令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

家待・越中編(一)(08)うら恋(ごい)すなり

2011年03月18日 | 家待・越中編(一)友ありて
【掲載日:平成23年1月4日】

・・・・・くれなゐの 赤裳あかも裾引き
      少女をとめらは 思ひ乱れて
            君待つと うらごいすなり



〔はてさて  困ったお人じゃ
 この上は うらやましく思わす他ないか〕

晩春の日差し うららかにして めるに値し
弥生やよい三日の 風光ふうこう景色けしき 遊覧に足る
つつみの柳は 入り江に並びて 美服びふくいろど
桃源とうげんの流れ 海へと通じて せんせん浮かぶ
雲型くもがたさかつぼに 香り浮かべて 清酒さけを満たし
羽根はねさかずき 好飲をうながして 曲水をめぐ
酒に酔いて 心陶然とうぜん あれこれを忘れ
酩酊めいていすれど 飽き足らず なおもとどまる

〔いやいや  これでは足らぬ
 遠回しでは らちあかぬ 
 連れ出すべし  連れ出すべし〕

大君おほきみの みことかしこみ あしひきの 山野さはらず 天離あまざかる ひなをさむる 大夫ますらをや 何かもの 
天皇すめらみことの 任命受けて 山や野原を 越え来てここの 国をおさめる 大夫ますらお守殿あんた 何を思うて わずらるか》
青丹あおによし 奈良路ならぢかよふ 玉梓たまずさの 使つかひ絶えめや こもり恋ひ いきづき渡り 下思したもひに 嘆かふわが背 
《都の 使いの者が 絶えることなど 有る訳ないぞ 家にこもって 思いにふけり 溜息ためいきばかり いてる守殿あんた
いにしへゆ 言ひらし 世間よのなかは かず無きものそ なぐさむる こともあらむと 里人さとびとの あれに告ぐらく 
《昔の人は 世の中なんて れたもんやと えことてる 里の人かて こうおもたなら 気晴らしなると このわし言うた》
山傍やまびには 桜花さくらばな散り かほとりの 無くしば鳴く 春の野に すみれを摘むと 白妙しろたへの 袖折りかへし くれなゐの 赤裳あかも裾引き 少女をとめらは 思ひ乱れて 君待つと うらごいすなり
《「山に桜花はな散り 郭公かっこう鳴くよ 春の野原で すみれを摘もと 袖をからげて すそを引いて 遊ぶ乙女おとめら 守殿あんたを待って 心おどらせ わくわくしてる」》 
心ぐし  いざ見に行かな 事はたなゆひ
《ぐずぐずせんと  さあ見に行こや 事は決まった 約束したで》
                         ―大伴池主おおとものいけぬし―〔巻十七・三九七三〕
山吹は 日に日に咲きぬ うるはしと 吾がふ君は しくしく思ほゆ
《山吹の 花は日に日に 咲きそろう 見ておもうんは 守殿あんたばっかり》
                         ―大伴池主おおとものいけぬし―〔巻十七・三九七四〕
わが背子せこに 恋ひすべながり 葦垣あしかきの ほかに嘆かふ あれし悲しも
垣外かきそとで 守殿あんたおもうて 立つだけでで 嘆くしかない わし可哀想かわいそや》
                         ―大伴池主おおとものいけぬし―〔巻十七・三九七五〕


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