製作地 日本・東北地方
製作年代(推定) 19世紀後期 明治時代
素材/技法 木綿、天然染料、天然顔料 / 筒描、摺り込み
サイズ 横幅(上辺)178cm・(下辺)89cm、縦52cm
東北地方は南部(青森・岩手)の“南部駒”、最上(山形)の”小国駒”を筆頭に名馬の産地を数多擁するとともに、古来より馬に纏わる習俗・伝承が豊富で、農耕馬・荷役馬への愛情深く、オシラサマなど馬への信仰が篤かった土地柄となります。
この馬掛け布は婚礼時や祝祭時に馬を所有する商家や富裕農家が紺屋への特別な発注で仕立てる伝統を有したもの、本品は手紡ぎ・手織りの木綿を台布に手描き・手染めの“筒描”の技法により意匠付けがなされた作品で、渦巻き状の”唐草”と小さな三角形が連なる”鱗”の吉祥・守護模様が、”源氏車”の家紋と”檪木”の家名及び”踏馬御免”の常套句とともに多彩かつ力強い意匠で染め表されております。
取り分け流麗で生き生きとした生命感を薫らせる”唐草模様”と藍濃淡を加えると5色で染め表された”鱗模様”のコンビネーションが秀逸で、描き線と染め色の随所から江戸職人直系の卓越した仕事ぶりを感じることができます。
明治期の未だ馬が農耕の場面で日常的に活躍していた時代の馬掛け布であり、馬に対する並々ならぬ想いが伝わる、古き良き日本の地方染織の逸品です。
●本記事内容に関する参考(推奨)文献