犬養万葉今昔―犬養孝先生著「万葉の旅」を訪ねて

犬養孝先生名著「万葉の旅」記載の万葉故地309箇所を訪ね、先生が撮られれたのと同じ場所に立った写真撮影を目指す紀行。

■日めくり万葉集Vol・2(173)衣手に

2013年01月30日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【十一月二十四日】放映分

衣手ころもでに 水渋みしぶ付くまで 植ゑし田を 引板ひきた我がへ まもれる苦し
ふくの袖 水垢みずあか付けて 植えた田の 見張り続けん つらいやろうに》
                         ―作者未詳―(巻八・一六三四)

【万葉歌みじかものがたり】いと 若みかも》

(まだ 年端としはも行かぬに いかにも策略めく)
亡き妻おみなめの忘れ形見の女児むすめ 当年九才

家持 は ある尼を思い出していた
養育むすめに 懸想けそうの男 尼へ斟酌しんしゃくよそおいでの申出

手もすまに 植ゑし萩にや かへりては 見れども飽かず こころつくさむ
《手ぇ掛けて 育てた萩花はぎは でるより 散りはせんかと 気ィむだけか》
                         ―作者未詳―(巻八・一六三三)
衣手ころもでに 水渋みしぶ付くまで 植ゑし田を 引板ひきた我がへ まもれる苦し
ふくの袖 水垢みずあか付けて 植えた田の 見張り続けん つらいやろうに》
                         ―作者未詳―(巻八・一六三四)

困惑 尼を察し 助け船の家持

(尼)佐保川の 水をき上げて 植ゑし田を
      (家持)刈る早飯わさいひは 独りなるべし
《佐保川の 水き止めて 植えた田の
      一番めしを 食うのんひとり(わしや)》
                         ―あま家持やかもち―(巻八・一六三五)

(今は 手塩てしお娘どころでない 大伴家の存亡
 時勢の移りを思えば 「とう」と結ぶも一策
 いやいや 安積皇子あさかのみこのこともある
 さりとて 「きつ諸兄もろえ様も 押され気味・・・)
躊躇ちゅうちょ困惑家持 右へ左へ揺れ動く

春の雨は いやしき降るに 梅の花 いまだ咲かなく いと若みかも
春雨はるさめが しきり降るけど 梅花うめはなは まだ咲きまへん 木ぃ若いんで》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻四・七八六)
いめのごと 思ほゆるかも しきやし 君が使の 数多まねく通へば
《夢みたい 思うてまっせ 勿体もったない あんたの使い 始終しょっちゅう来るん》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻四・七八七)
うら若み 花咲きがたき 梅をゑて 人のことしげみ 思ひぞがする
《木ぃわこて まだ花咲かん 梅やのに まだかまだかは 気が気やないで》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻四・七八八)
こころぐく 思ほゆるかも 春がすみ たなびく時に ことの通へば
《春霞 棚引たなび季節じきの 申し出に 返事もせんと すまんことです》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻四・七八九)
春風の おとにしなば ありさりて 今ならずとも 君がまにまに
《春風が 吹くなったら 時期を見て 気持ちに そのうちします》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻四・七九〇)

久須 麻呂から 
確固の思いのたけと 拙速せっそくびの歌が届く

奥山おくやまの いはかげふる すがの根の ねもころ我れも 相思あひおもはずあれや
《奥山の 岩陰いわかげすがの 根ぇみたい わしの思いに るぎはいで》
                         ―藤原久須麻呂ふじわらのくすまろ―(巻四・七九一)
春雨はるさめを 待つとにしあらし 我がやどの 若木わかぎの梅も いまだふふめり
《若木梅 春雨待って 咲くようや うちの梅かて まだ蕾やわ》
                         ―藤原久須麻呂ふじわらのくすまろ―(巻四・七九二)

返し歌 を手に 家持 その場にへたり込む




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■日めくり万葉集Vol・2(172)今日よりは

2013年01月26日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
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【十一月二十三日】放映分

今日けふよりは かへりみなくて 大君おほきみの しこ御楯みたてと 出で立つ我れは
《今日からは みなうち捨てて わし行くで 国の守りの 兵隊なって》
                         ―今奉部与曽布いままつりべのよそふ―(巻二十・四三七三)

【万葉歌みじかものがたり】《行くはと》

あずまの国の たみ百姓ひゃくしょ 国の守りの 防人さきもり
国それぞれに 集められ 難波なにわ目指して 旅に出る
勤め三年みとせと 言うけれど 三年みとせを過ぎる ことしき
旅路たびじ費用は 自分持ち 武器食料も 手弁当べんと
年貢 免除も 受けられず 残る家族は 食い兼ねる
難波湊で 船準備 整備修繕 勤めうち
やがて 船出の 時迎え 見送る人も 見ず知らず目指す筑紫は 雲向こう 無事の帰りは 運次第

何故なぜにこのわし 防人当たる
あんた どうして 防人される
知らせ 受けたら 思いは悲痛
逃げすべの 無いのが悔し

ふたほがみ しけ人なり あたゆまひ 我がする時に 防人さきもりにさす
《役人は 悪いやつやで 病人の わし防人に させやがってに》
                         ―大伴部廣成おおともべのひろなり―(巻二十・四三八二)
しほふねの そ白波 にはしくも おふたまほか 思はへなくに
《船の舳先を 越す白波なみみたい やぶからに お召しになるか おもてもせんに》
                         ―丈部大麻呂はせべのおおまろ―(巻二十・四三八九)
かしこきや みことかがふり 明日ゆりや かえがむた寝む 妹なしにして
《迷惑な おおもろうて 明日から 草と寝るんか お前と離れ》
                         ―物部秋持もののべのあきもち―(巻二十・四三二一)
今日けふよりは かへりみなくて 大君おほきみの しこ御楯みたてと 出で立つ我れは
《今日からは みなうち捨てて わし行くで 国の守りの 兵隊なって》
                         ―今奉部与曽布いままつりべのよそふ―(巻二十・四三七三)
今年行く 新島守にひしまもりが 麻衣あさごろも 肩のまよひは たれか取り見む
《新任の 防人さきもり行く子 着てるふく ほつれて仕舞たら 誰直すやろ》
                          ―古歌集―(巻七・一二六五)
防人さきもりに 行くはと 問ふ人を 見るがともしさ 物もひもせず
《防人に 行くんは誰の 旦那やと も思わんで う人憎い》
                          ―作者未詳―(巻二十・四四二五)
我がつまも き取らむ いづまもが 旅行くれは 見つつしのはむ
《お前の絵 ひま欲しで 持ってくと 途中見ながら しのべるのんに》
                         ―物部古麻呂もののべのこまろ―(巻二十・四三二七)
道のの うまらうれに まめの からまる君を はかれか行かむ
道端みちばたの いばら巻き付く 豆のつる からまるお前 置き行くのんか》
                         ―丈部鳥はせべのとり―(巻二十・四三五二)



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■日めくり万葉集Vol・2(171)我がやどに

2013年01月23日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
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【十一月二十二日】放映分
我がやどに きしなでしこ いつしかも 花に咲きなむ なそへつつ見む
《庭植えた 撫子なでしこ咲くん 楽しみや 女らしなる お前もおなじ》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻八・一四四八)

【万葉歌みじかものがたり】三日月みかづき見れば》

大伴坂上郎女おおとものさかのうえのいらつめは 不機嫌であった
 大伴本家たる 佐保邸
 跡取りは しかるべき身分の嫁が順当
 しかる に 身分釣り合わぬ娘などと・・・
 わが 娘坂上大嬢おおいらつめこそ 似合い)

従兄いとこ 家持を 
実兄あにとも慕う 年端としは行かぬ大嬢おおいらつめ
それと察する 坂上郎女いらつめからの歌が届く

月立ちて ただ三日月の 眉根まよねき 長く恋ひし 君に逢へるかも
《三日月の ようなまゆを いたんで こいがれてた あんたに逢えた》
                         ―大伴坂上郎女おおとものさかのうえのいらつめ―(巻六・九九三)
                                 (眉がかゆい=人に逢える前兆)

(あの 少女こどもにしては 出来すぎ
 ははぁ 叔母おばさまの代歌かわりうたじゃ これは)
坂上郎女いらつめの真意 知ってか知らずか
家持 かまい気分で筆を

けて 三日月みかづき見れば 一目見し 人の眉引まよひき 思ほゆるかも
《振りあおぎ 三日月見たら 一目見た おまえのまゆを 思い出したで》
                        ―大伴家持おおとものやかもち―(巻六・九九四)

我がやどに きしなでしこ いつしかも 花に咲きなむ なそへつつ見む
《庭植えた 撫子なでしこ咲くん 楽しみや 女らしなる お前もおなじ》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻八・一四四八)

なでしこの その花にもが 朝な朝な 手に取り持ちて 恋ひぬ日けむ
《撫子の お前花やと えのにな 毎朝手にし いつくしめるに》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻三・四〇八)

思い もよらぬ 返し歌
坂上郎女いらつめ 大嬢おおいらつめを駆り立て
手取り足とり 歌みさせる

生きてあらば 見まくも知らず 何しかも 死なむよ妹と いめに見えつる
《生きてたら 逢えるんやのに なんでまた 夢に出てきて 死のやてうの》
                         ―大伴坂上大嬢おおとものさかのうえのおおいらつめ―(巻四・五八一)
大夫ますらをも かく恋ひけるを 手弱女たわやめの 恋ふる心に たぐひあらめやも
《男でも 夢に見るほど 恋苦くるう おんな恋苦くるしん 当たり前やん》
                         ―大伴坂上大嬢おおとものさかのうえのおおいらつめ―(巻四・五八二)
月草の 移ろひやすく 思へかも が思ふ人の ことも告げ
《移りな 露草の児や 思うんか 逢いたいあんた 何もん》
                         ―大伴坂上大嬢おおとものさかのうえのおおいらつめ―(巻四・五八三)
春日山かすがやま 朝立つ雲の ぬ日無く 見まくの欲しき 君にもあるかも
《春日山 朝雲朝毎いつも かかってる 始終いっつもうちは あんた思てる》
                         ―大伴坂上大嬢おおとものさかのうえのおおいらつめ―(巻四・五八四)

(これは たまらん 母子おやこしての 相聞攻勢か)
家持 思わずの苦笑にがわら



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■日めくり万葉集Vol・2(170)人ならば

2013年01月19日 | 日めくり万葉集
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【十一月二十一日】放映分
人ならば 母が愛子まなごぞ あさもよし 紀の川のの 妹と背の山
《人でや 母が可愛いがる 子供やで 紀の川沿いの 妹山背山》
                          ―古集―(巻七・一二〇九)

【万葉歌みじかものがたり】 と背の山》

大和 別れて 紀伊へと入る
真土の山は 紀和国境くにざかい 
川沿い道を 辿たどれば見える
妹と背の山 仲え姿

 南海道 紀伊(紀ノ川沿い)】
妹がかど 出入いでいりの川の 瀬を早み つまづく 家思ふらしも
いりの川 瀬ぇはよて馬 つまづいた 案じとんかな このわし家で》
                          ―古集―(巻七・一一九一)
白栲しろたへに にほふ真土まつちの 山川やまがはに が馬なづむ いへふらしも
真土まつち山 馬山川やまかわで もたつくで 家でこのわし 案じとんのや》
                          ―古集―(巻七・一一九二)
背の山に ただに向へる 妹の山 ことゆるせやも 打橋うちはし渡す
《背の山の 川の向かいの 妹の山 求婚さそい受諾けたか 橋渡しとる》
                          ―古集―(巻七・一一九三)
人ならば 母が愛子まなごぞ あさもよし 紀の川のの 妹と背の山
《人でや 母が可愛いがる 子供やで 紀の川沿いの 妹山背山》
                          ―古集―(巻七・一二〇九)
我妹子わぎもこに が恋ひ行けば ともしくも 並びるかも 妹と背の山
うらやまし 妹と背の山 並んどる お前恋しと 旅空たびぞら来たら》
                          ―古集―(巻七・一二一〇)
妹にひ が越え行けば 背の山の 妹に恋ひずて あるがともしさ
《妹と背が 仲並んで うらやまし お前恋しと 山越え来たら》
                          ―古集―(巻七・一二〇八)
妹があたり 今ぞ我が行く 目のみだに 我れに見えこそ こと問はずとも
《妹山の そばとおるんで せめてもに 幻姿すがた見せてや 声せんかても》
                          ―古集―(巻七・一二一一)



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■日めくり万葉集Vol・2(169)夢の逢ひは

2013年01月16日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
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【十一月十八日】放映分
いめあひは 苦しかりけり おどろきて き探れども 手にも触れねば
《目ぇまし 手探てさぐりしても さわられん 夢でうんは もどかしこっちゃ》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻四・七四一)

【万葉歌みじかものがたり】千引ちびきいはを》
逢えぬ 苦しみ
朝明け と共に 相手を思い
日中ひなか一日 逢わんとの手立てあれこれ
 破れての 落ち込み
日の暮れが さらなる傷心いたみを誘う
延べるとこやみ 浮かぶ面影のらめき
  
いめあひは 苦しかりけり おどろきて き探れども 手にも触れねば
《目ぇまし 手探てさぐりしても さわられん 夢でうんは もどかしこっちゃ》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻四・七四一)
いめにだに 見えばこそあらめ かくばかり 見えずしあるは 恋ひて死ねとか
《せめてもに 夢に出んかと 待ってても 出てえへんの 恋死ね云うことか》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻四・七四九)
かくばかり 面影おもかげのみに 思ほえば いかにかもせむ 人目しげくて
《面影が 浮かび浮かんで 仕様しょうないで どしたらんや 人目いのに》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻四・七五二)
一重ひとへのみ 妹が結ばむ 帯をすら 三重みへ結ぶべく 我が身はなりぬ
てくれる 帯は一重で ったのに 三重結ぶほど 恋せしたで》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻四・七四二)

人間  追い詰められれば
覚悟 が決まる
 こうなれば もう 逢うしかない
  逢っても逢わなくても 世間は 許さない
 腹をくくるが 上策)
開き直り に 活路を見い出そうとする 家持

恋死こひしなむ そこも同じぞ 何せむに 人目ひとめ他言ひとごと 言痛こちたがせむ
恋死やで 他人ひと非難うわさを 逃れと 逢うんめても おんなじこっちゃ》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻四・七四八)
わが恋は 千引ちびきいはを ななばかり 首にけむも 神のまにまに
かまへんで 千人引きの 石七つ 首掛けるな 苦し恋でも》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻四・七四三)






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■日めくり万葉集Vol・2(168)稲日野も

2013年01月12日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
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【十一月十七日】放映分
稲日野いなびのも 行きぎかてに 思へれば 心こほしき 可古かこしま
印南野いなみのの 素通りしと 思う間に 恋し可古かこ島 おお見えとるが》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・二五三)

【万葉歌みじかものがたり】大和島 見ゆ》

長門をた 人麻呂の公務旅たび
大宰府 への 副次報告を終え
の津からの船は 難波なにわの津を目指していた
時化しけの怖さはあるが 沿岸伝いの船旅ふなたび
陸路の難渋なんじゅうを思えば 安全 この上ない
久方ぶり の 大和の地
はやる心の 人麻呂

 まだ 見えぬのか 大和は)
稲日野いなびのも 行きぎかてに 思へれば 心こほしき 可古かこしま
印南野いなみのの 素通りしと 思う間に 恋し可古かこ島 おお見えとるが》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・二五三)

(淡路島 大きゅうなってきた おお にぎやか 賑やか)
笥飯けひの海の にはくあらし 刈薦かりこもの みだづ見ゆ 海人あまの釣船
うみは いだみたいや 釣り船が バラバラバラと 出てきとるがな》 
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・二五六)

 うわぁ 大和や 大和や)
天離あまざかる ひな長道ながぢゆ 恋ひれば 明石のより 大和島やまとしま見ゆ
《長い道 恋し恋しと 明石来た 海峡かいきょうこに 大和の山や》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・二五五)

小躍こおどりしたい気持ち
それとは 裏腹うらはら
人麻呂の胸に 苦いしるが わだかまる

(このまま 地方の官吏かんりで終わるのか
 あの ほまれは 夢だったのか
 天武帝に召され「大王おおきみは 神にしあれば」とうたったのは わしだ
  統帝の覚えは 目出たかった
 吉野行幸みゆき「山川も依りてつかふる」は絶讃ぜつさんを得た
 皇子みこ達への き歌の数々
 宮めの 寿ことほぎ歌・・・
 あれ は 真のわしであったのであろうか
 時移り 世は変わり 宮廷一の歌人うたびと 柿本人麻呂は どこへ行ったのじゃ
 友もいない ぶん不相応な扱いを受けた わしに 誰も寄りはしなかった
 もう  大和はわしの住むところではないのだ)

石見いわみは い あそこは 人が住んでいる
 依羅娘子よさみのおとめが待っている・・・)

人麻呂の目に 大和島山が にじ



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■日めくり万葉集Vol・2(167)あしひきの

2013年01月09日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
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【十一月十六日】放映分
あしひきの 山川やまがはの瀬の 鳴るなへに 弓月ゆつきたけに 雲立ち渡る
《山筋の 川瀬鳴ってる やっぱりな つきたけに 雨雲あめぐも出てる》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一〇八八)

【万葉歌みじかものがたり】川音かはと高しも》

人麻呂 は 馬を急がせていた
ここしばらく 吉野行幸みゆきの はからい事で
つまいが 遠ざかっていた
昨日 降った 春の雪
ぬかるみ  
 の足取りが もどかしい

新妻にいづまを待たせて仕舞しもうた 巻向郎女まきむくのいらつめ
  待ち焦がれているじゃろう 急がねば)
三輪山 を 右手に見ながら
馬は 三輪の大社おおやしろを過ぎた 
泥道 が続く
霧の立ち込める中 檜原ひばらもりが見える

巻向まきむくの 檜原ひばらに立てる 春霞 おぼにしおもはば なづみめやも
《すぐ消える 霞みたいな 思いちゃう そんな気ぃなら 無理してんわ》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・一八一三)
夕闇の 訪れに 湿しめの広がり
穴師あなし川の 橋を渡り 川上に 馬首ばしゅめぐらす
 川に 波 立ってきたぞ)
穴師あなしがは 川波立ちぬ まきむくの つきたけに くも立てるらし
《穴師川 波立ってるで ざわざわと つきたけに 雲出てるがな》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一〇八七)
 おお 瀬が 鳴っとおる)

あしひきの 山川やまがはの瀬の 鳴るなへに 弓月ゆつきたけに 雲立ち渡る
《山筋の 川瀬鳴ってる やっぱりな つきたけに 雨雲あめぐも出てる》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一〇八八)

 今 戻った」
 を 飛び降り 門前から 呼びかける
まろぶが如き 出迎えの 巻向郎女いらつめ
 雨には 合わずに済んだぞ」
微笑ほほえみ おも伏せる 巻向郎女いらつめ

夕餉ゆうげを 済ませ
くつろぎ の ひと時
山間やまあい静寂せいじゃくに 川音かわおとが 高い
ぬばたまの 夜さりれば 巻向まきむくの 川音かはと高しも 嵐かも
よるけた 川の水音 こなった 今に一荒ひとあれ じき来るみたい》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一一〇一)

至福しふくの一夜
激しかった雨脚あまあし 次第に 遠のく



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【古事記ものがたり】への誘い
古事記編纂1300年を期し 一大叙事詩を作ってみました
こちらを ご覧下さい。
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平成25年 あけまして おめでとう ございます

2013年01月01日 | メッセージ
新しい年がやって来ました。
皆様に取りまして この年が輝きに満ちた希望の年であることを願い
新年のご挨拶を申し上げます。

昨年は 私に取りまして 人生最大の喜びの年となりました。
念願の「万葉歌みじかものがたり」
これが発刊でき 永年の思いが現実のものとなった年でありました。
5月に第一巻(歴史編)
9月に第二巻(人麻呂編・黒人編・旅人編・憶良編)

朝日新聞の「著者に会いたい」にも取り上げて頂き 望外の喜びは言葉に尽くせません。
応援を頂き 今も声援を頂く友人・知人の皆様の支えがあったればこそと 感謝に堪えません。

昨年暮れに 第三巻(蟲麻呂編・金村・千年編・赤人編・坂上郎女編)が印刷完了し
予約申込頂いた方々には 年末ぎりぎりの配達便が間に合ったことと推察致します。
有り難うございました。
書店での陳列は 正月中旬ころと思われます。
取り寄せ申込み頂ければと思います。

また 第三巻と同時に
昨年が古事記編纂1300年に当たるのを期して
血湧き肉躍る活劇譚・叙情詩的「古事記ものがたり」が 刊行されました。
併せて ご贔屓を賜わりたく思います。

今年は 「万葉歌みじかものがたり」全十巻の残りの七巻の制作・刊行に傾注します。
ご支援ください。

なお 1/6まで 紀伊國屋じんぶん大賞2012の受付(FAX・Twiter・WEB)がされています
もし 拙著をお読み頂いた方で 推薦に値すると感じられた方が居られましたら
応募頂ければ 嬉しいです。(厚かましいお願いですが・・・)

知人・友人に送らせて頂いた「年賀状」を ここに掲載し ブログでの新年の挨拶とします。
今年も よろしくお願いします。