アメリカの国家機密リーク事件の尋問を再現した映画『リアリティ』を見ました。現実社会の恐怖を感じさせる映画でした。
2017年買い物から帰宅したリアリティ・ウィナーは、FBIの捜査官に声をかけられます。リアリティは自分が何をしたのかがまだわかっていません。とは言えいくつかの思い当たることがあるような雰囲気です。そんなバカなと思う人もいるかもしれませんが、私たちは常に権力に見張られているという恐怖の中にいます。しかもネット社会では、ちょっとしたことが大きく糾弾させられる可能性があります。そんな権力機構の中で、生きている現代人の心理が伝わってきます。
FBI捜査官は、リアリティに丁寧に質問をします。その中でリアリティは自分の容疑がなんであるかを探ろうとします。疑心暗鬼の中で慎重に質問を答えていると、ある言葉に強い反応を示してきます。このあたりの心理戦がリアルです。この会話の駆け引きがおもしろい。この作品はもとは舞台作品であったようです。この作者がこの作品を作ろうとした意味がよくわかります。
リアリティは逮捕され、懲役5年の判決を言い渡されます。しかし、それが本当に正しい判決なのか。見せしめにされただけなのではないかという、もう一つのテーマが最後に示されます。
「リアリティ」というタイトルは主人公の女性の名前なのですが、リアルな尋問を描いているという意味でも取ることができます。そしてリアルなアメリカ社会という意味でも取ることができそうです。録音記録を再生しているだけとは言いながら、見事に計算されつくされた映画でした。