ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

伊奈川ダム

2024-07-23 20:00:00 | 長野県
2015年11月22日 伊奈川ダム
2024年 5月25日
 
伊奈川ダムは長野県木曽郡大桑村長野の一級河川木曽川水系伊奈川上流部にある関西電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
木曽川左支流の伊奈川では大正期に大同電力(株)系列の木曽発電(株)が相之沢・田光・橋場発電所を稼働させていました。
3発電所は電力国家管理政策による日本発送電(株)の接収ののち、1951年(昭和26年)の電気事業再編で関西電力が事業を継承します。
1970年代のオイルショックによる火力コストの上昇や、家電の普及に伴う電力需要増大を受け同社は既設発電所の増強や新規電源開発に着手し、包蔵水力に余力のあった伊奈川では新たに伊奈川発電所が新設されその取水ダムとして1977年(昭和52年)に竣工したのが伊奈川ダムです。
ここで取水された水は伊奈川発電所(最大出力4万700キロワット)および既設の相之沢発電所(最大出力6200キロワット)、田光発電所(最大出力2500キロワット)・橋場発電所(最大1900キロワット)に送水されます。
 伊奈川ダムには2015年(平成27年)11月に初訪しますが、ダム構内が立入り禁止のため左岸から見学するのみでした。
その後、伊奈川下流からダム直下まで遡上することが可能と分かり2024年(令和6年)5月に再訪しました。
掲載写真はすべて再訪時のものとなります。

大桑村須原から伊那川沿いを約10キロ、車で30分ほど進むと車両進入禁止のゲートとなります。
このゲートの先のヘアピンの脇から伊奈川左岸に下りることができます。
洪水吐は関電ブラックのラジアルゲート2門、堤体は二つのゲートの間でわずかに屈曲しています。
河原には花崗岩の巨石が積み重なるように転がり、花崗岩に洗われた水がとにかく美しい。
 
左岸ゲートから放流中
減勢工はゲート両側に導流壁が設けられ、シュート部は洗堀防止のため分厚い叩きになっています。

 
ゲートをズームアップ
木曽川流域の関西電力の発電ダムの大半はずらっと並ぶゲートで川を閉め切るタイプ。
その中、昭和50年代に完成した伊奈川ダムは形状的にも異質のダムと言えます。

 
減勢工には副ダムはなく、分厚い叩きが設けられています。

 
道路に戻り左岸ダムサイトに上がります。
下流面、と言ってもほとんど見えません。

 
こちらは発電所への導水路吞口。
トンネルの先で伊奈川発電所と相之沢発電所に分水されます。


水利使用標識。

 
天端は立入り禁止
堤体中ほどで屈曲しています。
グレーチングの下には電気や通信ケーブルが入っています。

 
管理事務所と取水ゲート。

 
総貯水容量は80万3000立米ですが、堆砂が進み有効貯水容量は50万3000立米
とにかく水が美しく、まるで沖縄の海のよう。

 
ゲートをズームアップ。

 
実は伊奈川ダム上流にはもう一つ伊奈川第2発電所があります。
こちらはその放流口。


伊奈川ダムに至る途中で相之沢発電所への水圧鉄管を跨ぎます。
有効落差243.8メートルのほぼ中段
最大6200キロワットの発電を行います。

 
さらに下流の田光発電所
相之沢発電所の放流水を利用し最大2500キロワットの発電を行います。

 
(追記)
伊奈川ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

1040 伊奈川ダム(0060)
長野県木曽郡大桑村長野
木曽川水系伊奈川
43メートル
105メートル
803㎥/505㎥
関西電力(株)
1977年
◎治水協定が締結されたダム


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