令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

家待・越中編(一)(05)死ぬべき思へば

2011年04月05日 | 家待・越中編(一)友ありて
【掲載日:平成22年12月24日】

世間よのなかは かず無きものか
        春花の 散りのまがひに 死ぬべき思へば



天平十九年〔747〕二月 
やっと越した  任地初めての冬
慣れぬ任務の疲れか 
郡司ぐんじとの 付き合い気疲れか
春の訪れを  迎えたと云うに
家持は とこしていた

大君おほきみの まけのまにまに 大夫ますらをの 心振り起し あしひきの 山坂越えて 天離あまざかる ひなに下くだ 
天皇おおきみの 任命受けて 奮い立ち 任務一途いちずと 山越えて 遠いこしへと やって来た》
息だにも いまだ休めず 年月としつきも いくらもあらぬに 
うつせみの 世の人なれば うちなびき とこ臥伏こいふし 痛けくし 日にまさ
 
《ほっとする間も 無いままに 月日あんまり たんのに
 わしも人の子 仕様しょうないが やまいかかって とこ伏して 苦痛日に日に ひどなった》
たらちねの 母のみことの 大船おほふねの ゆくらゆくらに 下恋したごひに 何時いつかも来むと 待たすらむ こころさぶしく 
気懸がかごころ 胸秘めて 何時いつ帰るかと 待ってはる 母の気持ちは どんなやろ》
しきよし 妻のみことも 明ければ かどに寄り立ち 衣手ころもでを 折りかへしつつ 
夕されば とこ打ち払ひ ぬばたまの 黒髪敷きて 何時いつしかと 嘆かすらむそ 
妹もも 若き児どもは 彼此をちこちに さわき泣くらむ
 
いとしい妻も 朝来たら 門のそと立ち 袖折って
 夜になったら とこ清め 黒い髪の毛 なびかせて 帰るん何時いつと 待ってるで
 幼い子らの あにいもと あっちこっちで 泣き騒ぐ》
玉桙たまほこの 道をたどほみ 間使まづかひも るよしも無し 思ほしき 言伝ことづらず 恋ふるにし こころは燃えぬ 
《道は遥かに いよって 使いを送る すべうて 思い伝える こと出きん 恋し思うて 焦るだけ》 
たまきはる いのちしけど むすべの たどきを知らに かくしてや あらすらに 嘆きせらむ
生命いのち惜しけど どもならん 困って仕舞しもて 男やに 嘆くだけしか でけんのや》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〔巻十七・三九六二〕

世間よのなかは かず無きものか 春花の 散りのまがひに 死ぬべき思へば
《世の中は こんなはかない もんかいな 春花はな散る時に 死ぬのんやろか》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〔巻十七・三九六三〕
山川の 退方そきへへを遠み しきよし 妹を相見ず かくや嘆かむ
《山や川 隔てとおうて 仕様しょう無しに 大嬢おまえ逢えんで 嘆いてばかり》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〔巻十七・三九六四〕


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