ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

木曽ダム

2024-07-21 20:00:00 | 長野県
2015年11月22日 木曽ダム
2024年 5月25日
 
木曽ダムは長野県木曽郡木曽町福島の一級河川木曽川水系王滝川にある関西電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
木曽川水系では戦前より5大電力の一つ大同電力(株)が電源開発を進め、のちにこれらを接収した日本発送電も木曽川支流王滝川最上流部に総貯水容量6000万立米超の三浦ダム を完成させるなど同流域での電源開発に邁進しました。 
1951年(昭和26年)の電気事業再編成により木曽川流域の発電事業の大半は関西電力が継承しますが、木曽川上流部の既設発電所の取水能力の低さがボトルネックとなり、せっかくの三浦ダムの6000万立方メートルの水を効果的に活用することができませんでした。
この解決手段として1968年(昭和43年)に建設されたのが木曽ダムで、併せて既存の寝覚・上松・桃山・須原各発電所をバイパスし木曽発電所に至る全長14.6キロの新導水路が建設されました。
木曽発電所では最大11万6000キロワットのダム水路式発電を行うほか、水資源機構の牧尾ダムを上部池、当ダムを下部池として三尾発電所で最大3万5500キロワットの混合揚水式発電を行います。(牧尾ダムを水源とする愛知用水向け放流は基本的に三尾発電所経由で行われます。)
さらに従来水路式発電を行っていた寝覚発電所以下4発電所への送水も当ダムを調整池とすることで安定した発電が可能となりました。
この結果、木曽川本流での河川利用率は大きく改善し三浦ダム の貯水容量を十分に生かし効率的発電が可能となりました。 

木曽ダムには2015年(平成27年)11月に初訪、2024年(令和6年)5月に再訪しました。
掲載写真にはそれぞれ撮影日時を記載しています。
 
木曽川左岸を走る国道19号から木曽川にかかる管路橋(通称サイホン橋)に向かうと、木曽川越しに木曽ダムと正対できます。
場所はちょうど木曽川と支流の王滝川の合流地点で、木曽ダムは王滝川を閉め切って作られています。
(2024年5月25日)

 
クレストにはラジアルゲート3門を装備、もちろん関電ブラック。
右岸(向かって左)のゲートにフラッシュボードがついています。
減勢工左右両岸はコンクリートで固められ、護岸のため一段高いシュートが設けられています。
(2024年5月25日)


サイホン橋と木曽ダム
サイホン橋は寝覚発電所建設に併せて1938年(昭和13年)に竣工。
橋から約2キロ上流にある木曽川取水堰から導水しています。
(2024年5月25日)

 
橋の上部はプレートガーター、下部はプラットトラスの組み合わせ。 
写真ではわかりませんが木曽川両岸にタンクが設けられ、名前の通りサイフォンで木曽川を越えます。
(2015年11月22日)


水路管の上には鉄板が張られ、車両の通行も可能。
(2024年5月25日)


(2024年5月25日)

 
サイホン橋で王滝川右岸に向かうと、発電所への取水ゲートが現れます。
向かって右手は木曽川取水堰からサイホン橋経由の水、左手が木曽ダムからの水
取水ゲートの先で木曽発電所と寝覚発電所に分水されます。
(2024年5月25日)


(2024年5月25日)


ダムの右岸を町道が通りますが、フェンスや樹木が邪魔をしてダムをすっきりと見ることができません。
ピアにゲート巻き上げ機が並びます。
(2024年5月25日)

 
木曽ダムの取水工。
(2024年5月25日)


上流面。
(2024年5月25日)

 
こちらは左岸から
対岸に取水工がやスクリーンが見えます。
(2015年11月22日)

再訪時は左岸への道が工事で通れませんでした。
左岸からはダム下流の河原に下りるルートがあるので、再訪する機会があればそちらにも足を延ばしたいと思います。

(追記)
木曽ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

1015 木曽ダム(0061) 
長野県木曽郡木曽町福島 
木曽川水系王滝川
35.2メートル
132.5メートル
4367㎥/1844㎥
関西電力(株)
1968年
◎治水協定が締結されたダム