2009年03月17日 22時14分記載
毎日jp配信記事(URL http://mainichi.jp/select/wadai/news/20090317k0000m040141000c.html )
「日本テレビの看板番組「真相報道バンキシャ!」の虚偽証言報道問題の責任をとり、久保伸太郎社長が16日辞任した。問題発覚から約2週間、新事実がないまま決まったトップの辞任。背景には、放送局の報道倫理に向けられた厳しい視線があるとみられる。【岩崎信道、佐々本浩材、山田尚弘】
「内部告発まがいの話を聞いた最初の発端からすべての取材活動が問題だった」。16日辞任した日テレの久保伸太郎社長は、誤報の原因について何度も同じ言葉を繰り返した。
岐阜県警の捜査関係者や日テレの説明によると、岐阜県の元建設会社役員は昨年11月上旬、インターネット上の情報提供サイトに「岐阜県内で談合がある」などと書き込んだ。「バンキシャ!」の取材班が全国の裏金問題を取材する中で、日テレの下請け制作会社スタッフが元役員の書き込みを見つけ、取材を始めたという。
制作会社のスタッフ3人は同月中旬、同県中津川市で元役員に取材。元役員は「県土木事務所は今も裏金作りをしている」「県担当者からキャッシュカードを渡され追加工事で水増しした代金を振り込めと言われた」などとうその証言をした。
取材経緯について足立久男報道局長は「最後のつめが甘かった」と説明していたが、振り込んだとされる通帳のチェックや県への具体的な内容確認は不十分だった。久保社長は「(足立局長の説明は)舌足らず。それ(最後のつめ)だけではない」と話し、取材態勢そのものに重大な瑕疵(かし)があったことを認めた。
久保社長が辞任を考えたのは2月27日。報道局幹部が証言者から直接「虚偽の証言」と確認した時だったという。会見では「この程度で番組ができているのかと思われ、報道各社にも迷惑をかけた」と口惜しそうに語った。
一方、各放送局は関西テレビ制作の「発掘!あるある大事典2」の捏造(ねつぞう)問題が発覚した07年1月以降、コンプライアンス強化に力を注いできた。
関テレ経営陣の総退陣、民放連除名(08年10月復帰)など「身内」の処分にとどまらず、行政による放送内容の監視強化を盛り込んだ法改正検討の引き金となった「あるある」問題は、放送業界にとっていわば「トラウマ」。不祥事に対する処分決定や、関係者への謝罪など事後対応が迅速化し、勉強会を開いて社員の放送倫理向上に努める局も増えている。
「あるある」ショックが薄れたころに発覚した今回の虚偽証言問題。放送評論家の松尾羊一さんは「報道番組への信用を傷つけたという点では『あるある』より深刻。取材対象の証言に寄りかかり、情報の裏取りをしなかったのは致命的」と話す。
「バンキシャ!」は元日テレアナウンサーの福澤朗さん、女優の菊川怜さんらがキャスターを務め、事件、事故、不祥事などを検証するVTR映像を中心に構成。04年には北朝鮮へのコメ支援報道を巡り小泉純一郎首相(当時)の再訪朝への同行を一時拒否され話題となった。最近1カ月間の平均視聴率は約17・5%(関東地区)で、ビデオリサーチが公表する調査で毎週部門別上位に登場している。
久保社長は会見で「ここ10年、報道を取り巻く環境が変わってきており、私が辞すことで全社員に重大性を認識してもらいたい」と発言。看板番組が報道の信頼性を傷つけたことを事実上認めた。
◇放送倫理委、特別調査へ
「バンキシャ!」の問題を受け、NHKと民放でつくる第三者機関「放送倫理・番組向上機構」(BPO)の放送倫理検証委員会は特別調査チームを設けて実態解明のための審理に入ることを決めた。同委員会が審理を行うのは不二家について誤って報じたTBS番組(07年)以来、2例目だが、特別調査チームの設置は初めて。
その審理入りを決めた13日の会合では、日本テレビが1日に「バンキシャ!」内で流した訂正放送について、視聴した委員から「日テレは自分たちをだまされた被害者だと思っているのではないか。とても訂正放送とは言えない」との強い疑問の声が相次いだという。
同委員会は日本テレビに質問を出し、10日付でA4判10ページ以上の回答書を受けたが、この回答書についても、ある委員は「放送した責任についての反省はうかがえなかった」と指摘する。回答書には日本テレビ社内で事件取材を担当するデスクや記者らを集めた会合で出た意見も紹介されているが、委員からは「倫理の勉強をきちっとしていないのか」との批判も出たという。
委員会設立のきっかけになった関西テレビによる番組捏造と同様に、委員会は今回のケースを「虚偽の内容により視聴者に著しい誤解を与えた」と判断した。委員長の川端和治弁護士は「取材の基本がきちんと踏まえられているのか疑問」と述べている。【臺宏士】」
日本テレビが反省していないことは、久保伸太郎社長が取締役を退任しない・相談役として社に居座ることを見ても、「日本テレビの天皇」とも言われる氏家齊一郎氏が何の責任も取らないことを見ても明らか。
こんな日本テレビの茶番を「引責辞任」などと報道するのはやめたらどうか。トップは何も責任を取っていない。
毎日jp配信記事(URL http://mainichi.jp/select/wadai/news/20090317k0000m040141000c.html )
「日本テレビの看板番組「真相報道バンキシャ!」の虚偽証言報道問題の責任をとり、久保伸太郎社長が16日辞任した。問題発覚から約2週間、新事実がないまま決まったトップの辞任。背景には、放送局の報道倫理に向けられた厳しい視線があるとみられる。【岩崎信道、佐々本浩材、山田尚弘】
「内部告発まがいの話を聞いた最初の発端からすべての取材活動が問題だった」。16日辞任した日テレの久保伸太郎社長は、誤報の原因について何度も同じ言葉を繰り返した。
岐阜県警の捜査関係者や日テレの説明によると、岐阜県の元建設会社役員は昨年11月上旬、インターネット上の情報提供サイトに「岐阜県内で談合がある」などと書き込んだ。「バンキシャ!」の取材班が全国の裏金問題を取材する中で、日テレの下請け制作会社スタッフが元役員の書き込みを見つけ、取材を始めたという。
制作会社のスタッフ3人は同月中旬、同県中津川市で元役員に取材。元役員は「県土木事務所は今も裏金作りをしている」「県担当者からキャッシュカードを渡され追加工事で水増しした代金を振り込めと言われた」などとうその証言をした。
取材経緯について足立久男報道局長は「最後のつめが甘かった」と説明していたが、振り込んだとされる通帳のチェックや県への具体的な内容確認は不十分だった。久保社長は「(足立局長の説明は)舌足らず。それ(最後のつめ)だけではない」と話し、取材態勢そのものに重大な瑕疵(かし)があったことを認めた。
久保社長が辞任を考えたのは2月27日。報道局幹部が証言者から直接「虚偽の証言」と確認した時だったという。会見では「この程度で番組ができているのかと思われ、報道各社にも迷惑をかけた」と口惜しそうに語った。
一方、各放送局は関西テレビ制作の「発掘!あるある大事典2」の捏造(ねつぞう)問題が発覚した07年1月以降、コンプライアンス強化に力を注いできた。
関テレ経営陣の総退陣、民放連除名(08年10月復帰)など「身内」の処分にとどまらず、行政による放送内容の監視強化を盛り込んだ法改正検討の引き金となった「あるある」問題は、放送業界にとっていわば「トラウマ」。不祥事に対する処分決定や、関係者への謝罪など事後対応が迅速化し、勉強会を開いて社員の放送倫理向上に努める局も増えている。
「あるある」ショックが薄れたころに発覚した今回の虚偽証言問題。放送評論家の松尾羊一さんは「報道番組への信用を傷つけたという点では『あるある』より深刻。取材対象の証言に寄りかかり、情報の裏取りをしなかったのは致命的」と話す。
「バンキシャ!」は元日テレアナウンサーの福澤朗さん、女優の菊川怜さんらがキャスターを務め、事件、事故、不祥事などを検証するVTR映像を中心に構成。04年には北朝鮮へのコメ支援報道を巡り小泉純一郎首相(当時)の再訪朝への同行を一時拒否され話題となった。最近1カ月間の平均視聴率は約17・5%(関東地区)で、ビデオリサーチが公表する調査で毎週部門別上位に登場している。
久保社長は会見で「ここ10年、報道を取り巻く環境が変わってきており、私が辞すことで全社員に重大性を認識してもらいたい」と発言。看板番組が報道の信頼性を傷つけたことを事実上認めた。
◇放送倫理委、特別調査へ
「バンキシャ!」の問題を受け、NHKと民放でつくる第三者機関「放送倫理・番組向上機構」(BPO)の放送倫理検証委員会は特別調査チームを設けて実態解明のための審理に入ることを決めた。同委員会が審理を行うのは不二家について誤って報じたTBS番組(07年)以来、2例目だが、特別調査チームの設置は初めて。
その審理入りを決めた13日の会合では、日本テレビが1日に「バンキシャ!」内で流した訂正放送について、視聴した委員から「日テレは自分たちをだまされた被害者だと思っているのではないか。とても訂正放送とは言えない」との強い疑問の声が相次いだという。
同委員会は日本テレビに質問を出し、10日付でA4判10ページ以上の回答書を受けたが、この回答書についても、ある委員は「放送した責任についての反省はうかがえなかった」と指摘する。回答書には日本テレビ社内で事件取材を担当するデスクや記者らを集めた会合で出た意見も紹介されているが、委員からは「倫理の勉強をきちっとしていないのか」との批判も出たという。
委員会設立のきっかけになった関西テレビによる番組捏造と同様に、委員会は今回のケースを「虚偽の内容により視聴者に著しい誤解を与えた」と判断した。委員長の川端和治弁護士は「取材の基本がきちんと踏まえられているのか疑問」と述べている。【臺宏士】」
日本テレビが反省していないことは、久保伸太郎社長が取締役を退任しない・相談役として社に居座ることを見ても、「日本テレビの天皇」とも言われる氏家齊一郎氏が何の責任も取らないことを見ても明らか。
こんな日本テレビの茶番を「引責辞任」などと報道するのはやめたらどうか。トップは何も責任を取っていない。