歌舞伎座で六月大歌舞伎の夜の部『月光露針路日本』を見ました。作・演出が三谷幸喜。話題の新作歌舞伎です。いわゆる「小ネタのギャグ」が気になり最初はちょっと入り込めませんでした。しかし次第に人間の強い意志で困難を乗り越えていく姿が、義理と人情をからめながら進んでいき、歌舞伎と三谷幸喜の良さが出たいい舞台になっていました。
この話は事実をもとにしているというのがまず驚きです。伊勢の漁師が嵐に巻き込まれ8か月の漂流の上アリューシャン列島のアムチトカ島に漂着する。漁師たちは日本に帰りたいと願い、さまざまないきさつの上、ロシアを横断し、ペテルブルグまで行き、エカテリーナ2世に謁見し、日本に帰る許可を得る。しかしその過程でどんどん漁師たちは命を失い、最後に日本についたのは2人だけだった。
それぞれの登場人物が時には助け合い、時には思いがぶつかり合っていきます。だれもが生きたい、帰りたいと思い、一方では仲間をいたわる気持ちがあり、分裂した心に苦しみながら、過酷な生活が続いていきます。
歌舞伎ならではの音楽や、舞台装飾が見事であり、その意味でも素晴らしさを感じました。
ただし、やはり雑な面も見られます。こういう舞台こそ早く再演し、繰り返し上演することで本当に演劇界の財産にしてほしいと思います。
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