彼は優秀か…２１

亀田部長が帰った途端…沢田さんから笑みが消えました。
「ねぇ…飲み直しましょうよ」
「…」誘うような挑発的な目線で山川課長をじっと見つめます。
「俺ち、ちょっと…」のんびり構えていた山川課長もさすがに事態がヤバイと感づいてきました(笑)
「いいじゃあないの！それとも奥さんが怖いの…」
じ、冗談じゃあない!! 山川課長はむきになります。
今回の転属もみゆき…つまり女房ですが、
「そうなの…」一言あっただけであとはため息をつくばかりでした。
最少は俺の事を心配しているのか、と思ったのですが、そうじゃありません。 娘の入試ばかり考えていたのです。要するに世間体を気にしていたのですね。
「あんた、高辻役員に相談してみたら…」
又役員かよ…
こいつは何かあったら高辻役員の名前を出すけど、今回の人事だって役員の了承済みなんだって、
こんな話題で毎日ケンカをしている始末です。
「俺には希望も夢もないよ」
せめて女房だけは味方になって欲しいのに… 二言目には「高辻役員だよ(嘆)」
そんな山川課長の内心を見抜いたように沢田さんは言います。
「冗談よ…でも私は課長がなんとか元気になって欲しいと思ったから…」
目をしばたかせています。
「え！泣いているの…」
山川課長は驚きです。
俺の事をこんなに思っていてくれたんだ！

女房の涙さえ見たことないのに…
自分のために…
山川課長は驚きを越して感激してしまいました。
「ごめんごめん！」
慌てて謝りながら山川課長は決心しました♪
よし！据え膳食わぬは男の恥だ。

山川課長は立ち上がるとボーイを呼んで「おあいそ！」と告げました。
(おいおい、居酒屋じゃあないんだからおあいそはないでしょう苦笑)
しかし山川課長は高揚していました!!
沢田さんはただ下を向いて恥ずかしそうに… していましたが、彼女の本当の気持ちは誰にもわかりません。