2012年12月05日 17時45分22秒
http://digital.asahi.com/articles/TKY201211300399.html?ref=comkiji_txt_end_s_kjid_TKY201211300399
朝日新聞デジタル配信記事
「専門機関が頼り/適材を紹介、電話相談も
【石山英明】横浜市の工業団地にある塗装・めっきメーカー「大協製作所」。正社員の半数を超える37人が障害者だ。
塗装のラインにつり下げられた高さ約1メートルの鉄の柵に、100個前後のフックが規則正しく並ぶ。軽い知的障害のある落合弘二朗さん(24)が同僚の障害者数人と自動車部品を一つ一つフックにぶら下げ、すぐ次の柵にとりかかった。柵は専用の機械に運ばれ、塗装される。
落合さんは高校の実習で訪れたことをきっかけに、6年前に入社した。午前8時15分から午後5時5分まで働く。塗装のラインを担当し、新入社員の教育もする。「責任のある仕事を任されていて、やりがいがあります」
会社は50年以上前から障害者を雇っている。創業者である父親の後を継いだ栗原敏郎社長が、障害者が職場で頼りにされているのを知り、すべての工程を見直して障害者が担当する範囲を増やした。機械化も同時に進めると、生産性は上がり、利益も増えた。
障害者を雇うノウハウはたまった。障害者は同じ職場に複数いないと孤立しがち。障害者同士で教えあうと上達は早い。助成金などの制度も活用できる。栗原社長は「情報を集め、知恵を絞れば戦力になる。経験やノウハウがなくて採用をためらう企業は多い」と話す。
日本の企業が障害者を雇う割合は、大企業ほど高い。「特例子会社」という制度があるからだ。特例子会社は、親会社と労働条件を変えて、障害者にあった仕事を、障害者にあった仕方で任せることができる。その障害者の数を、親会社は雇用率に合算する。特例子会社同士の情報交換も活発だ。
中小企業の場合、障害者雇用に関心はあっても、二の足を踏む場合が多い。支援機関などが企業のノウハウ不足を補う必要がある。
東京都内に飲食店8店舗を展開する「ティー・ワイ・エクスプレス」は、昨年12月に初めて障害者を採用した。
アルバイトを含めて従業員は約300人。障害者雇用を検討していたが、どうしたらいいか分からない。
ハローワークに相談し、障害者のいる職業能力開発センターを見学。「通勤は自分でできるのか」などの疑問を一つ一つ解消した。ハローワークの担当者に2週間に1回程度来てもらい、仕事内容を説明。相性のよさそうな人を紹介してもらった。
管理チームの瀬川和浩マネージャーは「漠然とした不安が最初はあったが、支援のおかげで踏み出せた」と話す。今年も新たに2人を雇った。
全国約160店舗で保険の無料相談にのる「保険見直し本舗」(東京都渋谷区)も今年、2人採用した。来年さらに3人雇う。
過去に身体障害者を雇ったこともあったが、長続きしなかった。困ってハローワークに相談すると、精神障害者の雇用を勧められた。学校などを見て回って、採用を決めた。大塚功一総務人事部長は「自力では難しかったが、ようやく道が見えてきた」。
問題は障害者雇用を支える機関の人手不足だ。
神奈川県藤沢市の湘南障害者就業・生活支援センター。「出社する気が起きない。どうすればいい」。小川菜江子センター長(41)は月曜日の朝になると、スタッフとともに、就職した障害者からの電話の対応に追われる。起きられない人にモーニングコールをかけるときすらある。
障害者就業・生活支援センターは、都道府県の指定を受けて、主に社会福祉法人が運営する。生活、就業、定着など担当分野は幅広い。地域で障害者雇用を支える要だ。
相談に訪れるのは、毎年150人近い。約1時間半の面接を3回程度して、本格的に仕事を探し始める。ハローワークにいっしょに行って仕事を探し、採用面接に同席することもある。
それだけではない。すでに就職した人は200人以上。平日の夜や土日には、こうした人が職場に定着するよう支援活動をする。
ところが、湘南のセンターの職員は常勤4人、非常勤2人。ここ数年、毎年のように精神障害者や発達障害者の相談が倍増している。丁寧なケアが必要で、これまで以上に時間がかかる。小川センター長は「我々の役割がさらに重要になる。でも、時間も人手もとても足りず、人材の育成に手が回らない」と訴える。 」
http://digital.asahi.com/articles/TKY201211300399.html?ref=comkiji_txt_end_s_kjid_TKY201211300399
朝日新聞デジタル配信記事
「専門機関が頼り/適材を紹介、電話相談も
【石山英明】横浜市の工業団地にある塗装・めっきメーカー「大協製作所」。正社員の半数を超える37人が障害者だ。
塗装のラインにつり下げられた高さ約1メートルの鉄の柵に、100個前後のフックが規則正しく並ぶ。軽い知的障害のある落合弘二朗さん(24)が同僚の障害者数人と自動車部品を一つ一つフックにぶら下げ、すぐ次の柵にとりかかった。柵は専用の機械に運ばれ、塗装される。
落合さんは高校の実習で訪れたことをきっかけに、6年前に入社した。午前8時15分から午後5時5分まで働く。塗装のラインを担当し、新入社員の教育もする。「責任のある仕事を任されていて、やりがいがあります」
会社は50年以上前から障害者を雇っている。創業者である父親の後を継いだ栗原敏郎社長が、障害者が職場で頼りにされているのを知り、すべての工程を見直して障害者が担当する範囲を増やした。機械化も同時に進めると、生産性は上がり、利益も増えた。
障害者を雇うノウハウはたまった。障害者は同じ職場に複数いないと孤立しがち。障害者同士で教えあうと上達は早い。助成金などの制度も活用できる。栗原社長は「情報を集め、知恵を絞れば戦力になる。経験やノウハウがなくて採用をためらう企業は多い」と話す。
日本の企業が障害者を雇う割合は、大企業ほど高い。「特例子会社」という制度があるからだ。特例子会社は、親会社と労働条件を変えて、障害者にあった仕事を、障害者にあった仕方で任せることができる。その障害者の数を、親会社は雇用率に合算する。特例子会社同士の情報交換も活発だ。
中小企業の場合、障害者雇用に関心はあっても、二の足を踏む場合が多い。支援機関などが企業のノウハウ不足を補う必要がある。
東京都内に飲食店8店舗を展開する「ティー・ワイ・エクスプレス」は、昨年12月に初めて障害者を採用した。
アルバイトを含めて従業員は約300人。障害者雇用を検討していたが、どうしたらいいか分からない。
ハローワークに相談し、障害者のいる職業能力開発センターを見学。「通勤は自分でできるのか」などの疑問を一つ一つ解消した。ハローワークの担当者に2週間に1回程度来てもらい、仕事内容を説明。相性のよさそうな人を紹介してもらった。
管理チームの瀬川和浩マネージャーは「漠然とした不安が最初はあったが、支援のおかげで踏み出せた」と話す。今年も新たに2人を雇った。
全国約160店舗で保険の無料相談にのる「保険見直し本舗」(東京都渋谷区)も今年、2人採用した。来年さらに3人雇う。
過去に身体障害者を雇ったこともあったが、長続きしなかった。困ってハローワークに相談すると、精神障害者の雇用を勧められた。学校などを見て回って、採用を決めた。大塚功一総務人事部長は「自力では難しかったが、ようやく道が見えてきた」。
問題は障害者雇用を支える機関の人手不足だ。
神奈川県藤沢市の湘南障害者就業・生活支援センター。「出社する気が起きない。どうすればいい」。小川菜江子センター長(41)は月曜日の朝になると、スタッフとともに、就職した障害者からの電話の対応に追われる。起きられない人にモーニングコールをかけるときすらある。
障害者就業・生活支援センターは、都道府県の指定を受けて、主に社会福祉法人が運営する。生活、就業、定着など担当分野は幅広い。地域で障害者雇用を支える要だ。
相談に訪れるのは、毎年150人近い。約1時間半の面接を3回程度して、本格的に仕事を探し始める。ハローワークにいっしょに行って仕事を探し、採用面接に同席することもある。
それだけではない。すでに就職した人は200人以上。平日の夜や土日には、こうした人が職場に定着するよう支援活動をする。
ところが、湘南のセンターの職員は常勤4人、非常勤2人。ここ数年、毎年のように精神障害者や発達障害者の相談が倍増している。丁寧なケアが必要で、これまで以上に時間がかかる。小川センター長は「我々の役割がさらに重要になる。でも、時間も人手もとても足りず、人材の育成に手が回らない」と訴える。 」