令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

家待・越中編(一)(04)楫(かじ)取る間無く

2011年04月08日 | 家待・越中編(一)友ありて
【掲載日:平成22年12月21日】

白波の 寄する磯廻いそまを ぐ舟の
             かじ取る間無く 思ほえし君



家持は  待っていた
どんよりと 雲垂れ下がる こしの空
大嬢おおいらつめを 都に残し 心晴れやらぬ日々
そこへ もたらされた 訃報しらせ
共に嘆いてくれる  友とてない
心知れた  部下の池主
その  池主 今は 都の空の下
戸籍調査の報告を手に  上京
八月の出発から かれこれ二月ふたつき
書持ふみもち訃報ふほうからは 一月ひとつきが経っていた
往還一月ひとつきばかりの道程みちのりにしては 遅い
〔もう  帰ってもよさそうなもの
 もしや  
 書持ふみもちの 様子など 聞き及んでるやも知れぬ〕

首を長くして待つ 家持のもと
池主帰還 
月は  十一月に変わっていた

早速の 迎えうたげ
折からの 迎え雪 降り積もること一尺有余ゆうよ
遠望する 波間に浮かぶ 海人あまの釣り船

待ちび心を 一心に 家持はうた

庭に降る 雪は千重ちへ敷く しかのみに 思ひて君を が待たなくに
《庭に降る 雪が山ほど 積もったが それどこちゃうで 池主あんた待ったん》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〔巻十七・三九六〇〕
白波の 寄する磯廻いそまを ぐ舟の かじ取る間無く 思ほえし君
《波の立つ 磯ぐ船の 急ぎ梶 池主あんた思うん ひっきり無しや》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〔巻十七・三九六一〕

うたげのあと 
池主共々 書持ふみもちが心根を辿たどる二人
思い出される  
にし天平十年〔738〕橘奈良麻呂たちばなのならまろ宴席えんせきでの歌

あしひきの 山の黄葉もみちば 今夜こよひもか 浮かびゆくらむ 山川やまがはの瀬に
《山もみじ  今晩あたり 散ってもて 浮いて行くんか 山の川瀬を》
                         ―大伴書持おおとものふみもち―〔巻八・一五八七〕
十月かむなづき 時雨しぐれに逢へる 黄葉もみちばの 吹かば散りなむ 風のまにまに
十月じゅうがつの 時雨しぐれうた もみじ葉は 散って仕舞うやろ 風に吹かれて》
                         ―大伴池主おおとものいけぬし―〔巻八・一五九〇〕
黄葉もみちばの 過ぎまく惜しみ 思ふどち 遊ぶ今夜こよひは 明けずもあらぬか
《もみじ葉の 散るのしんで 友同士 遊ぶこのよる 明けて欲しない》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〔巻八・一五九一〕

〔歌の上手であった 
 今 わし有るは 書持ふみもち有ったればこそ〕


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