犬養万葉今昔―犬養孝先生著「万葉の旅」を訪ねて

犬養孝先生名著「万葉の旅」記載の万葉故地309箇所を訪ね、先生が撮られれたのと同じ場所に立った写真撮影を目指す紀行。

■日めくり万葉集Vol・2(227)やくもさす

2013年11月30日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【二月二十二日】放映分
八雲やくもさす 出雲いづもの子らが 黒髪くろかみは 吉野の川の おきになづさふ
《出雲から 出て来た児ぉの 黒髪が 川底そこらめき 漂うとおる》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・四三〇)


【万葉歌みじかものがたり】国忘れたる

人麻呂 は 夢を見ていた
みんな  礼を言ってくれる
手向たむけ歌への礼だ

(これは 狭岑さみね島の野伏のぶせ人
  ヨメナ また咲いてますかな)

(あれに 来るのは 香久山かぐやまのごじんではないか
 そなえの歌は たしか・・・)
草枕くさまくら 旅の宿やどりに つまか 国忘れたる 家待たまくに
 誰やろか こんなとこ来て 死んではる 国はどこやろ 家待つやろに》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・四二六)

(次なるは 出雲娘子いずものおとめ
 おぉ 土形娘子ひじかたのおとめと連れどうて 二人とも 火葬かそうに付されたので あったな あわれなことに)
隠口こもりくの 泊瀬はつせの山の 山のに いさよふ雲は 妹にかもあらむ
《泊瀬山 山の狭間はざまに ただようて たゆとう雲は あの児やろうか》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・四二八)
八雲やくもさす 出雲いづもの子らが 黒髪くろかみは 吉野の川の おきになづさふ
《出雲から 出て来た児ぉの 黒髪が 川底そこらめき 漂うとおる》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・四三〇)
山のゆ 出雲いづもらは きりなれや 吉野の山の みねにたなびく
 出雲の児 霧になったか 山の上 雲と一緒に 棚引いとおる》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・四二九)

 次のお方・・・
  これは 人麻呂さまでは ありませぬか
  人麻呂さまは まだ ご存命のはず
 よって 手向けの歌は ご用意致しておりませぬ いのでございます 無いといったら 無い!)

 ご主人さま! ご主人さまぁ! しっかり なさいませ うなされておりますぞ」
ともに 揺り動かされ ぼんやりと 目を覚ます人麻呂

先日来の 高熱 流行はやりの熱病か
石見いわみへと向かう 国境くにざかいの山の奥

朦朧もうろうとした意識の中 人麻呂の口が かすかに動く
 もう い か ん お迎え じゃ
 山中さんちゅう亡骸なきがらは 見苦しい 引き取りは 石見国庁の 丹比笠麿たじひのかさまろ殿に・・・
依羅娘子よさみのをとめには 歌を託す 筆 筆を・・・」

当代きっての 歌人うたびと 柿本人麻呂
うつろろな目は 嶺の雲を 追っている




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【古事記ものがたり】への誘い
古事記編纂1300年を期し 一大叙事詩を作ってみました
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■日めくり万葉集Vol・2(226)勝鹿の

2013年11月23日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【二月二十一日】放映分
勝鹿の 真間の手児名てこなが 麻衣あさぎぬに 青衿あをくびけ ひたを にはて 髪だにも きはけづらず くつをだに 穿かず行けども にしきあやの 中に包める 斎児いはひごも いもかめや 
《葛飾真間の 手児名てこなて云う児 色えりの 麻ふくかぶり 麻そのままの 粗末穿いて 髪もけずらん 裸足はだしの児やに にしき服着て 育った児にも 負けん位に 器量きりょうえ児》


【万葉歌みじかものがたり】手児名てこなし思ほゆ》
これほどの つたえ話があろうか
宇合うまかい様も さぞ満足されるであろう
下総しもふさ真間ままではあるが 常陸ひたち隣国りんごく 
番外 に収録することで 世に伝えられる

とりが鳴く あづまの国に いにしへに ありける事と 今までに 絶えず言ひる  
あずまの国に 伝わる話 昔を今に 伝える話》
勝鹿の 真間の手児名てこなが 麻衣あさぎぬに 青衿あをくびけ ひたを にはて 髪だにも きはけづらず くつをだに 穿かず行けども にしきあやの 中に包める 斎児いはひごも いもかめや 
《葛飾真間の 手児名てこなて云う児 色えりの 麻ふくかぶり 麻そのままの 粗末穿いて 髪もけずらん 裸足はだしの児やに にしき服着て 育った児にも 負けん位に 器量きりょうえ児》
望月もちづきの れるおもわに 花のごと みて立てれば 夏虫の 火にるが如 みなとりに 船漕ぐ如く 行きかぐれ 人のいふ時 
綺麗きれえ面差おもざし 笑顔で立つと 火に入る虫か 湊集あつまる船か 男押しかけ 嫁にと騒ぐ》
いくばくも けらじものを 何すとか 身をたな知りて 波のの さわみなとの おくに 妹がこやせる 
《なんぼ生きても 短い命 私ごときに このな騒ぎ そんな値打ちは うちには無いと 水底みなそこ深く 沈みてすよ》
とほき代に ありける事を 昨日きのふしも 見けむがごとも 思ほゆるかも
《昔のことと 伝えは言うが 昨日きのうのことに 思えてならん》
                         ―高橋蟲麻呂たかはしのむしまろ歌集―(巻九・一八〇七)

葛飾かつしかの 真間まま見れば 立ちならし 水ましけむ 手児名てこなし思ほゆ
真間ままの井を 見てると幻視える あの手児名てこな ここで水汲む 可愛かいらし姿》
                         ―高橋蟲麻呂たかはしのむしまろ歌集―(巻九・一八〇八)

それにしても 可哀想かわいそうなことをしたものだ
昔のおみなは こうも純情じゅんじょう可憐かれんであったか
 の女ときたら・・・
言う まい 言うまい

蟲麻呂の固い心に ひと時 みがこぼれる




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■日めくり万葉集Vol・2(225)風をだに

2013年11月20日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
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【二月二十日】放映分
風をだに 恋ふるはともし 風をだに むとし待たば 何かなげかむ
うらやまし 風と間違まちごて うちなんか 待つ人うて なげかれへんわ》
                         ―鏡王女かがみのおおきみ―(巻四・四八九、巻八・一六〇七)


【万葉歌みじかものがたり】 b>すだれ動かし

天智八年(669)中臣鎌足なかとみのかまたり 死去
中大兄皇子なかのおおえのおうじ 天皇おおきみ即位の 翌年であった

大化改新以来の盟友めいゆう
自分のきさき 鏡王女かがみのおおきみを 正妻として下げ渡し
采女うねめ 安見児やすみこを 与えて優遇した
その 死にあたって
最高冠位 大職冠たいしょくかんに任じ
大臣おおおみの位 藤原の姓をさずけた

信頼すべき 相談相手をくし
天皇おおきみは 近江大津宮での 政務に掛かりっきりであった

久しく  お越しはない
額田王ぬかたのおおきみは 張りのない日々を 送っていた
 空は澄み 山は 赤や黄にもみちしている
 みち狩りの お誘いでもあれば 気も晴れように
そう いえば 昔 前触れなしの突然のお越しがあった もしや そんなことも・・・)

君待つと が恋ひれば わがやどの すだれ動かし 秋の風吹く
《あっすだれ 揺れたおもたら 風やんか あんまりうちが 焦がれるよって》
                         ―額田王ぬかたのおおきみ―(巻四・四八八、巻八・一六〇六)

「えっ 風の所為せいと間違えたの 額田王おおきみ

風をだに 恋ふるはともし 風をだに むとし待たば 何かなげかむ
うらやまし 風と間違まちごて うちなんか 待つ人うて なげかれへんわ》
                         ―鏡王女かがみのおおきみ―(巻四・四八九、巻八・一六〇七)
 鎌足公は 亡くなられたもの」
鏡王女かがみのおおきみは 寂しく つぶやく 
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 鏡王女の歌】
神奈備かむなびの 石瀬いはせもりの 呼子鳥よぶこどり いたくな鳴きそ が恋まさる
石瀬いわせもり 呼子よぶこの鳥よ そう鳴きな せつい恋が 増々よけつのるがな》
                         ―鏡王女かがみのおおきみ―(巻八・一四一九)




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■日めくり万葉集Vol・2(224)ひさかたの

2013年11月13日 | 日めくり万葉集
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【二月十七日】放映分
ひさかたの あまの川瀬に 船けて 今夜こよひか君が わがまさむ
《天の川 舟浮かばして 今夜きょうんや うち待つ岸に あんたがんや》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻八・一五一九)


【万葉歌みじかものがたり】わがまさむ

七月 七日 今日 その日
年に 一度の 七夕あきよい

(おお あまの川の中ほど 星のゆらめき)
牽牛ひこぼしの つま迎へぶね 漕ぎらし あま川原かはらに 霧の立てるは
《彦星の 迎えの舟が 出たんやな あま川原かわらに 霧出てるがな》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻八・一五二七)

織姫おりひめさん さぞかし 胸躍ときめいて おられるじゃろう)
天の川 浮津ふつ波音なみおと 騒ぐなり わが待つ君し ふなすらしも
《天の川 波ざわざわと 騒いでる うち待つあんた 舟したんや》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻八・一五二九)

ひさかたの あまの川瀬に 船けて 今夜こよひか君が わがまさむ
《天の川 舟浮かばして 今夜きょうんや うち待つ岸に あんたがんや》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻八・一五一九)

かすみつ 天の川原に 君待つと い行きかへるに の裾濡れぬ
《霞んでる 川原かわらまで出て あんた待ち 行ったり来たり 裾まで濡らし》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻八・一五二八)

あまかは 相向き立ちて 我が恋ひし 君ますなり ひも解きけな
《天の川 隔て離され 焦がれ待つ あんた来る来る 早よ支度したくせな》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻八・一五一八)

秋風の 吹きにし日より いつしかと  わが待ち恋ひし 君ぞ来ませる
立秋あきの風 吹いた時から 待っとった うちのあの人 来たんや来たで》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻八・一五二三)

 ああ 雲が
 二人の逢瀬おうせ 雲が隠す
 雲のやつ 気遣きづかいか・・・
今宵こよい 過ぎれば 一年あと
 せつい 別れが 待っている
  その時の 思い・・・)
玉かぎる ほのかに見えて 別れなば もとなや恋ひむ 達ふ時までは
《喜びの 逢瀬おうせ束の間 夜明よあけたら また焦がれや 今度逢うまで》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻八・一五二六)

 の晴れ間
輝き増す 牽牛けんぎゅうぼし と 織姫おりひめぼし 



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■日めくり万葉集Vol・2(223)心をし

2013年11月06日 | 日めくり万葉集
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【二月十六日】放映分
心をし 無何有むがうさとに 置きてあらば 藐孤射ばこやの山を 見まく近けむ
こだわりの 心捨てたら 不老ふろ不死ふしの 仙人せんにん世界 ぐそこちゃうか》
                          ―作者未詳―(巻十六・三八五一)

【万葉歌みじかものがたり】《海や死にする》

生と死 この無情むじょうなる物
宗教的背景つ これらの歌
この時代 極楽ごくらく往生おうじょう思想 民衆みんしゅうひろがり未だし
作者は 僧侶教養人なりや

心をし 無何有むがうさとに 置きてあらば 藐孤射ばこやの山を 見まく近けむ
こだわりの 心捨てたら 不老ふろ不死ふしの 仙人せんにん世界 ぐそこちゃうか》
                          ―作者未詳―(巻十六・三八五一)
               (無何有むがうさと=「荘子」に云う自然のままで、何の作為もない理想郷)
               (藐孤射ばこやの山=「壮士」に云う不老不死の仙人が住む安楽卿)

鯨魚いさな取り 海や死にする 山や死にする
死ぬれこそ 海はしほて 山は枯れすれ
《あるやろか 海死ぬうん 山死ぬうん
あぁ死ぬで 海干上ひあがるし 山枯れるがな》
                          ―作者未詳―(巻十六・三八五二)

 は生まれて 何れは死ぬる
死ねば魂 行くのは何処いずこ
天の霊界 如何いかなるところ
如何いかに思うや 万葉人まんようびとは 

あめなるや 神楽良ささら小野をのに 茅草ちがや刈り かや刈りばかに うづらを立つも
たまつどう 神楽良ささらの小野で 茅草かや刈るに にわ飛び立つ 人魂ひとだまうずら
                          ―作者未詳―(巻十六・三八八七)
                       (ささらの小野=死者の魂が集まる恐ろしい月世界)
                       (うづら=霊魂そのものが具現化したもの)
  
おきつ国 うしはく君の 屋形やかた 丹塗にぬりの屋形やかた 神の渡る
霊界れいかいの 支配のぬしの 丹塗にぬり舟 死霊しりょうを乗せて あの世へ渡る》
                          ―作者未詳―(巻十六・三八八八)
  
人魂ひとだまの さなる君が ただひとり へりし雨夜あまよの 葉非左さむけ思ほゆ
人魂ひとだまの あんたに独り 出くわした あめ寒気さむけ いまだ消えんわ》
                          ―作者未詳―(巻十六・三八八九)



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【古事記ものがたり】への誘い
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