令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

家待・越中編(一)(33)弟(おと)の命(みこと)は

2010年12月21日 | 家待・越中編(一)友ありて
【掲載日:平成23年4月8日】

父母ちちははが しのまにまに はしむかふ おとみことは・・・


「なになに これは おとうととの別れ?」
〔確か 田辺福麻呂さきまろ殿は 一人子のはず
 他人ひとの身に起こりしを
 自分のこととして  詠んだか
 ・・・おおぅ 書持ふみもちじゃ
 これは 書持への き歌
 違いない 
 父を思い出させ  今また書持まで
 田辺福麻呂さきまろ殿 
 なんという  気遣い〕
 
父母ちちははが しのまにまに はしむかふ おとみこと
《父母が 生んで育てた 弟は 一緒めし食た 弟や》
つゆの やすきいのち 神のむた 争ひかねて 
葦原あしはらの 瑞穂みづほの国に 家無みや またかへぬ 
とほつ国 黄泉よみさかひに つたの おのが向き向き 天雲あまくもの 別れし行けば
 
はかない命 そのままに 神さんおめし 逆らえず
 このもとに 居場所ない 家も無いて って仕舞
 あの世この世の 境目で あっちとこっち ちゃう向きで 別れて仕舞しもて 消えて仕舞た》
闇夜やみよなす 思ひまとはひ 猪鹿ししの 心を痛み 
葦垣あしかきの 思ひ乱れて 春鳥の のみ泣きつつ 
あぢさはふ 夜昼よるひる知らず かぎろひの 心燃えつつ 悲しび別る

《目先っ暗 うろが来て 悲しみ暮れて 胸痛い
 何も手つかず 取り乱し 声張り上げて 泣きどお
 夜昼けじめ 分らんと 切ない気持 胸あふれ 涙に暮れて 野辺のべ送り》
                         ―田辺福麻呂たなべのさきまろ歌集―〔巻九・一八〇四〕

別れても またも逢ふべく 思ほえば 心乱れて れ恋ひめやも
《別れたが また会えるなら こんなにも つろう悲しゅう 思わへんのに》
                         ―田辺福麻呂たなべのさきまろ歌集―〔巻九・一八〇五〕

あしひきの 荒山中あらやまなかに 送り置きて かへらふ見れば こころ苦しも
野辺のべ送り さみしい山に ほうむって 帰える見ると 胸えぐられる》
                         ―田辺福麻呂たなべのさきまろ歌集―〔巻九・一八〇六〕

読み終えた  家待
頬が  濡れている
書持がため 
田辺福麻呂さきまろの 友思心ともおもいがため


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