ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

緑ダム

2023-12-03 17:00:05 | 北海道
2023年10月21日 緑ダム
 
緑ダムは北海道斜里郡清里町の斜里川水系アタックチャ川にある灌漑目的のロックフィルダムです。
北海道北東部のオホーツク総合振興局管内の斜網地域では冷涼な気候と乏しい水利の下、非効率な畑作営農を余儀なくされ生産性向上のため抜本的な農業水利支援が求められていました。
こういった状況を改善するため、昭和40年代より北海道開発局により小清水・斜網西部・斜里3地区で国営畑地帯土地改良パイロット事業が採択され、その共同水源として1974年(昭和49年)に事業化されたのが緑ダムです。
ダム建設工事は1985年(昭和60年)に着手され2003年(平成15年)に竣工、各土地改良事業も2005年(平成17年)から2010年(平成22年)にかけて完了しました。
緑ダムの管理は清里町と網走市が受託していますが、実際の管理は清里町に委任され3地区合計1万8500ヘクタールもの畑地に灌漑用水を供給しています。
事業の完成により斜網地域では営農の効率化・集約化がはかられ北海道有数の小麦・馬鈴薯・てんさい産地となっています。
また2016年(平成28年)には農業用ダムとしては北海道初となる利水放流を利用した小水力発電所(最大出力523キロワット)が稼働しました。
 
清里町清泉の道道1115号から1車線の舗装路を約10キロ、車で30分ほど東進すると緑ダムに到着します。
ダム下への管理道路は進入禁止のため、下流面は右岸からのみ。
堤高73メートル、堤頂長345メートルと横長堤体の多い北海道のフィルダムの中ではかなりの高さを誇ります。
また凍上対策の芝も張られていません。

 
右岸の洪水吐斜水路

 
天端入り口には車止めのバリケードが設置されていますが、徒歩での立ち入り規制はありません。

 
横越流式洪水吐
奥は取水設備や艇庫を兼ねた管理棟
訪問したのが土曜日のため職員の常駐があるのかどうかは不明。

 
上流から見た洪水吐
左手は監査廊入り口。

 
竣工記念碑。

 
水利使用標識
受益農地は1万8514ヘクタールと広大
畑地灌漑のため年間を通して水利権が配分されています。


天端から管理棟を遠望
左手がインクライン、右手が斜樋。


堤体を管理道路が九十九折れに登りますがこれも通行禁止。
ダム下に放流設備や小水力発電所があるはずですがわずかに建屋が見えるのみ。

 
天端から見た右岸の眺め
対岸の高台に展望台があるのでこのあと行ってみよう。

 
左岸の監査廊入り口とリムトンネル。

 
車で展望台に上がってきました。
写真の事業説明板のほか、ダムの平面図と断面図が設置されています。


天端からの眺め
絶景です!
これが首都圏近郊なら一大観光地でしょう?
貯水池は総貯水容量710万立米で畑地灌漑のため冬場も水は抜かれません。

 
堤体をズームアップ
ダムの型式に関わらず、個人的にはこのアングルが一番の好み。

 
0176 緑ダム(2018)
北海道斜里郡清里町
斜里川水系アタックチャ川
73ートル
345メートル
7100千㎥/6400千㎥
清里町
2003年

牧の内ダム

2023-12-02 17:10:38 | 北海道
2023年10月21日 牧の内ダム
 
牧の内ダムは北海道根室市牧の内のコタンケシ川水系コタンケシ川にある根室市水道課が管理する上水道用水目的の重力式コンクリートダムです。
根室市水道事業の歴史は古く1896年(明治29年)に全国で6番目、北海道では函館について2番目に近代水道事業が開始されました。
戦後の復興から高度成長に併せ数次にわたる事業拡張が進められ、牧の内ダムは1980年(昭和55年)に根室市初の上水用ダムとして竣工しました。
現在は簡易水道を除く配水量の約3分の1を牧の内ダムが担っています。
牧の内ダムはロシアが不法占拠する北方4島を除き我が国最東端に位置するダムとしてダム愛好家に周知されていますが、上水用ダムという性格からダム周辺は広く立ち入り制限され見学ポイントは下流から遠望するにとどまります。
今回は写真を撮るだけという条件で、ダムの下流への接近を許可していただきました。
 
牧の内ダムは根室半島中央部に位置し、市街から車で10分超でダムに到達します。
ダムに通じるダートの道の行き止まりに2014年(平成26年)に改築された第二ポンプ場が現れます。
貯水池の水はここから約5キロの導水管で浄水場に送られます。

 
道路の終点は広場になっており、写真右方向約200メートルほどにダムがあります。
ダム下や天端に通じる道にはチェーンが張られ関係者以外立ち入り禁止の看板。

 
今回は写真を撮るためダムがよく見える場所までの接近を許可していただきました。

 
堤高18.5メートル
堤頂長は105メートル
市町村が管理する上水ダムらしく、洪水吐はクレスト自由越流頂1門だけ。
ダム直下に放流設備があるようですが、市との約束でこれ以上の進入は自重。

 
手前の建屋がは放流設備機械室か?


せっかく根室まで来たので、納沙布岬に立ち寄ります。


納沙布岬灯台。
灯台50選で、こちらもロシアが不法占拠する北方領土を除く我が国最東端の灯台という枕詞がつきます。


0170 牧の内ダム(2017)
北海道根室市牧の内
コタンケシ川水系コタンケシ川
18.5メートル
105メートル
696千㎥/500千㎥
根室市水道課
1980年

平取ダム

2023-11-29 17:02:09 | 北海道
2023年10月19日 平取ダム 
 
平取(びらとり)ダムは北海道沙流郡平取町芽生の一級河川沙流川水系額平川にある国土交通省が管理する多目的ダムで型式は重力式コンクリートダムです。
沙流川は日高地方屈指の大河ですが、過去より洪水被害が絶えませんでした。
一方苫小牧市、安平町、厚真町にまたがる湧払平野では1972年(昭和47年)に国家的大規模開発プロジェクトである
『苫小牧東部開発計画』が着手され、同地域への工業用水源確保が求められていました。
これを受け建設省(現国土交通省)は沙流川の治水及び苫東工業地帯への利水供給などを主目的とした
『沙流川総合開発事業』を採択、沙流川本流および支流の額平川への2基のダム建設事業が着手されました。
しかし土地買収が長引き本流の
二風谷ダムは事業着手から25年後の1997年(平成9年)にようやく竣工に至りました。
一方の平取ダムも民主党政権による事業検証など紆余曲折はあったものの、2015年(平成27年)に本体工事が着手され2022年(令和4年)に竣工、運用が開始されました。

平取ダムは国土交通省北海道開発局が直轄管理する特定多目的ダムで、ダム地点で最大1750立米/秒の洪水カットによる二風谷ダムとの相互作用による沙流川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定利水への補給、二風谷ダムとの相互運用による平取町・日高町への上水供給を目的としています。
平取ダムの顕著な特徴としては、2003年(平成15年)の台風10号(日高豪雨)など近年の集中的な豪雨による山体崩壊や洪水の頻発により二風谷ダム貯水池内の土砂堆積が顕著に進んだことを受け、貯水池内の土砂排出に重点を置いた運用が行われる点です。
具体的には多目的ダムとしては異例の河床レベルに融雪期放流設備を設けるとともに、水量豊富な融雪期は貯水池の水を抜いて流水運用を行い、流水の掃流力による土砂排出を図ります。
堤体の低い位置にゲートを設け豊富な流水で土砂の流下を促すという思想は、宮崎県の九州電力西郷ダム山須原ダムの再開発で採用された『通砂運用』と共通する部分が大きいと思います。

平取ダムの容量配分(国土交通省北海道開発局HPの平取ダム容量配分図に加筆)
水量豊富な4~6月の融雪期(図の赤線部分)は貯水池を空にして流水型運用を行い、その掃流力により貯水池内の土砂を排出させます。
 
またダム建設地点周辺はアイヌの文化的所産が多く、ダム管理所にはアイヌ文化保全の取り組みを紹介するための「ノカピライウォ・ビジターセンター」が併設されています。
 
今回は事前に平取ダム管理支所に説明付き見学をお願いし、管理支所長さま直々のガイドでダムを見学することができました。
見学の詳細は平取ダム見学の項をご覧ください。

ダム下から
洪水調節は自然調節で、非常用洪水吐としてクレスト自由越流頂11門、非洪水期および洪水期用オリフィス各1門ずつを装備。
堤体下部には向って左手から土砂流下を目的とする融雪期放流設備、利水放流ゲート、魚道が並びます。
実は平取ダムの堤頂長は350メートルに及ぶのですが見えているのはその半分にすぎず、向って右手(左岸)の段丘上にさらに堤体が続きます。
なおダム下は立ち入り禁止で、今回は特別の計らいで立ち入りさせて頂きました。

 
土砂排出を目的とする融雪期放流設備は摩耗を防ぐためステンレス等でライニングされています。

 
こちらは左岸にある魚道
サクラマスの遡上に配慮しており、河川維持放流は魚道優先で行われます。 

 
ダムサイトの電源棟。

 
上述したようにダムの堤頂長は350メートルにも及び、その過半は左岸段丘上に続きます。

 
さらにさの先も透水性の高い砂礫層となっており、止水のため連続地中壁が埋設されています。
写真の砂利の下に地中壁が設けられています。

天端は徒歩のみ開放
過剰な装飾などは許されないご時世、高欄は凝った意匠などなく手すりもシンプル。

 
クレスト自由越流頂と取水設備。

 
総貯水容量は4580万立米
ダムは額平川と宿主別川の合流地点直下に建設されており左は額平川、右手が宿主別川になります。
訪問時の水位は魚道の流入水位を保つために、制限水位の152.5メートル。 

 
天端から減勢工を見下ろすと
左から魚道、利水放流設備、非洪水期オリフィス、洪水期オリフィス、融雪期放流設備という並び。

 
河川維持放流や利水放流は魚道優先で行われます。
また俎上する魚が利水放流ゲートに向かわないよう、段差が設けられています。 
 
オリフィスをズームアップ
左が非洪水期、右のデフレクター付きが洪水期オリフィス。

 
右岸から見た機械室建屋群
手前は融雪期放流設備。

 
右岸から下流面
堤趾導流壁とフーチングで仕切られた部分は堤体の半分でしかありません。

 
管理支所に併設された『ノカピライウォ・ビジターセンター』では、アイヌの文化や風習をパネルや展示物で詳しく知ることができます。
こちらは『サルンクル イ』(沙流川流域に住む人々の食事)
漫画『ゴールデンカムイ』で話題になったチタタも紹介されています。

 
今回は特別のご配慮により管理支所長様直々のガイドでダムを見学させていただくことができました。
ご多忙の中、お時間をとっていただき厚く御礼申し上げます。
おかげで全国でも特異な融雪期放流による土砂排出の仕組が十分に理解できました。
叶うならば流水運用中の4~6月期に再訪してみたいものです。

(追記)
平取ダムには洪水調節容量が配分されていますが、台風等の襲来に備え事前放流を行うため治水協定が締結されています。

0148 平取ダム(2016)
北海道沙流郡平取町芽生
沙流川水系額平川
FNW
55メートル
350メートル
45800千㎥/44500千㎥
国土交通省北海道開発局
2022年
◎治水協定が締結されたダム

門別ダム(庫富ダム)

2023-11-19 17:00:34 | 北海道
2023年10月19日 門別ダム(庫富ダム)
 
門別ダムは北海道沙流郡日高町庫富の二級河川日高門別川水系ダム沢川にある灌漑目的のアースフィルダムで、管理は日高門別土地改良区が受託しています。
ダム所在地から庫富(くらとみ)ダムとも呼ばれ、ダムサイトの記念碑や国土地理院地形図にも『庫富ダム』と記されていますが、ここでは門別ダムと記すことにします。

馬育成が盛んな日高地方の中で旧門別町では稲作中心の農業が展開されましたが、水源となる日高門別川は渇水が多く安定した農業用水源が求められていました。
これを受け道営事業により1971年(昭和46年)に竣工したのが門別ダムで、特定の農地に灌漑用水を供給するのではなく日高門別川で水不足が発生した際に補給を行う『補水ダム』として運用されます。
一方で昭和40年代以降の競馬人気や政府の減反政策を受け水田から競走馬育成や牧草地への転換が相次ぎ、これに比して門別ダムの放流頻度は減少の一途をたどります。
土地改良区のお話では直近では日高町の水田転作率は80%に達し、直近4年間は門別ダムからの用水補給は一度も実施されていないというのが現状です。
農業事情の変化とは言え、これほど立派な水源が十分に活用できないのはなんだかもったいない気がします。

ダムは関係者以外立ち入り禁止となっていますが、今回は事前に土地改良区の許可を頂きました。
その際、ダム建設の経緯や運用、日高町の農業事情についても詳しくご教授いただきました。
日高門別土地改良区には厚く御礼申し上げます。

門別ダムは門別本町から日高門別川沿いに道道351号を北東に約15キロの位置にあります。
ダムへの入口にはゲートが設けられ、『関係者以外立ち入り禁止』と表記されています。今回は立ち入り許可を得ています。

 
100メートルほど進むと右手に堤体が見えてきます。
堤高20.8メートル、堤頂長234メートル、犬走を挟んで3段の堤体。
ここ数年は補給がないとのことですが、定期的に草が刈られているようできれいな堤体です。
手前(右岸)に洪水吐斜水路があります。

 
余水吐斜水路に沿ってダム下に下ります
写真は減勢工で北海道の溜池ではよく見られるコンクリートの梁が渡されています。
この先を進むと底樋管まで行けそうでしたが、土地改良区の方にダム下はクマが出るので注意と諭されていたのでこれ以上進むのは自重。
天端に戻ります。


天端は草付き。
ちょっとわかりづらいですが、対岸に斜樋があります。

 
右岸の洪水吐斜水路
この先で流下し3枚目写真へと続きます。

 
横越流式洪水吐。
奥のトタン小屋は資材置き場。

 
洪水吐越しの上流面。


洪水吐のそばの水神
裏にダム建設の簡単な経緯が刻されています。

草が生えていますが上流面はコンクリートで護岸。
堤頂部のコンクリートは土留めのようです。


総貯水容量25万6000立米。
湖畔の紅葉が見ごろを迎えています。


天端から見た洪水吐。


左岸の斜樋
シャフトが10本並びます。

左岸から
奥の盛り上がった部分が洪水吐斜水路。


渇水に悩まされてきた農家の期待を背負って建設された門別ダムですが、農業事情の変化から灌漑需要が低減、なかなか出番がありません。
これに臍を噛んで悔しがっているのはダム自身かもしれません。 

0085 門別ダム(庫富ダム)(2015)
北海道日高郡日高町庫富
日高門別川水系ダム沢川
20.8メートル
234メートル
256千㎥/234千㎥
日高門別土地改良区
1971年

瑞穂ダム

2021-09-02 04:53:53 | 北海道
2021年7月20日 瑞穂ダム
 
瑞穂ダムは北海道湧別郡安平町早来瑞穂の湧別川水系安平川にある灌漑目的のロックフィルダムです。
北海道開発局農水部による国営早来かんがい排水事業の灌漑用水源として1998年(平成10年)に竣工し、運用開始後は安平町が受託管理しています。
2018年(平成30年)9月の北海道胆振東部地震により堤体に亀裂が入ったほか大量土砂が貯水池内に流入するなどの被害が発生し、2021年4月にかけて災害復旧工事が行われました。
瑞穂ダムへは2019年10月、2020年10月の二度にわたり訪問しましたが、いずれも災害復旧工事中のため立ち入りできず今回3度目の正直で見学が叶いました。
 
ダム下流から
立ち入り制限があるため洪水吐を下流から見ることはできません。
右手は管理事務所。
 
堤高25.9メートル、堤頂長427.1メートルの横長の堤体に瑞穂ダムの文字。
胆振東部地震により堤体に亀裂が入り3年の歳月をかけ復旧工事が行われました。
 
瑞穂ダム下流は『瑞穂ダム公園』として整備され、瑞穂ダムと同緯度の『北緯42度46分』に位置する日本と国交のある17カ国の花や木が植えられています。
写真は植樹記念碑。
 
下流面。
 
天端は立ち入り禁止。
 
右岸に並ぶインクライン・艇庫と取水設備。
特徴的なデザインです。
 
右岸から洪水吐導流部
ダム下左手の建屋は放流設備。
 
横越流式洪水吐
左手は管理事務所ですが洪水吐の先は立ち入り禁止。
 
右岸に建つ竣工記念碑。
 
右岸からダムの上流面、貯水池を望みます。
左手は艇庫と取水設備。
貯水池は総貯水容量430万立米。
 
上流面には4本の縞ができています。
灌漑期による利水放流に加え少雨によりかなり水位が下がっています。
 
3度目の正直でようやく見学が叶いました。
ダム下、堤体は美しく天端も含めてもっと開放してくれればなあ。

0164 瑞穂ダム(1690)
北海道勇払郡安平町早来瑞穂
勇払川水系安平川
25.9メートル
427.1メートル
4300千㎥/3900千㎥
安平町
1998年

厚幌ダム

2021-09-01 12:59:05 | 北海道
2021年7月20日 厚幌ダム
 
厚幌(あっぽろ)ダムは北海道湧別郡厚真町幌内の二級河川厚真川本流にある北海道建設部が管理する多目的台形CSGダムです。
1986年(昭和61年)に厚真川総合開発事業が着手されますが、厚真川上流にはすでに灌漑目的の厚真ダムがありました。
そこでダム建設地点の厚真町幌内地区からそれぞれ1文字ずつ採り『厚幌ダム』と命名され2018年(平成30年)に北海道の当別ダム、沖縄の金城ダムに次いで国内3例目の台形CSGダムとして竣工しました。
しかし試験湛水終了後の2018年(令和元年)9月の北海道胆振東部地震により、厚真町では甚大な被害が発生します。
幸いダム本体には損傷はなく翌2019年(平成31年)3月に運用が開始されました。
厚幌ダムは(国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、厚真川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水(既得灌漑用水)への補給、湧別東部地区やく3000ヘクタールの農地への灌漑用水の供給、厚真町への上水道用水の供給を目的としています。
 
ダムの運用は無事開始されたものの、貯水池周辺の土砂崩壊により大量の土砂がダム湖に流入しているほか、厚真川沿いの道道235号線や上流の厚真ダムは地震により大きな損害を受けておりいまだに各所で災害復旧工事が行われています。
ダムへのアクセスとなる道道235号線も通行できるのは左岸ダムサイトまで、ダムも天端が開放されているのみです。
 
左岸の道道235号線から
堤高47.2メートル、堤頂長516メートルの横長ダム
日本では3例目、北海道では当別ダムに次ぐ台形CSGダムです。
 
洪水吐は右岸側に非常用洪水吐の自由越流頂7門、左岸側に常用洪水吐の自由越流頂6門が並び、常用洪水吐導流部は台形CSGダムらしくカスケードになっています。
また右岸は堤趾導流壁、左岸は直線の堤体導流壁となっています。
 
左岸ダムサイトの管理事務所。
 
ダム案内板。
道道235号線はダムから上流は災害復旧工事のため通行止め。
 
竣工記念碑も台形。
 
CSGダムは比重が軽く、水圧を利用してバランスをとるため上流面にも傾斜がついています。
取水設備も傾斜式ゲートになります。
左奥は胆振東部地震による地滑りあと。
 
減勢工と放流設備
ダム下も災害復旧工事施設となっているため立ち入りできません。
 
放流設備。
 
ダム湖は総貯水容量4740万立米。
写真で見てもわかるように地震による斜面崩壊により大量の土砂が流入しています。
 
天端は徒歩のみ開放
写真は取水設備建屋。
 
ダム本体は地震による被災を免れましたが、ダム周辺の至る所で被害が残りダムへの道中も工事車両が行き交い騒然として雰囲気です。
上流の厚真ダムの復旧が無事に終了し、落ち着いたときに改めて訪問してみたいと思います。

2974 厚幌ダム(1689)
北海道勇払郡厚真町幌内
厚真川水系厚真川
FNAW
CSG
47.2メートル
516メートル
47400千㎥/43100千㎥
北海道建設部
2018年

二風谷ダム

2021-08-20 17:00:21 | 北海道
2021年7月20日 二風谷ダム 
 
二風谷ダムは北海道沙流郡平取町二風谷の一級河川沙流川本流にある国土交通省が管理する多目的ダムで型式は重力式コンクリートダムです。
沙流川は日高地方有数の大河川ですが、過去より洪水被害が絶えませんでした。
一方苫小牧市、安平町、厚真町にまたがる湧払平野では1972年(昭和47年)に国家的大規模開発プロジェクトである『苫小牧東部開発計画』が着手され、同地域への工業用水源確保が求められていました。
これを受け建設省(現国土交通省)は沙流川の治水及び苫東工業地帯への利水供給等を主目的とした『沙流川総合開発事業』を採択、沙流川本流および支流の額平川への2基のダム建設事業が着手されます。
このうち二風谷ダムについてはダム建設地点がアイヌ民族の聖地とされる場所だったこともあり事業差し止めをめぐる行政裁判等反対運動が長引きましたが、1997年(平成9年)に竣工、翌1998年(平成10年)より運用が開始されました。
さらに2022年(令和4年)に平取ダムの運用が始まったことで両ダム連携した柔軟な運用が可能となりました。
二風谷ダムは国土交通省北海道開発局が直轄管理する特定多目的ダムで、平取ダムとの相互作用による沙流川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定利水への補給、沙流川流域2350ヘクタールの農地への灌漑用水の供給、平取ダムとの相互運用による平取町・門別町への上水道用水の供給、苫小牧東部工業地帯への工業用水の供給、ほくでんエコエナジー(株)二風谷発電所での最大3000キロワットのダム式発電を目的としています。
 
苫小牧東部工業地帯への利水供給を主目的として建設された二風谷ダムですが、バブル崩壊後の景気低迷などにより利水需要は計画を大きく下回り水余り状態となりました。
一方2003年(平成15年)台風10号(日高豪雨)などの集中豪雨による山体崩壊や洪水に影響で当初想定を超える土砂堆積が進み、運用開始当初550万立米だった堆砂容量を利水容量の振り替えにより1430万立米に拡大させる異例の事態となりました。
他方、堆砂進行後のダム運用や魚道を通じた魚類の遡上については相応の効果が認められ、これらは平取ダム建設の際にフィードバックされています。
 
二風谷ダムは西欧のダムを彷彿とさせる独特のデザインが採用されマニアには人気のダムです。
またアイヌ民族の聖地をめぐる反対運動もあったことなどから、アイヌの歴史を紹介する沙流川歴史館やアイヌの城郭跡を保存した『チャシ公園』などが整備され、こうした点を評価され日本ダム協会による『日本100ダム』に選定されています。
 
右岸高台から
デザインのみならずゲート配置も独特。
向こう側(左岸)から
左岸クレストゲート5門、オリフィスゲート7門、右岸クレストゲート1門、魚道ゲート1門、利水ゲート1門の順に並んでいます。

 
天端は徒歩のみ開放されています。
こちらは左岸クレストゲート。

 
これはクレストゲートの減勢工、右手はオリフィスの減勢工になります。 

 
オリフィスゲート
カラフルなアパートのようです。

 
ダム湖の二風谷湖
総貯水容量3150万立米ですが、写真で見てもわかるように堆砂が進み2016年(平成28年)現在で堆砂量は1239万立米にも及びます。
苫小牧東部工業地帯向け利水需要が計画を大きく下回っていることもあり、利水容量からの振り替えにより堆砂容量は当初の550万立米から1430万立米に変更されました。

 
魚道ゲート
ダム湖の水位変動にあわせて自動で上下に動くスイングシュート式で、ダム湖側の入り口が魚が通りやすい適当な高さになるようになっています。


 
手前の赤いゲートが右岸クレストゲート。

ほくでんエコエナジー(株)二風谷発電所
利水放流を利用して最大3000キロワットのダム式発電を行います。

 
竣工記念碑。

 
上流面
左から左岸クレストゲート、オリフィスゲート、右岸クレストゲート、魚道ゲート、利水ゲート。 
 
赤いゲートが右岸クレストゲート、右隣が魚道ゲート、さらに右手が利水ゲートで発電所の取水ゲートを兼ねています。

0149 平取ダム
北海道沙流郡平取町二風谷
沙流川水系沙流川
FNAWIP
32メートル
550メートル
31500千㎥/17200千㎥
国土交通省北海道開発局
2021年

岩知志ダム

2021-08-17 12:38:55 | 北海道
2021年7月20日 岩知志ダム
 
岩知志ダムは北海道沙流郡日高町三岩の一級河川沙流川本流にある北海道電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。。
1951年(昭和26年)の電気事業再編令で誕生した北海道電力(株)は戦後の電力不足に対処するため各所で電源開発を進めます。
1958年(昭和33年)に完成した岩知志ダムもその一つで、ここで取水された水は岩知志発電所に導水され最大1万3500キロワットのダム水路式発電を行っています。
 
ダム直下に国道237号景勝橋が架かりダムと正対できます。
ラジアルゲート3門を装備したいかにも発電ダムと言った体。
 
ゲートは紫に近い朱色。
 
ゲート部分をズームアップ
左岸(向かって右)1門だけゲート形状や色が異なります。
一方右岸2門はゲート上部に切れ込みがあります。
 
右岸ダムサイトからも見学できます。
左岸の取水口。
 
上流面
かつてはピアは被覆されていたようですが、今は巻き上げ機がむき出し。
 
 
ダム直下の左岸が大きく崩落しています。
2019年(平成31年)の胆振東部地震によるものと思われますが、大丈夫なんでしょうか?
 
水利使用標識。
 
(追記)
岩知志ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

0051 岩知志ダム(1687)
北海道沙流郡日高町三岩
沙流川水系沙流川
33メートル
92.2メートル
5040千㎥/560千㎥
北海道電力(株)
1958年
◎治水協定が締結されたダム

美生ダム

2021-08-17 12:30:30 | 北海道
2021年7月20日 美生ダム
 
美生(びせい)ダムは北海道河西郡芽室町伏見の十勝川水系美生川にある灌漑目的の重力式コンクリート・フィル複合(フィルコンバインド)ダムです。
十勝平野中央部に位置する芽室地区は大規模な畑作・酪農が展開されていますが、灌漑期の降水量が少ない上にかんがい施設も未整備で、用水不足が恒常化していました。
1981年(昭和56年)に北海道開発局農水部による国営かんがい排水事業芽室地区が着手されその灌漑用水源として1999年(平成11年)に竣工したのが美生ダムです。
運用開始後は芽室町が管理を受託、かんがい排水事業全体も2007年(平成19年)に竣工し、約1万2000ヘクタールの畑地に灌漑用水を供給しています。
ダムは地質上の理由によりフィルコンバインド型式が採用され、右岸がセンターコアロックフィルダム、左岸が重力式コンクリートダムとなっています。
 
芽室町上美生から美生川沿いの林道を約10キロ西進すると美生ダムに到着します。
ダム下への管理道路は進入禁止、ダムも右岸入り口にゲートがあり立ち入りできません。
 
ただし、右岸高台からダムや管理事務所、ダム湖などを見ることができます。
堤体は右岸側がロックフィル、左岸が重力式コンクリートのフィルコンバインドダムで堤頂長は350メートル。
 
堤体をズームアップ。
万一の堤体越流に備え、フィル部分の決壊防止のため重力式コンクリート部分の堤高が低くなっています。
 
洒落たデザインの管理事務所。
 
コンクリート部はクレスト自由越流頂6門を備え堤高は47.2メートル
ゲート右岸側に取水設備があります。
 
 
左手の建屋は艇庫でダム湖側にインクラインがあるようです。
 
美生ダムの説明板
文字が剥げて全く読めません。
 
山中深くにありますが総貯水容量は940万立米とかなりのスケールで1万ヘクタールを超える広大な畑地の水源となっています。

0137 美生ダム(1686)
北海道河西郡芽室町伏見
十勝川水系美生川
GF
47.2メートル
350メートル
9400千㎥/6000千㎥
芽室町
1999年

幕別ダム

2021-08-17 12:01:51 | 北海道
2021年7月20日 幕別ダム
 
幕別ダムは北海道中川郡幕別町日進の十勝川水系稲士別川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
十勝川右岸の低平地に位置する幕別地区では広く畑作が展開されていますが、灌漑期の降水量が少ない上に灌漑施設の老朽化が進み用水不足が恒常化していました。 
1983年(昭和58年)に北海道開発局農水部による国営かんがい排水事業幕別地区が着手され、その灌漑用水源として2004年(平成16年)に竣工したのが幕別ダムです。
運用開始後は幕別町が管理を受託、かんがい排水事業全体も2009年(平成21年)に竣工し、現在は約1000ヘクタールの畑地へ灌漑用水が供給されています。
 
ダム下は立ち入り禁止
堤高26.9メートル、堤頂長335メートルと北海道らしい横長ダムです。
 
貯水池左岸に斜樋があり、そこからの水路が伸びています。
 
堤体左岸中段のこの建物は放流設備と思われます。
 
天端も立ち入り禁止。
ダムはここから遠望するのみ。
 
左岸に艇庫と取水設備を兼ねた建屋がありインクラインと斜樋が並んでいます。
 
こちらは右岸の管理事務所
隣に国営幕別かんがい排水事業の説明板がありますが、さすがに文字は読み取れません。
 
グーグルの空撮写真を見るとなかなかきれいなアースダムですが、これだけガードが堅いと手も足も出ません。

0150 幕別ダム(1685)
北海道中川郡幕別町日進
十勝川水系稲士別川
26.9メートル
335メートル
2300千㎥/2000千㎥
幕別町
2004年

西札内ダム

2021-08-17 11:51:28 | 北海道
2021年7月19日 西札内ダム
 
西札内ダムは北海道河西郡中札内村新札内南の十勝川水系札内川左支流ヌプカクショナイ川にある農地防災目的のアースフィルダムです。
ヌプカクシュナイ川と札内川合流地点下流域では融雪期や豪雨時に洪水被害が多発し流域の農地に多大な被害をもたらしてきました。
そこで北海道は1979年(昭和54年)に農水省の補助を受けた防災ダム事業に着手、1994年(平成6年)に竣工したのが西札内ダムです。
 
ダム建設に合わせて周辺の環境整備が進められ、ダム下は桜公園として開放されています。
堤高21メートル、堤頂長184メートルの横長ダムで、クレスト自由越流頂3門、自然調節式オリフィス1門を擁しています。
 
芝が刈られたばかりのダム下は開放感たっぷり。
時間に余裕があればお弁当でも広げてのんびりくつろぎたいところです。
 
ダム下に建つアイヌ人サツナイ族の祖の銅像。
 
ダム周辺の案内板。
 
下流面。
 
かなり木が邪魔する上流面の眺め
赤いゲージはオリフィスゲート。
 
天端からの眺め
減勢工には副ダムが設置されています。
小さな公園ですがきれいに整備され気持ちのいいスペース。
 
総貯水容量94万6000立米の貯水池。
ダムの目的は農地防災のFだけなのでこれでダム最低水位。溜まっている水は堆砂容量分となります。
 
オリフィスの操作バルブ。
 
下流面。
 
天端と管理事務所
管理事務所の屋上は展望台になっていますが、木が茂り眺めはよくありません。
 
ダム北側の山頂には一本木展望タワーがありますが、ここからも木が茂りダムを見ることはできません。

0160 西札内ダム (1684)
北海道河西郡中札内村新札内南
十勝川水系ヌプカクショナイ川
21メートル
184メートル
946千㎥/773千㎥
中札内村
1994年

札内川ダム

2021-08-17 11:40:31 | 北海道
2021年7月19日 札内川ダム 
 
札内川ダムは北海道河西郡中札内村南札内の十勝川水系札内川にある多目的重力式コンクリートダムです。
札内川は十勝川の主要支流で十勝平野を南北に縦断し農業王国十勝を支える重要河川ですが、渇水や洪水被害が多く抜本的洪水対策や利水対策が望まれていました。
1981年に当地への多目的ダム建設が決定し、1988年(平成元)より本体工事が着手され1998年(平成10年)に札内川ダムが竣工しました。
ダム建設地点が日高山脈襟裳国定公園内に位置することから、建設工事は自然改変を抑制し自然環境の保全に配慮した形で行われました。
また積雪により当期の工事が抑制されることから、工期の短縮が可能なRCD工法が採用されました。
札内川ダムは国交省北海道開発局建設部が直轄管理する特定多目的ダムで、札内川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水(既得灌漑用水)への補給、札内川沿岸農地約2万ヘクタールへの灌漑用水の供給、十勝中部広域水道企業団を通じ1市4町2村の人口約33万人への上水道用水の供給、電源開発(株)札内川ダム発電所での最大8000キロワットのダム式水力発電を目的としています。
 
中札内中心部から札内川沿いに道道111号線を西進すると札内川ダムに到着します。
国交省直轄ダムらしく、ダム下は『ダム下流公園』として整備されています。
下流から正対
クレスト自由越流頂6門、自然調節式オリフィスは非洪水期ゲート2門、洪水期ゲート1門
ゲートレスダムですがオリフィス部分が凝ったデザインになっており大量生産ダムとは一線を隔しています。
 
オリフィスをズームアップ
上段2門は非洪水期ゲート、下段1門は洪水期ゲートですが、穴が三つでシュミラクラ現象により顔にも見えちゃいます。
一方操作室は円形の前面に窓が配置されこちらはロボットの頭にも見えます。
 
 
右岸から
堤高114メートル、堤頂長300メートルと横長ダムの多い北海道の中では数少ない高さを感じられるダムです。
 
 
上流面。
 
天端から
ダム下はダム下流公園として開放されていますが、最近はクマの出没が増え常にクマ避けの放送が流されています。
右岸ダム下の建屋は放流設備と電源開発札内川発電所。
 
手前は放流設備、奥が札内川発電所。
 
とかちリュウタン湖と命名されたダム湖は総貯水容量5400万立米。
空撮すると竜のように見えることからこの名がつけられました。
上流には日高の名峰カムイエクウチカウシが控えますがダムから見ることはできません。
 
左岸に管理事務所と資料館があり、管理事務所からインクラインが伸びます。
天端は車両通行可能。
 
ダム湖畔に道路がないため上流面はこれが精いっぱい。
 
 
(追記)
札内川ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

0173 札内川ダム(1683)
北海道河西郡中札内村南札内
十勝川水系札内川
FNAWP
114メートル
300メートル
54000千㎥/42000千㎥
国土交通省北海道開発局
1998年
◎治水協定が締結されたダム

佐幌ダム(元)

2021-08-17 11:17:34 | 北海道
2021年7月19日 佐幌ダム(元)
 
佐幌ダム(元)は北海道上川郡新得町新内の十勝川水系佐幌川にある北海道建設部が管理する治水目的の重力式コンクリートダムです。
1962年(昭和37年)8月の台風9号による甚大な洪水被害を契機に佐幌川の河川整備が進められ、治水対策をより盤石とするために当地への治水専用ダム建設が決定しました。
佐幌ダム(元)は建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助治水ダムで、佐幌川の洪水調節を目的として1984年(昭和59年)に竣工しました。
また河川維持放流を利用して管理用発電を行っています。
 
2016年の平成28年8月豪雨により佐幌川流域では多大な洪水被害が発生しました。
これを受け2019年(令和元年)に『佐幌ダム再生事業』が採択され、当ダムの再開発が決定しました。
具体的には堤高を2.9メートル嵩上げして49.5メートルとし、総貯水容量は1200万立米(+160万立米)、有効貯水容量は960万立米(+160万立米)とすることで、治水能力の増強を図ることを目的として2032年(令和14年)の竣工を目指しています。
 
ダム下から
クレスト自由越流頂は6門
自由越流頂と自然調節式オリフィスが横に並ぶ珍しい形状です。
 
オリフィスゲートをズームアップ。
ゲート上部に操作建屋を配置した縦長構造。
下には低水放流設備であるジェットフローゲートがあります。
 
上流面。
 
右岸の竣工記念碑。
 
ダムの説明板。
 
天端は車両通行可。
 
クレスト自由越流頂とオリフィスが横並になっているため減勢工も独特の形状
手前の草付きはクレスト自由越流頂の減勢工。
 
ダム下には管理用発電所を挟み二本の洪水吐導流部が伸びます。
右手はクレスト自由越流頂及び河川維持放流を利用した管理用発電所からの放流路
左手はオリフィス及びジェットフローゲートの減勢工。
 
貯水池はサホロ湖で総貯水容量1040万立米。
治水専用ダムですが、堆砂容量240万立米分が貯留されています。
 
左岸から
訪問時、再開発に向けた堤体の強度調査工事が行われていました。

0111 佐幌ダム(元)(1682)
北海道上川郡新得町新内
十勝川水系佐幌川
46.6メートル
255メートル
10400千㎥/8000千㎥
北海道建設部
1984年
------------
3709 佐幌ダム(再)
北海道上川郡新得町新内
十勝川水系佐幌川
49.5メートル
292メートル
12000千㎥/9600千㎥
北海道建設部
2019年~

十勝ダム

2021-08-17 11:04:11 | 北海道
2021年7月19日 十勝ダム 
 
十勝ダムは北海道上川郡新得町屈足の一級河川十勝川本流上流部にある多目的ロックフィルダムです。
十勝川は十勝平野全域に本支流を毛細血管のように張り巡らし農業王国十勝を支える重要河川ですが、洪水被害も多くその治水・利水対策は十勝の長年の悲願でもありました。
1962年(昭和37年)8月の台風9号による甚大な被害を契機に『十勝川水系工事実施基本計画』が採択され当地へのダム建設事業が着手され1984年(昭和59年)に十勝ダムが竣工しました。
十勝ダムは国交省北海道開発局建設部が直轄管理する特定多目的ダムで、十勝川の洪水調節(最大毎秒1450立米の洪水カット)、北海道電力十勝発電所での最大4万キロワットのダム式発電を目的としています。

ダム下は十勝ダムキャンプ場できれいな芝生の広場になっていますが、トイレや水道施設が貧弱でキャンパーの利用はあまりなさそう。
木が伸びて堤体を一望することはできません。
 
左岸ダム下の常用洪水吐からの放流口。
 
右岸の非常用洪水吐はラジアルゲート2門を装備
ここから見上げると堤高84.3メートルの高さを実感できます。
 
 
北海道電力十勝発電所と放流路
最大4万キロワットのダム式水力発電を行います。
 
右岸から下流面
北海道のロックフィルダムはリップラップに芝が張られたものが多いのですが、ここはロック材がむき出し。
 
洪水吐から
バップルピアと背の高いエンドシルを装備
上から3枚目の写真は下流の橋から撮りました。
 
ラッパのように大きく開いた洪水吐の導流堤
奥は十勝発電所の取水塔。
 
堤頂長は443メートルあり、天端は道道718号が通ります。
 
東大雪湖と命名されたダム湖は総貯水容量1億1200万立米
ダム右岸(手前)に十勝発電所の取水塔、左岸(奥)に常用洪水吐の取水塔があります。
 
ロックフィルの断面を模した記念碑。
 
左岸の常用洪水吐とインクライン。
 
(追記)
十勝ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

0112 十勝ダム(1681)
北海道上川郡新得町屈足
十勝川水系十勝川
FP
84.3メートル
443メートル
112000千㎥/88000千㎥
国交省北海道開発局
1984年
◎治水協定が締結されたダム

元小屋ダム

2021-08-17 10:54:40 | 北海道
2021年7月19日 元小屋ダム
 
元小屋ダムは北海道河東郡上士幌町黒石平の十勝川水系音更川にある電源開発(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編令により新たに北海道電力が誕生しますが、包蔵電力豊富な北海道の電源開発を同社のみで行うのは不可能で、公営発電である北海道企業局や半官半民の電源開発(株)による電源開発が併せて進められました。
電源開発(株)は十勝川支流の音更川や利別川での電源開発に注力、1956年(昭和31年)に音更川上流部に糠平ダム・発電所(最大出力4万2000キロワット)を完成させます。
そして4年後の1960年(昭和35年)に糠平ダム下流5キロ地点に建設されたのが元小屋ダムです。
元小屋ダムは糠平発電所の出力調整に伴う水位変動を緩和するための逆調整池に加え、ここで取水された十勝川水系美里別川にある芽登第1・第2発電所に導水され計5万5500キロワットのダム水力発電に供されます。
元小屋ダムの完成により糠平ダムの2億立米弱の巨大な貯水池のより効率的運用が可能となりました。
 
残念ながら元小屋ダムは一般開放されておらず、その姿を目にすることはできません。
国道273号線沿いの元小屋ダムへの管理道路入り口に立つダムの看板。
 
元小屋へ通じる道路の厳重なゲート。
 
(追記)
元小屋ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

0056 元小屋ダム
北海道河東郡上士幌町黒石平
十勝川水系音更川
32メートル
86メートル
2610千㎥/798千㎥
電源開発(株)
1960年
◎治水協定が締結されたダム