先日、鎌倉芸術館で、鎌倉同人会主催の”秋の映画会”があった。山田洋次監督の”渥美清さんの思い出を語る”というトークを柱に、同監督の二本の作品を上映するというものである。その一つが、男はつらいよ/あじさいの恋(1982)。鎌倉芸術館は大船撮影所の跡地に建っており、そこでつくられた映画を34年後に同じ所で鑑賞できるなんていう幸運はめったにあるものではない。おまけに、映画監督まで同席しているノダ。
寅さんシリーズの第29作で、タイトルに”あじさいの恋”とあるように、鎌倉の紫陽花の名所、成就院も舞台になっているのもうれしい。ぼくは、京都の紅葉狩りから帰ってきたばかりだったが、寅さんも京都を旅していた。そこで、ひょんなところから、ある老人と仲良しになる。先代の片岡仁左衛門がその役。11月歌舞伎で当代仁左衛門をみてきたばかりで、この偶然にも、ちょっとばかりおどろいた。その老人は、実は、人間国宝の陶芸家なのだが、寅さんはただの爺さんとしか思っていない。老人の家を訪ねると、そこには、かがり(いしだあゆみ)という名の美しい女性が下働きをしていた。
そこからいつものパターンに入る(笑)。いや、実は少し、違うパターンになっている。夫に先立たれ、娘を故郷、丹後に残し、ここで働く、かがりだが、再婚を誓い合っていた陶芸家がいた。しかし、それが破談となってしまい、丹後へ帰ってしまう。もちろん、寅さんは丹後に追いかけて行くのだが、実は、かおりは本気で寅さんを好きになっていたのだ。寅さんがドギマギするのが面白い。寅さんの寝床にかおりが忍びよるシーンまである(笑)。マジメな寅さんは、何もしないで柴又へ帰ってくる。そこへ、かおりが押しかけてきて、鎌倉でデートしようというメモをそっと渡す。しかし、”ふたりのデート”ではなく、寅さんは、なんと満男(子供時代の吉岡秀隆)を連れてきたのである。そして、いつもの寅さんらしくない、ちぐはぐな対応で、笑顔もない。そして、結局、うまくいかずに、かおりは故郷に帰ってしまうのである。
いつものパターンでは寅さんは、マドンナに最後はふられるのだが、ここでは、逆にマドンナが積極的になっていて、それをふった形になるのである。恋が成就しなかったことは、いつもの通りで、また旅に出るのであった。たしかに、こんな寅さんをみたのは、これが最初で最後だったかも。
陶芸家・片岡仁左衛門(先代)、弟子の柄本明がいい味を出していたし、全盛期の渥美清、笠智衆の演技も素晴らしかった。やっぱり、寅さんシリーズは面白い。脚本も担当している、山田洋次監督は、笑いのツボを心得ている。でも、普段の寅さん(渥美清)は、ちょっと不機嫌で、笑わない人だったらしいから面白い。
もう一本の作品は、これまた、ぼくの好きな吉永小百合さん主演の”母と暮らせば”である。これは、封切りのときに見ていて、感想文も書いているので、ここでは省略する。山田監督のトークも、これで三回目なので、これも省かせてもらう。とても、楽しい”秋の映画会”だった。
。。。。。
寅さんが、いしだあゆみとデートした紫陽花の成就院。現在、この光景はみられない。2015~17年、改修工事中なのだ。この写真は2014年6月に撮影。
寅さんは、陶芸家・仁左衛門に、この石塀小路の料理屋さんでごちそうになるのだが、ぼくは先月、夕方、通り過ぎただけだった(汗)。
このたびの恋は
寅次郎にとって
ちょっぴり、きつう
ございました。
はいー
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