まっしゅ★たわごと

街歩き、建築、音楽、フランス、それに写真の話題を少々

五嶋みどりさんにサインを頂き、ヤンソンスに完敗する。

2005年11月19日 21時43分01秒 | 音楽

今日は、兵庫県立芸術文化センターにてマリス・ヤンソンス指揮のバイエルン放送交響楽団の演奏会を聴きに行ってきた。曲目は以下の通り。

・ベートーベン:序曲「レオノーレ」第3番

・プロコフィエフ:バイオリン協奏曲第1番

・ショスタコービチ:交響曲第5番「革命」

         

マリス・ヤンソンス」「五嶋みどり」「ショスタコービチ」の組み合わせが、私に「A席20,000円の出費」をさせたわけである。やっぱ本物のオケを聴くと心が震える!!やっぱ、いいっすわ!・・・てなわけで、プチ感想を書くことにする。

【ベートーベン:序曲「レオノーレ」第3番】

非の打ち所のない演奏。生で聴くのはおそらく初めて。CDで聴くと退屈する曲だけど生だと聴き入ってしまう。バンダのトランペットの音色がまた素敵だった。

【プロコフィエフ:バイオリン協奏曲第1番】

初めて聴く曲。通常のコンチェルトの「急─緩─急」の形式でなく「緩─急─緩」という特異な形式を取ったところに彼なりの野心を感じる。「緩」の部分は映画音楽に使いたいくらいの美しいメロディ。逆に中間の第2楽章は激しさは有るものの主題として心に訴えるものがなく、瞬間瞬間でショスタコービチ的な躍動感は感じるものの、やはりプロコフィエフ並みの曲だった。ちなみに私にとってショスタコービチプロコフィエフの違い」による位置付けはモーツァルトハイドンの違い」とほぼ同義である。(つまり、よく似ているけど後者は花がない」ということ)

     

20分の休憩の間にビュッフェでコーヒーをすする。(写真は終演後撮影)

【ショスタコービチ:交響曲第5番「革命」 】

第一楽章は今まで私が聞いた中でいちばん早いテンポで演奏された。あまりにも早過ぎて、ピアノが入ってくるところからマーチに移るところまでの弦楽器の動きがまるで地獄絵図のようになっていた。(どっひゃー!) 続く第二楽章の冒頭の低弦のアンサンブルがズシン!と響いて心がしびれ、第三楽章の弦楽器の美し過ぎるアンサンブルにメロメロになる。やっぱ、ショスタコービチってええわぁ!!何度も何度も生で聴いているけど、今夜ソレをまた改めて認識することになった。

だがしかし、問題の終楽章!ヤラレタ!!通常ならフォルテ(ティンパニーだけはピアノから)からフォルッティッティシモまでのクレシェンドで奏されるところを、なぜか、ティンパニーのフォルティッシモ&管楽器のスフォルザンドに続き、スピートピアノからフォルッティッティシモまでのクレッシェンドとなり、『な、なんじゃこりゃ?』と思う間、かなりスローテンポで始まったにも関わらず、2小節目からの金管楽器の第一主題で突如テンポを上げ練習番号111過ぎまで爆進してく・・・新しいスタイルだけど、初めて聴いた人にコレが「革命」終楽章と思われてもなあ。(ストコフスキーじゃないんだから・・・)なんかもう、冒頭の10秒で完敗。相撲なら「猫だまし2回喰らってノックアウト」って感じ。

     

【アンコール】

バッハはプロコフィエフの後、休憩の前に五嶋みどりさんのソロで奏される。上手過ぎ!!まるで、バイオリンデュオを聴いているように聴こえるのだ♪惚れた!五嶋みどりさんの生演奏で朝目覚めてみたい・・・ムリ。

しかし、メイン終了後のアンコールには、かなり問題有り。何が問題なのかというと上の写真を見て頂きたい。曲名を間違って書いていることが問題なのではなく、用紙の下半分が折り込まれていることが問題なのである。つまり、奏者の問題ではなく、観客の問題。ショスタコービチ終了後のカーテンコールの間、アンコールで演奏しない奏者は舞台を降りる。チューバ奏者の横にはメインの演奏中もう1台のチューバが置かれていて、奏者はアンコールのためにチューバを持ち替えて、ミュートまで用意している。アンコールが始まる。「グリーグのソルヴェイグのうた」である。美しい叙情的な音楽だ。しかし、この曲にチューバの出番はない。

でだ。今日の演奏会場には「ちょっと、クラシック聴き始めたけど、わかっているフリしていちばん早く拍手をしたい」という困った人がいた。バッハの時もピアニッシシモで奏する五嶋みどりさんの弓がまだ弦を離れないうちから拍手をしてしまう人がいた。つられて何人か拍手したが、やがて止み、彼女が弦から弓を離してから大きな拍手が起こった。

     

しかし、グリーグの場合は違った。同様にピアニッシシモで閉じようとする持続音の中でまたもや、フライング拍手!しかも今度は鳴り止まない!!困惑するヤンソンスと楽団員たち。そして・・・何度かやる気のないカーテンコールを経て全プログラム(?)は終了した。アンコールってものはメインの音楽に関連性のあるものがよく選ばれるのが普通で『チューバのミュートは何』と考えれば、ロシアつながりで『ストラビンスキーの「火の鳥」かも!?』 と思ってしかるべきだとさえ思った。しかし、百歩譲って『こんな素敵なメンバーが「ソルヴェイグのうた」で終わるはずがない』というくらいは思うべきだ。おそらく、ソルヴェイグのピアニッシシモの余韻の後、拍手の前にアタッカで【カスチェイの魔の踊り】を奏するつもりだったんだろうなと思うと個人的な落胆の度合いはけっこう大きかったりもする。

     

しかし、そんなことも忘れさせてくれる、とっておきのファンサービスがあった。終演後、五嶋みどりさんがホワイエに出てきてくれたのである。順番にひとりずつ丁寧にサインと握手と笑顔を与えてくれたのだ。私は目的を果たすと会場を後にしてライトアップされたホールの写真を撮っていたのであるが、彼女は最後の最後まで帰らない数人の観客と共に記念撮影をしたりしていた。

     

本物の五嶋みどりさんは壮麗かつ聡明で笑顔の素敵な可愛らしい人だった。また会おうぜ!