アジアの手仕事~生活と祈り~

アジア手工藝品店を営む店主が諸国で出逢った、愛すべき”ヒト・モノ・コト”を写真を中心に綴らせていただきます

19c江戸後期 白綿×茶綿・縞木綿裂

2016-10-13 07:34:00 | 染織




製作地 日本 ※地域不詳 
製作年代(推定) 19世紀 江戸時代後期
素材/技法 国産木綿(白綿及び茶綿)、天然染料 / 平地、縞格子
サイズ 幅(緯):36cm、長さ(経):61cm

本布は経に白・茶・水藍・濃藍、緯に白・濃藍の木綿糸が配され、平織により縞格子文様が織り上げられたもの、短繊維の国産木綿を手紡ぎし・手織りした江戸期木綿織物に固有の、鬼手に類する粗々しい紡ぎ感・糸味が見た目及び触感からも感じられるところとなります。

特筆すべきは経縞を構成する茶色の糸は染めではなく”茶綿(ちゃわた)”を素材とする生の色である点で、本布は”白綿”と”茶綿”の交織布と呼べるもの、染めが行なわれているのは天然藍で淡く染めた”水藍”と濃く染めた”濃藍(勝色)”のみであり、最小限の染めで、ここまで多彩かつ華やぎある色表現に成功している点で特異かつ秀逸な作例と言うことができます。

江戸中後期は太平の世を背景に国産木綿の栽培が幾つかの土地に根付き、生産の拡大がはかられていた時代、インドの唐桟や中国の唐木綿、所謂”嶋物”を手本に日本の縞・格子の木綿織物が急速に発展をとげた時期とも指摘されるところ、本織物は品種改良の進む前の粗い木綿の特性を色柄及び布の質感に巧く生かした作例と位置づけられるものです。国産木綿を素材に紡ぎ・染め・織りに職人手仕事の技が駆使された、江戸期縞木綿古裂の薫り高き逸品です。






















●本記事内容に関する参考(推奨)文献
 

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