ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

坪山ダム

2022-04-29 21:00:00 | 新潟県
2022年4月23日 坪山ダム
 
坪山ダムは新潟県佐渡市小倉の国府川水系筍根川源流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
17世紀初頭の佐渡金山開山を契機に佐渡では人口が急増、これに合わせて島内各所で新田開発が進みました。
佐渡の代表的棚田として知られる小倉千枚田もその一つで、1650年(慶安3年)から開田が進みピークには5ヘクタールの棚田が斜面を埋め尽くしました。坪山ダムの前身となる坪山溜池は小倉千枚田の水源確保のために江戸前期に築造されたと思われます。
その後1997年(平成9年)に県の溜池改修事業による大規模改修が行われ、ダム便覧ではこの事業の竣工を竣工年度としています。
一方小倉千枚田は昭和50年代以降、過疎化や高齢化による耕作放棄が急増し2000年代に入るとほぼ荒廃地寸前の状態となりました。
2010年(平成20年)に小倉千枚田管理組合が設立され棚田オーナー制度を取り入れながら管理・保全活動に取り組み、現在は1.5ヘクタールほどで生産が行われており、坪山ダムはその水源として活用されています。

小倉千枚田から荒れたダート道を東へ1.5キロほど走ると坪山ダムに到着します。
ダム便覧のフォトアーカイブスには草が茂りかなり荒れた様子の写真が掲載されていますが、小倉千枚田の復活に合わせて坪山ダムも手入れがされているようです。


土が緩いので下に降りるのは自重します。
堤高20.5メートルとのことですが、見た目は5メートルほどしかありません。


総貯水容量21万6000立米
千枚田の復活には不可欠な貯水池です。


左岸から
天端には見渡す限りのフキノトウ
残念ながら花を咲かせていますが、あと1週間も早く来たら入れ食い状態でした。


左岸の簡易な洪水吐。


越流堤は水面下。


導流部と減勢工。


取水設備や底樋管は確認できませんでした。
こちらは小倉千枚田の概要板
2000年代に入り荒廃の一途を辿った中、一口オーナー制度により復活しました。


5月の田植えを控え、すでに水が張られています。
この水は坪山ダムを水源とする筍根川から取水しています。


下に見えるのは小倉ダム貯水池の朱鷺湖。

0729 坪山ダム(1799)
新潟県佐渡市小倉
国府川水系筍根川
20.5メートル
94メートル
216千㎥/196千㎥
佐渡市農林水産部 
1997年

小倉ダム

2022-04-29 15:00:00 | 新潟県
2022年4月23日 小倉ダム
 
小倉ダムは新潟県佐渡市小倉の国府川水系小倉川源流部にある灌漑目的のロックフィルダムです。
佐渡は離島としては珍しく1万ヘクタールにもおよぶ広大な農地が広がりますが、水源となる河川はいずれも流域面積が小さく慢性的な用水不足に悩まされてきました。
戦後、農水省の補助を受けた県営事業により7基の農業ダムが建設され700万立米の水源が確保されますが、一方で大型機械導入を目的とした圃場整備の進展や、特産の柿栽培など畑作農地への用水補給など新たな水源確保が求められるようになりました。
これを受け1991年(平成3年)に農水省による『国営佐渡農業水利事業』が着手され、その灌漑用水源として2006年(平成18年)に竣工したのが小倉ダムです。
小倉ダムは離島のダムとしては最大の総貯水容量445万立米を誇り、完成後は佐渡市農林水産部が管理を受託し約1600ヘクタールの農地に灌漑用水を供給しています。
さらに2012年(平成24年)には同事業により外山ダムが完成、佐渡の農業水利事情は盤石のものとなりました。

ダム下から
利水放流や河川維持放流を利用し佐渡市小倉小水力発電所(最大184キロワット)が付設されています。


小水力発電の水利使用標識。


ロックフィルの堤体と地山を挟んで流下する洪水吐斜水路。


斜水路はかなりの急傾斜で末端にはシュートブロックが設置されています。


減勢工下流側
エンドシルの下流にはバッフルブロックが並びます。


リップラップ
堤高64メートル、堤頂長236メートルと農業用ダムとしては屈指のスケール。


朱鷺(とき)湖と命名されたダム湖。
総貯水容量445万立米は離島のダムとしては最大。


右岸の取水設備
すごい数のシャフトが並びます。


上流面。


左岸の横越流式洪水吐。


左岸高台から
広角レンズでデフォルメされていますが、洪水吐導流部は大きく湾曲して斜水路へ続きます。


上流から
ダムの上流には整備された棚田が続きます。
そしてダムの彼方には雪が残る大佐渡山脈が遠望できます。

小倉ダム天端にはチェーンが張られ『進入禁止』と記されています。
管理する佐渡市に確認したところ、あくまでも車両進入禁止の意であり徒歩での立ち入りは規制していないとのことでした。

2941 小倉ダム(1798)
64メートル
236メートル
4450千㎥/4200千㎥ 
佐渡市農林水産部
2006年

小倉川ダム

2022-04-29 11:00:00 | 新潟県
2022年4月23日 小倉川ダム
 
小倉川ダムは新潟県佐渡市小倉の国府川水系小倉川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
佐渡は離島としては珍しく広大な農地を有する一方、水源となる河川はいずれも流域面積が小さく雨水の河川流出が早いため、慢性的な用水不足に悩まされてきました。
これを受け島内各河川で農林省(現農水省)の補助を受けた農業水利事業が進められました。
小倉川および竹田川流域では1956年(昭和31年)に県営国府川左岸用水改良事業が着手され、両河川を水源とする灌漑設備が整備されました。
そしてその灌漑用水源として竹田川ダムともども1967年(昭和42年)に竣工したのが小倉川ダムです。
運用開始後は国府川左岸土地改良区が管理を受託し、佐渡市真野地区及び畑野地区の約560ヘクタールの水田に灌漑用水を供給しています。
さらに2006年(平成18年)には小倉川上流4キロ地点に国営佐渡農業水利事業により離島最大貯水容量を誇る小倉ダムが完成し、国府川左岸の畑作や北の新保川流域への供給が開始されました。

佐渡市飯持地区の市道から遠望
堤高33.1メートル、堤頂長181.3メートルの堤体が一望できるのはこの場所だけ。


県道181号線から右岸沿いの市道を北上するとダムサイトに到着します。
佐渡の農業用ダムではおなじみ、新潟農業水利施設百選の説明版。


堤頂長181.3メートルの堤体上流面
コンクリートで護岸されています。


左岸の斜樋をズームアップ。


天端には鎖が渡され関係者以外立ち入り禁止
今回は事前に土地改良区に許可を頂きました。


総貯水容量92万3000立米
真野地区及び畑野地区約500ヘクタールの水田を潤します。


下流面はきれいに刈られています。
左岸の縁を洪水吐斜水路が流下します。


導流壁右手が洪水吐減勢工
左手に取水設備からの吐口があります。


横越流式洪水吐。


上流側から見た洪水吐と上流面。


0754 小倉川ダム(1797)
新潟県佐渡市小倉
国府川水系小倉川
33.1メートル
138.3メートル
923千㎥/900千㎥ 
国府川左岸土地改良区
1964年

大野川ダム

2022-04-29 06:00:00 | 新潟県
2022年4月23日 大野川ダム
 
大野川ダムは新潟県佐渡市新穂大野の国府川水系大野川にある新潟県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
1967年(昭和42年)の羽越豪雨により大野川流域では多大な洪水被害が発生、これを契機に大野川への多目的ダム建設が採択され、1979年(昭和54年)に佐渡初の補助多目的ダムとして大野川ダムが竣工しました。
大野川ダムは大野川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、上水道用水の供給を目的としています。

旧新穂村中心部から大野川沿いの市道を遡上するとダムに到着します。
途中でダム下への管理道路が分かれますが、こちらは途中で関係者以外立ち入り禁止。
右岸ダムサイトから
大野川ダムは佐渡では唯一のゲート装備ダムでラジアルゲート2門のうち右岸側から放流しています。


ダム下に放流設備があり、常用洪水吐としてホロージェットバルブ1条、利水放流設備としてジェットフローゲートを装備
ジェットフローゲートから河川維持放流が行われています。


堤頂長は183メートルで、左岸に脆弱箇所があるためわずかに屈曲しています。


天端は車両通行可
提体が折れているのがよくわかります。


『逆カド』


ゲート越しの減勢工。


事前からこの緑色のレールが気になり、『もしや?』と思っていたのですが…
取水設備は非常に珍しいヒンジアーム式の表面取水設備。
不特定利水の大半は灌漑向けとなるため、水温の高い表面取水を行う必要からこのタイプが選択されたようです。
堤体にビルトインしたヒンジアーム式取水設備を目にしたのは鳥取の菅沢ダムに次いで2例目。
このほか秋田の素波里ダムにもヒンジアーム式取水設備がありますが、こことはまた違った型式。


ダム湖は総貯水容量139万立米。


右岸から
対岸に管理事務所があり職員が常駐。
右手が件のヒンジアーム式取水設備、管理事務所左手にインクラインがあります。


インクラインと巡視艇。


上流から
縦長のラジアルゲートと右手にはヒンジアーム式取水設備のレール。
中央には予備ゲートのコースターが見えます。

0774 大野川ダム(1796)
新潟県佐渡市新穂大野
国府川水系大野川
FNW
47メートル
183メートル
1390千㎥/1090千㎥
新潟県土木部
1979年