令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

家待・越中編(一)(01)穂向(ほむき)見がてり

2011年04月19日 | 家待・越中編(一)友ありて
【掲載日:平成22年12月10日】

秋の田の 穂向ほむき見がてり
        わが背子せこが ふさ手折たをりける 女郎花をみなへしかも



天平十八年〔746〕三月 
家持やかもちは 宮内少輔くないのしょうに昇進した
待望の任官である 
朝廷内にあって  名門誉れ高い大伴氏
文雅の士としての 自負じふ持つ家待
適所の地位得  内心の満足を抱いていた

任務に励む  家待
六月二十一日 突如の任がりる
北陸道 越中 国守こくしゅ
天平十三年〔741〕能登を併合し 上国じょうこくの越中
国に  不足はない
一度は  地方官としての務め果たすが 昇進筋道
とは言え 宮内少輔くないのしょうにも未練が残る
まして  任地は 天離る鄙
しかし 官人にとり 任にいなやはない

越中では 同族 大伴池主おおとものいけぬしが 待っていた
池主は 先年 三等官じょうとして 赴任

秋も深まる八月 
かみ家持のやかた 参集するは 主だった役目の面々
歓迎のうたげである
えんせきは 季節ときの花 女郎花おみなえしあふれていた

うたげの口火は 新任国守 家持

秋の田の 穂向ほむき見がてり わが背子せこが ふさ手折たをりける 女郎花をみなへしかも
女郎花おみなえし 秋のみのりの 見聞けんぶんで 池主あんたどっさり これったんや》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〔巻十七・三九四三〕

受けて 応じる 大伴池主いけぬし

女郎花をみなへし 咲きたる野辺のへを 行きめぐり 君を思ひ出 たもとほり来ぬ
女郎花おみなえし 咲く野歩いて 花好きの 守殿あんたおもうて み来たで》
                         ―大伴池主おおとものいけぬし―〔巻十七・三九四四〕

四等官さかん 秦八千島はだのやちしまが 『女郎花』を引き継ぐ

ひぐらしの 鳴きぬる時は 女郎花をみなへし 咲きたる野辺のへを きつつ見べし
ひぐらしが 切無せつのう鳴くよ 女郎花おみなえし 咲いてる野原 見ながら行こや》
                         ―秦八千島はだのやちしま―〔巻十七・三九五一〕

更に げんしょうが 続ける

妹が家に 伊久里いくりの森の 藤の花 今む春も つね如此かくし見む
妹家いえに行く 伊久里いくりの森の 藤花を 又来る春も やないか》
                         ―玄勝げんしょう―〔巻十七・三九五二〕

「これは  なんたること 秋に藤は合わぬが」
とがめる 池主に 玄勝
「この一首 大原高安おおはらのたかやす高安王たかやすおう〕の作りし歌
 合わぬとあれば 籐花を女郎花に 春を秋に変えて 吾輩それがしの歌と致そう」

玄勝のはかりに 座は一挙くつろ


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