がん(骨肉腫)闘病記

抗がん剤治療、放射線治療、人工関節置換手術、MRSA感染、身体障害者となっての生活の記録を残します。

第179回:複雑怪奇な平日の高速道路料金に隠された陰謀

2009年04月13日 | Weblog
URL http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/o/179/



Author 経済アナリスト 森永 卓郎氏 2009年4月7日



「景気対策の柱の一つとして、3月28日から高速道路料金引き下げが始まった。今後約2年間にわたって実施されるものだ。その目玉商品とされるのは、「休日の乗用車は、どこまで行っても1000円」という点だろう。もっとも、ニュースではその点ばかりを報道しているから気がつかないかもしれないが、実は今回の割引はもっと広範囲に及んでいる。

 本当に影響が大きいのは、平日の料金体系だろう。当然ながら、休日よりも平日のほうが日数は多い。では、地方部の平日割引の内容がどうなっているかというと、その内容は実に複雑怪奇なのである。

  0時~4時 5割引(深夜割引)
  4時~6時 3割引(平日夜間割引)
  6時~9時 5割引(通勤割引)
  9時~17時 3割引(平日昼間割引)
  17時~20時 5割引(通勤割引)
  20時~24時 3割引(平日夜間割引)

 おそらく、どこかの交通経済学者が助言をして、「こうすれば渋滞が緩和できる」という机上の計算をしているに違いない。だが、この6区分を一度に覚えられる人は、そうそういないだろうし、まるで景気対策をおもちゃにしているようにも感じられる。そして、わたしには、何よりもこの複雑な料金体系の裏に、国土交通省の思惑が透けて見えてしかたがないのである。



なぜ分かりやすい割引料金体系にしないのか



 複雑怪奇なのは、時間帯ごとに異なる割引率だけではない。この6区分だけでも覚えきれないというのに、さらに適用条件が複雑に絡んでいるのだ。

 例えば、9時~17時の平日昼間割引については、走行距離が100キロ以内でなくては割引が適用されないことになっている。つまり、100キロを超えそうになったら、いったんインターを降りないと割引にならないのだ。これは、従来の休日昼間割引制度と同じである。そして、1日の平日昼間割引適用は2回までとされている。7月からは、インターを降りなくても100キロまでの割引が適用になるそうだが、1日に2回までという条件はそのまま継続される。「何がなんだか分からん!」と叫びたくなるのは、わたしだけではないだろう。

 わたし自身も、従来の休日昼間割引を利用して、少しでも高速道路料金を節約しようと試みたことが何度もある。だが、この100キロ制限の壁は厚い。かえって、時間と費用を無駄にしてしまうことも少なくなかった。

 なにしろ、目的地が100キロ以上先にあるときは、100キロ未満でインターチェンジをいったん降りなくてはならない。当然のことながら時間が余分にかかる。それでも、すぐにUターンできればいいが、センターラインがガードで仕切られていて戻れなくなることもしばしばである。いったん一般道に出て途方にくれながら、また入り直さなくてはならないのだ。

 こんな時代だから、少しでも節約したいという人は多いだろうが、誰もがこんなことをすれば、無用な渋滞も起きるだろうし、そもそも危ない。

 しかもこれで確実に節約できるという保証はない。高速道路に入るたびに、ターミナルチャージという、料金所の維持管理費が加算されるからだ。これは、電車やバスでいう初乗り運賃に当たるもので、これがあるために、途中で降りる回数が増えるほど、割高になってしまうわけである。

 つまり、昼間割引を受けるためには、どこのインターチェンジで途中下車するのが有利なのか、事前に徹底チェックしてから出かけなくては損をしてしまうことになる。

 国民のことを思って、高速道路料金の値下げをしてくれるなら、平日でも乗用車に限らず、一律に終日3割引とか4割引といった分かりやすい割引制度にしてもいいではないか。



民主党政権をにらんでETCの普及率を過半数に



 ではなぜ、わざわざ面倒な割引制度を平日に導入したのだろうか。わたしには、そこにこそ国土交通省の意図が隠されていると感じられるのだ。つまり、この割引制度は、初めからETCを普及させることありきで考案された仕組みではないのか。

 現在のETCの普及率をご存じだろうか。確かに、料金所を通過する車に対してのETCの普及率は7割を超えている。しかし、自動車全体に対する普及率は現在27%に過ぎない。つまり、4台に1台しか付いていない計算になる。理由は簡単なことで、高速道路をよく使う人はETCを付けているが、めったに使わない人はETCを取り付けていないというわけだ。

 一方、民主党が掲げている景気対策の一つに、高速道路の無料化という政策がある。もし、これが実現したらETCはどうなるか。いうまでもなく、ETCのシステムはすべて不要になってしまう。仮に、4台に1台しか付いていない状態で民主党が政権をとったら、国民の大多数は「たとえETCが無駄になっても、無料化したほうがいいじゃないか」ということになるだろう。これでは、ETC推進派は困ってしまうわけだ。

 わたしは、ETCに関する利権がどこにあるのか知らないが、ETCを推進してきた人にとって、民主党の政策は許しがたいものであるに違いない。その気持ちを代弁すると、「ふざけるんじゃない。ここまで苦労してきてETCのシステムをつくってきたのに、ここで廃止をされてはたまらない」という感じだろう。

 だが、現実問題として、民主党が次回の総選挙で政権をとる可能性はまだかなり高い。それに対抗するためには、今のうちにETCの普及率を一気に上げるしかないのである。

 そこで、今のうちに割引制度でドライバーをたきつけて、ETCの普及率を過半数まで持って行く。そうすれば、民主党中心の政権になったとしても安心だ。せっかく導入したETCを全部捨てろという議論にはなりにくい。

 もし、民主党がそういうことを言い出したら、「せっかく利用者が金を出して買ったものを、すべて無駄にするのは暴論だ」「税金の無駄遣いだ」とかなんとかいって反論すればいいわけだ。利用者側からしても、「せっかくETCをつけたのだから、廃止するのはもったいない」という意見が多数を占めるだろう。そこが狙いなのではないか。



高速道路は無料にするのが景気対策には一番



 もし、料金体系をシンプルにして、一律3割引とか4割引にしたら、ETCがなくても計算や処理はそう難しくない。そうなったら、「ETCがない車にも割引をすべきだ」という議論がいずれ巻き起こるに違いない。ETC推進派にとって、それはとてもまずい事態だ。

 しかし、ここまでばかげた複雑怪奇な料金体系になると、これは人知を超えている。コンピューターがなければ、とてもではないが処理できない。

 ついでにいえば、時間によって割引率を変えるとなると、どこを通過した時点で高速道路に出入りしたかを、秒単位で厳密に計測しなければならない。実は、その基準が、道路によってそれぞれ違うという。例えば、首都高は料金所通過、阪神高速は入口通過というように、さらにわけが分からない。

 これを人間の力でやることは不可能である。こうしてETCがないとどうしようもない状況に追い込んでおいて、一気に普及を図るということが、今行われていることなのではないか。休日1000円という超目玉商品をつくってメディアに取り上げてもらったのも、ETC車載器の取り付けに5250円の補助金を出そうというのも、すべてがETCの普及率を一気に上げてしまおうという国土交通省の戦略だとすれば分かりやすい。

 わたし自身は、高速道路を走ることも多いのでETCを取り付けているが、本当にETCがいいのかどうか、よく分からない。分かりやすい料金体系ならば、ETCがなくてもいいと思う。

 従来からわたしが主張しているのは、高速道路は道路特定財源を使って無料化したほうがよいという意見だ。少なくとも、それが景気対策にはもっとも効果がある。

 わたしは、道路特定財源を一般財源にすることには反対である。高速道路料金は、ドライバーだけに選択課税しているのだから、ドライバーに還元しないと筋が通らない。もちろん、道路特定財源が無駄な公共工事の温床になっているのは事実だが、使い道についてはまた別のレベルで議論すべき問題である。」



なるほどね。

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