まっしゅ★たわごと

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野村芳太郎氏、逝く

2005年04月09日 19時54分08秒 | おすすめ
誠に失礼な話であるが、実は「まだご存命だったんだぁ~」というの感想を持った。既に年号が平成に変わってから今年で17年も経つが、野村芳太郎氏は実に「昭和の日本映画の一時代を担ったうちの一人」であると思う。

といいつつも、私は氏が関わった作品のうちのわずか2作品しか見てはいないのであるが、この2作品がこれまた素晴らしい出来なのである。そこで、野村芳太郎氏のお薦め映画2作品を紹介してみる。

<砂の器>
丹波哲郎が刑事役に扮しているが、それ以上に主人公の和賀英良(わがえいりょう)を演じる加藤剛の演技が光る。原作は松本清張氏の同名小説である。原作で和賀はエレキ系の妖しい音楽を奏でる現代作曲家という設定であったが、この映画ではピアノ協奏曲「宿命」を創作しているという設定になっている。ラスト近くで犯人を追い詰める執念の刑事と犯人の幼き日々のつらい回想風景がコラージュされるバックでこのピアノコンチェルト「宿命」の完成披露演奏会の模様が重ねあわされていく手法は見事としかいいようがなくティッシュ1箱無くては見られない作品である。近年、同映画を焼きなおしたカタチで、中居正居主演の同名ドラマが放映されているが、薦めたいのは断然映画版の方である。

<八甲田山>
遠い昔に起きた日本軍による「雪中行軍(せっちゅうこうぐん)」という厳冬の吹雪の中、八甲田山中を大勢の大軍で歩き切る訓練中に本当に起きた事故を描いた作品。音楽を「砂の器」と同じ故芥川也寸志氏(芥川龍之介氏の三男)が手掛けている。体力に自身のある軍人たちが出口の無い漂白の景色の中で衰弱し、また気がおかしくなりながらバッタバッタと倒れていく中で、也寸志節の切ないメロディが流れるシーンが圧巻。今から考えると、よくぞソコまでのキャスティングが組めたなと感心するほどの豪華な顔ぶれである。3時間程の長い映画であるが、退屈なタイトルに反して一度見ると忘れられない作品になることは間違いなしの一品である。