アジアの手仕事~生活と祈り~

アジア手工藝品店を営む店主が諸国で出逢った、愛すべき”ヒト・モノ・コト”を写真を中心に綴らせていただきます

藍の濃淡と経緯に伸びるかすり足の美

2015-03-19 05:30:00 | 染織


●久留米絣”格子・鶴梅(鶴丸)文様”蒲団表裂



製作地 日本・福岡県 久留米(三潴)  
製作年代(推定) 20世紀初め 明治時代後期~大正時代
素材/技法 木綿(手紡ぎ)、天然藍 / 経緯併用絣
  
モザイク様の大小の”格子文様”と”鶴梅(鶴丸)文様”が交互に織り表わされた本布は、これを横に数枚接ぎ合わせて”蒲団表”とするための一巾布の部分裂で、経緯ともに手紡ぎの木綿糸が配され(時代が下がると経糸、さらに経緯とも機械紡績糸となる)、染めには天然藍が用いられ、巧みな藍濃淡+白により力強い表情の三色絣とされたもの、20世紀初めに三潴(みずま)で婚礼等のハレの日のための高級蒲団表用に手掛けられた作例と推察できるものとなります。

経緯に糸味の良い手紡ぎ木綿が用いられた故に布感・染め感は力強く、さらに経緯併用絣の上下左右に伸びるかすり足にも秀逸なリズムと切れ味があり、糸と織りの細部に見飽きることの無い豊かな味わいが感じられます。

天然藍ならではの瑞々しくかつ深みのある”濃藍”と”空色(浅葱)”、しっかりと晒された上質な手紡ぎの白木綿の”純白”を交えた晴れやかな絣の色表情に、目にするモノの気持ちも晴れやかになるような一枚です。