新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

アメリカにお出でになる時は是非クレデイットカードをご持参願います

2018-12-28 13:35:08 | コラム
キャッシュレス時代の到来に備えて昔話を:

*無礼なホテルを紹介してくれたものだ:

1980年代だったと記憶するが、地方の工場の管理職の方々で初めてアメリカに出張の機会が巡ってきて、そのスケジュールの中に当時W社が持っていたカリフォルニア州の東の端にある工場の見学があった時のことだった。勿論、アメリカ出張中だった私がご案内して差し上げるのだが別行動だったので、工場の近くと言えば近くの一流ホテルを当社のコーポレート・レートで予約しておいた。ご一行様には出発前に懇切丁寧に「必ずクレデイットカードを取ってからお出でを」と説明しておいた。

それでも、ご一行様は「円」と「米ドル」の現金さえ持っていれば世界中何処に行っても苦労しないと思い込んでおられたようだった。ところが、私が遅れて到着してご挨拶に上がってみると、ご一行は憤懣やるかたない表情で「何という無礼なホテルを紹介してくれたのか」と怒り狂っておられたのだ。まさか、そのホテルがゴミの山が余りに巨大になったので、その上に土と芝生をかぶせて丘のようにして、その元はと言えばゴミの上に建てたホテルだからお怒りかとすら疑ったほど、納得できなかった。

そこで事情を確かめると、全員がカードを提示せずにただ単にW社から予約があったはずとまでは言えたのだそうだった、クレデイットカードは提示もせずに。そこでホテル側が持っていないと確認するや否や、滞在日数分に上乗せした前金(depositでも良いか)を要求したのだそうだ。そこで「何と無礼な」となったようだった。私は「矢張りそうだったか」と拍子抜けしたし「だからカードを取って来て下さいとあれほど申し上げたではありませんか」と再度カードの必要性をご説明したのだった。

「即ち、この国ではクレデイットカードも持てないような者は金融機関等から信用されていない危ない人と看做されるので、食い逃げならぬ宿泊逃げ回避の為に前金を取るのだ」とご説明して漸くご納得頂き、怒りも収まったのだった。更に我がW社を非難したことをお詫び頂いて決着した。念の為に、彼らに何故カードを取ってこなかったと聞けば「男子一生、借金をするなど潔くない」からだった。嗚呼。念の為申し上げておくと、ご一行は一部上場企業のある地方の工場の課長以上だったのだ。

*これほど一度に大勢が現金払いをされたことがないので釣り銭が:
この一件も1980年代末期だったと思うが、ご案内していた30人ほどの地方の工場の経営者と幹部の団体をシカゴでのお買い物のご案内をしたことがあった。ほとんど全員が生涯初か最初で最後の海外出張だったようで、社内の上司や同僚や部下に加えて、親類縁者から貰ってこられたお選別のお返しでお土産を買わねばならないという退っ引きならない事情があった。そこで目抜き通りであるノースミシガン・アヴェニュー(別名・マグニフィセント・マイル)のBrooks Brothersにご案内したのだった。

そして全員が張り切って買いまくられた。そして、イザ支払いとなって全員が「現金かカードか」(=“Cash or charge?)と訊かれて、勿論「キャッシュ」(T/Cも含めてだが)と答えた。そこから店内の大勢の販売員の全ての動きが止まってしまった。私が「何故か?何か問題でも」と主任風の者に尋ねて見ると、答えが凄かった。即ち、「これだけ多くの方が現金払いは当店でな初めてで、それに見合う現金を置いていないので釣り銭が不足し、経理係が今銀行に小銭を取りに走ったところ」という具合。

この辺りに既にあの頃でも我が国とアメリカのキャッシュレス社会との違いが現れていたようだった。そこで「仕事が遅い」と怒っておられたご一行に説明して宥めた次第。ところが話はこれで終わらず、今度は進物用の箱入れの包装がが一向に進まなかったのだ。その理由はと問えば「これほど多くの箱入り包装は経験がないので在庫が切れた為に、地下の倉庫から全ての箱を運んでいるところで暫くお待ちを」となった。今になって思い出しても、滅多に出来る経験ではなかっただろう。アメリカとはこういう国なのだ。

その後で、Brooks Brothersの大きくて一杯の商品が詰まったショッピングバッグを両手に持つ30数人の先頭に立って次なる目的地まで先導した私は、この団体が余りにも目立ったので恥ずかしいとも感じていたのだが、その心中をお察し願いたい。その行進は女性用のお土産を買いに有名デパートに向かっていたのだが、そこで何が起きたかは、後日機会があれば別途語って見ようかと。

あれから30年を経ているが、軽減税率の導入とかでキャッシュレス社会の時代が来るかも知れないらしいが、地方の方々は今でも「カード払いでは借金だ。そのような潔くないことはしたくない」と考えておられるだろうか。地方の小規模な小売店がカード払いを受け付けられるような時代が本当に来るのだろうか。1970年代に、私はアメリカの大手スーパーのレジで、悠々と(堂々と?)$3の支払いで小切手を切っておられた老女の後ろに並んでしまい、イライラさせられてことがあった。