとなります。


左岸から
左岸ダム下には電源開発(株)早明浦発電所があります。
右岸側のホロージェットバルブから放流中。


 バルブをズームアップ。

右岸から
再生事業が始まれば、この場所からの見学も当面できなくなります。


香川用水の取水ダムである池田ダムと同様鉄骨トラス製ピア。


管理事務所のある右岸ダムサイトに上がります。
ここには各種説明板や石碑が並びます。
これは四国の形をした『四国のいのち』の碑
池田ダムにも四国の形をした碑がありますがあちらは『四国は一つ』
左手はダム湖百選のプレート。


銅製の諸元プレート。


再生事業の説明板。


 上流面
こちらもあまり飾り気はありません。
左手は表面取水設備
濁水対策として表層水の取水目的で後付けされました。


天端から。
減勢工が渦巻いています。




鉄骨トラス製のピア。


左岸から下流面。

 
堤体から突き出た水圧鉄管と早明浦発電所。


後付けの選択取水設備。


左岸高台のケーブルクレーン台座跡
今は展望台になっています。


展望台から
ダム湖の『さめうら湖』は総貯水容量3億1600万立米で四国最大、日本第9位。


早明浦ダム再生事業により、間もなく堤体右岸への掘削工事が始まります。
古い早明浦ダムの姿を見れるのも今のうち。
竣工予定は2030年(令和12年)とまだまだ先。
 
(追記)
早明浦ダム(元)には洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
2322 早明浦ダム(元)(1757) 
左岸 高知県長岡郡本山町吉野 
右岸 高知県土佐郡土佐町田井 
吉野川水系吉野川 
FNAWIP 
 
106メートル 
400メートル 
316000千㎥/289000千㎥ 
水資源機構 
1968年 
◎治水協定が締結されたダム 
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3702 早明浦ダム(再) 
左岸 高知県長岡郡本山町吉野 
右岸 高知県土佐郡土佐町田井 
吉野川水系吉野川 
FNAWIP 
 
106メートル 
400メートル 
316000千㎥/289000千㎥ 
水資源機構 
2018年~ 


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