とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

劇評『お勢登場』(2/21 シアタートラム)

2017-02-22 16:24:13 | 演劇
 作・演出 倉持裕
 キャスト 黒木華、片桐はいり、千葉雅子、寺十吾、梶原善他

 江戸川乱歩『二銭銅貨』『二癈人』『D坂の殺人事件』『お勢登場』『押絵と旅する男』『木馬は廻る』『赤い部屋』『一人二役』などの作品をお勢という女性の半生を描く一つのストーリーに再構築しているお芝居である。江戸川乱歩は昔読んだことがあり、こんな世界だったなあと思い出しながら見ていた。

 騙したつもりが騙されて、そこに人間心理の機微が見えおもしろいストーリーである。お勢以外の役者は何役かを演じ分け、お勢も年代や境遇が大きく変化しているので、何役かをこなしているのと同じである。しかし、どの役者さんも演技が達者でうまく演じ分けている。やっぱり黒木さんは若いのにうまい。このまま大きく育ってほしいと感じた。

 ただし少し気になるのは、やはり一本のストーリーとはなっていないということである。繋ぎ足しただけのような印象が残る。日本の偉大な作家の作品を後世に残すために、こういう作品は大切である。しかし、このままでは埋もれていくだけなのではないかと危惧する。こういう作品こそ、再演を重ね、そのたびに台本を改善してよりいいものに仕上げていくようになってほしい。しかしそれは一人の力によるものではない。同じ人は自分を客観視しにくいし、一度やった本をすぐに直す気にもなれないだろう。そのためにも、複数の目が必要である。日本ではまだそういうシステムができていないが、脚本家チームを作り上げることが必要なのではないかと感じる。倉持氏はこういう発想を形にした。そして多くの人でその発想をよりよいものにする。そういう演劇システムが構築されればいいと感じた。
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