とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

村上春樹『騎士団長殺し』⑥「質感が違う」

2017-04-27 08:12:03 | 騎士団長殺し
 村上春樹の『騎士団長殺し』を読んでいる。気になったことをメモ的に書き残す。その6回目。

 現象学を勉強しているとき次のようなことを学んだ。理屈の上では夢と現実は区別できない。それでも実際にわらわれは夢と現実を区別している。それは現実と夢とは感覚的に区別ができるからだ。

 これと関連していることが『騎士団長殺し』に書かれている。「57私がいつかはやらなくてはならないこと」の冒頭。メタファーの旅から戻った「私」が考える。引用する。

 私はやはり暗闇の中にいた。それで自分がまだ穴の底にいるような錯覚に一瞬襲われたが、そうでないことにすぐに気がついた。穴の底の完全な暗闇と、地上の夜の暗闇とでは質感が違う。

 優れた小説はリアリティがあり、その「質感」が読者を引き込む。しかし村上春樹の小説はそこが弱いような気がする。メタファーはあくまでも物語であり、どうしてもリアリティに欠く。しかもメタファーの冒険は騎士団長によって予言されているので、成功することが約束されている。正直言ってこの「メタファーの旅」を私は楽しむことができなかった。

 さあ、いよいよ残り100ページ。どこへ連れて行ってくれるのか。期待と不安がある。
コメント (2)
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