令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

家待・越中編(一)(07)君は羨(とも)しも

2011年03月25日 | 家待・越中編(一)友ありて
【掲載日:平成22年12月31日】

山吹やまぶきの 繁み飛びくく うぐひす
             声を聞くらむ 君はともしも



あくる日 早速さっそくの返しが 池主に
行間 弱気の虫がのぞ

大君おほきみの けのまにまに 級離しなざかる 越をおさめに 出でてし 大夫ますらわれすら 
世間よのなかの 常し無ければ うちなびき 床に臥伏こいふし いたけくの 日にに増せば
 
天皇おおきみの 任命受けて こしの国 おさめに来たが このわしも
 無情世の中 逆らえず やまいかかって とこ伏して 日に日に苦痛 えてきた》
悲しけく 此処ここに思ひ いらなけく 其処そこに思ひ 
嘆くそら 安けく無くに 思ふそら 苦しきものを 
 
《悲しいことや つらいこと あれやこれやと 思い出す
 嘆いてみても 安まらん 思いつめても 苦しだけ》 
あしひきの 山きへなりて 玉桙たまほこの 道の遠けば 
間使まづかひも よしも無み 思ほしき ことも通はず 
たまきはる みこと惜しけど むすべの たどきを知らに 
こもり居て 思ひ嘆かひ なぐさむる 心は無しに 
 
《山をへだてて 道とおて 使いすべ 無いよって おもてることも 伝わらん
 生命いのちしけど ども出来ん 家にこもって 嘆いても 心安らぐ ことはない》
春花の 咲けるさかりに 思ふどち 插頭かざさず 
春の野の 茂み飛びくく うぐひすの 声だに聞かず
 
《春の盛りの 野の花も 友と一緒に かみせん
 春の野原で しきり飛ぶ 鶯声うぐいすこえも 聞かれへん》
少女をとめらが 春菜ますと くれなゐの 赤裳あかもの裾の 春雨に にほひひづちて 
通ふらむ 時の盛りを いたづらに すぐりつれ
 
《春菜摘みする 乙女おとめらの 赤いすそが 春雨はるさめに 綺麗きれえに濡れる この季節
 意味過ごすか むなしいに》
しのはせる 君が心を うるはしみ この夜すがらに 
も寝ずに 今日けふもしめらに 恋ひつつそ居る 

《こんな気持ちを 知りぬいて 気づかいくれる 池主あんたはん
 ありがと思い 昼もも 感謝してます ほんまおおきに》 
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〔巻十七・三九六九〕
あしひきの 山桜花さくらばな ひと目だに 君とし見てば あれ恋ひめやも
《山桜 池主あんた一緒に 見られたら 一目だけでも 満足やのに》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〔巻十七・三九七〇〕
山吹やまぶきの 繁み飛びくく うぐひすの 声を聞くらむ 君はともしも
《山吹の 繁み飛びう 鶯を 聞ける池主あんたは うらやましいな》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〔巻十七・三九七一〕
出で立たむ 力を無みと こもり居て 君に恋ふるに 心神こころともなし
出歩であるける 力無いんで 家こもり 池主あんたしのぶん り切れんがな》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〔巻十七・三九七二〕

身体のえは 心の
池主  苦肉の励まし 届かない


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