とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

劇評『消えていくなら朝』

2018-07-16 08:11:28 | 演劇
 7月15日昼。新国立劇場小劇場
[作]蓬莱竜太
[演出]宮田慶子
[出演]鈴木浩介 / 山中崇 / 高野志穂 / 吉野実紗 / 梅沢昌代 / 高橋長英

 劇作家が久しぶりに実家に帰る。彼は離婚歴があり、今回は新しいパートナーの若い女優を連れての帰郷である。家族が集まるのは18年ぶり。最初はみんな賑やかな仲のよい家族を演じているのだが、それぞれがそれぞれに対する反感を抱えている。劇作家は次の「国立で上演する作品」でこの家族を描くと宣言する。そのことが引き金になったのか、家族のどろどろした真実が次々と明らかになっていく。

 家族の中の秘密、うらみ、憎しみは誰にでもある。しかしそれはあまり表にはでない。どんなに対立しても、次の日の朝には表面上は消えているのである。この作品はそんな家族の真実を描いている。まったく新しいテーマを取り上げ、そしてすべての観客をうならせるすばらしい戯曲である。

 その戯曲を丁寧に演出し、役者は見事に演じ切った。家族だからこその微妙なニュアンスをうまくセリフにしている。リアリティのある演技に観客は引き込まれる。本当にすばらしい演劇作品だ。

 あえてひとつ私が気になった点をあげる。劇作家の連れてきた女優の家族のエピソードがあざといのではないか。あまりに演劇的な処理の仕方だ。リアリティがこの部分だけ失われているような気がした。このシーンの処理は他になかったのだろうか。

 宮田慶子さんの新国立劇場芸術監督としての最後の作品である。新国立劇場の演劇は見逃せなくなった。宮田さんの功績に感謝すると同時に、労をねぎらいたいと思う。
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