犬養万葉今昔―犬養孝先生著「万葉の旅」を訪ねて

犬養孝先生名著「万葉の旅」記載の万葉故地309箇所を訪ね、先生が撮られれたのと同じ場所に立った写真撮影を目指す紀行。

■日めくり万葉集Vol・2(025)二人して

2011年06月29日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【四月二十九日】放映分

ふたりして 結びしひもをひとりして れはきみじ ただに逢ふまでは

 《二人して 結んだ下紐ひもや う前に なんで一人で わしほどくかい》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九一九)

【万葉歌みじかものがたり】《無礼なめかしこし》

あの児可愛かわいや いじらし限り
いたいたに 何故なぜかく
結んだ下紐ひもは ちかいのあかし
ほどくかわしが お前やなしに
  
おほかたは なにかも恋ひむ 言挙ことあげせず 妹に寄り寝む 年は近きを
わんでも お前と共寝る日 来るうに がれするのん しこっちゃ》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九一八)
   
死なむいのち 此処ここは思はず ただしくも 妹に逢はざる ことをしぞ思ふ
《死ぬ命 し思わんが ただお前 えんなるん いやだけなんや》
                            ―作者未詳―(巻十二・二九二〇)
   
うつつにか 妹が来ませる いめにかも 我れかまとへる 恋のしげきに
《お前来た 夢かうつつか 幻か がれはげして わしけとんか》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九一七)
   
玉かつま 逢はむと言ふは れなるか 逢へる時さへ おもかくしする
いたいて うたん誰や そやうに うたら顔を かくすんかいな》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九一六)
                  (玉かつま=立派なかごふたと身が合う→逢う)
  
ふたりして 結びしひもをひとりして れはきみじ ただに逢ふまでは
《二人して 結んだ下紐ひもや う前に なんで一人で わしほどくかい》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九一九)
   
いかならむ 日の時にかも 我妹子わぎもこが きの姿 朝にに見む
何時いつたら あの児の裳裾もすそ 引く姿 朝晩ずっと 見られんやろか》
                           ―作者未詳―(巻十二・二八九七)
   
妹と言はば 無礼なめかしこし しかすがに けまくしき ことにあるかも
《「お前」ん もったいないな そやけども てみたいんや 「お前」うんを》
  
                           ―作者未詳―(巻十二・二九一五)
                               相手は身分高い女か)


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■日めくり万葉集Vol・2(024)夕されば

2011年06月25日 | 日めくり万葉集
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【四月二十八日】放映分

ゆふされば 物さる 見し人の 言問こととふ姿 面影にして

 《日暮れには 睦言むつごと顔を 思い出し 恋しさ募り どう仕様しょもないわ》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―(巻四・六〇二)



【万葉歌みじかものがたり】《浜の真砂まなごも》

少しの緊張が 遠慮を連れている内は
ねんごろが深まれば 甘えが出る
甘えが 我儘わがままを呼び 相手を傷つける
どちら ともなしに

逢う ことへの 気詰りの気付き
あいだを置いてみるか)
家持に 気詰り除き策とも 逃げともつかぬ 心芽がまれる

八百日やほか行く 浜の真砂まなごも が恋に あにまさらじか 沖つ島守
《広い浜 そこの砂数すなより うちの恋 ずっといのん 分かるなあんた》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―(巻四・五九六)

うつせみの 人目をしげみ 石橋いははしの 間近まぢかき君に 恋ひわたるかも
他人ひとの目が うるさいよって 逢わへんで 焦がれるだけや 近こるのんに》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―(巻四・五九七)

恋にもぞ 人は死にする 水無瀬川みなせがは 下ゆ我れす 月に
《恋したら 人死ぬんやで うちもそや 日に日にせる あんた分かるか》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―(巻四・五九八)

伊勢の海の いそもとどろに 寄する波 かしこき人に 恋ひわたるかも
《大波の とどろくみたい 勿体もったない 人にこのうち 惚れたんやろか》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―(巻四・六〇〇)

こころゆも はざりき 山川も へだたらなくに かく恋ひむとは
《山川に 隔てられてる わけちゃうに こんながれる 思わなんだわ》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―(巻四・六〇一)

ゆふされば 物さる 見し人の 言問こととふ姿 面影にして
《日暮れには 睦言むつごと顔を 思い出し 恋しさ募り どう仕様しょもないわ》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―(巻四・六〇二)

剣大刀つるぎたち 身に取りふと いめに見つ 如何いかなるぞも 君にはむため
《夢見たで おっかたなに 添い寝する なんのこっちゃろ える前徴しるしか》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―(巻四・六〇四)

天地あめつちの 神のことわり なくはこそ ふ君に 逢はず死にせめ
《この世には ほんま神さん らんのか うち死にそやで あんた逢えんと》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―(巻四・六〇五)

遠のきがち の 家持
「何故 ぬか」の 笠郎女
笠郎女の恋への執着ごころ
激しさ  増すごと
家持の気重きおもは 増す


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■日めくり万葉集Vol・2(023)さ寝る夜は

2011年06月22日 | 日めくり万葉集
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【四月二十七日】放映分

は 多くあれども ものはず 安くは さねなきものを

 《夜来たら 仕様しょうことなしに 寝るけども ちゃんと寝たこと ほんまにないわ》
                           ―中臣宅守なかとみのやかもり―〔巻十五・三七六〇〕



【万葉歌みじかものがたり】が胸痛し》

娘子おとめの 懸命の励まし
宅守やかもりの悲しみに 力が戻る
たちかへり 泣けどもれは しるしみ 思ひわぶれて しぞ多き
《幾晩も つらい思いで とこに就く なんぼ泣いても ども成らんので》
                           ―中臣宅守なかとみのやかもり―〔巻十五・三七五九〕
は 多くあれども ものはず 安くは さねなきものを
《夜来たら 仕様しょうことなしに 寝るけども ちゃんと寝たこと ほんまにないわ》
                           ―中臣宅守なかとみのやかもり―〔巻十五・三七六〇〕

 悲しみは 我ひとりにあらず
 女身で耐える娘子おとめ もっとつらかろう〕
山川を なかへなりて 遠くとも 心を近く 思ほせ我妹わぎも
 山や川 あって隔てて 遠いけど 心近いと 思てやお前》
                           ―中臣宅守なかとみのやかもり―〔巻十五・三七六四〕

 わしからも 心の支え 贈るとするか〕
真澄まそかがみ かけてしぬへと まつす 形見かたみものを 人にしめすな
《気にかけて 偲んで欲しと 送るから わしの身代わり 他人ひとに見せなや》
                           ―中臣宅守なかとみのやかもり―〔巻十五・三七六五〕
うるはしと おもひしおもはば 下紐したびもに け持ちて まずしのはせ
《わしのこと ほんま恋しと 思うなら 肌身に着けて ずっとしのんで》
                           ―中臣宅守なかとみのやかもり―〔巻十五・三七六六〕

 ああ やはり 思うた通りの お方
  この優しさ 都に 誰居ろうか〕
たましひは あしたゆうへに たまふれど が胸いたし 恋の繁きに
真心まごころを 朝な夕なに 思うけど 恋し恋しが 胸締め付ける》
                           ―狭野弟上娘子さののおとがみのをとめ―〔巻十五・三七六七〕
このころは 君を思ふと すべも無き 恋のみしつつ のみしぞ泣く
《近頃は 思うていても 甲斐うて  恋し思うて 泣いてばっかり》
                           ―狭野弟上娘子さののおとがみのをとめ―〔巻十五・三七六八〕

昔の 優しさに触れ 思わず 甘えの出る娘子おとめ


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■日めくり万葉集Vol・2(022)この箱を

2011年06月18日 | 日めくり万葉集
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【四月二十六日】放映分

・・・常世辺とこよべに また帰りきて いまごと はむとならば
                        このくしげ 開くなゆめと・・・




【万葉歌みじかものがたり】《開くなゆめと》

丹後 の国 本庄浜 古老と共に 浜に座す虫麻呂
 そりと 始まる 古老の話

春の日の かすめる時に 墨吉すみのえの 岸に出でゐて 釣船つりぶねの とをらふ見れば いにしへの 事ぞ思ほゆる 
 春の霞に 岸に出て 釣り船見たら 思い出す》
水江みづのえの 浦島うらしまの子が 堅魚かつを釣り たい釣りほこり 七日なぬかまで 家にもずて 
《浦島はんは さかな釣る あんまり多数ようけ 釣れるんで 七日も家に かえらんと》
海界うなさかを 過ぎて漕ぎ行くに 海神わたつみの 神のをとめに たまさかに いぎ向い あひあとらひ ことりしかば
《沖いでたら 偶然に 海神娘おとひめさんに うたんや どっちともう 一目ぼれ》
かきむすび 常世とこよに至り 海神わたつみの 神の宮の うちの たへなる殿に たづさはり 二人入りて ひもせず 死にもせずして 永き世に ありけるものを
《手に手を取って 海神宮りゅうぐうに 甘い暮らしの 日ぃ続く 死なんと二人 暮らせたに》
世の中の 愚人おろかひとの 我妹子わぎもこに りてかたらく 須臾しましくは いへに帰りて 父母ちちははに 事もかたらひ 明日あすごと 我れはなむと 言ひければ
《アホな浦島 言うたんや 一寸ちょっと帰って 親にい じきに帰るて 言うたんや 
いもが言へらく 常世辺とこよべに また帰りきて いまごと はむとならば このくしげ 開くなゆめと そこらくに かためしこと
海神娘おとひめさんは 言うたんや 帰ってたい 思うたら 開けたあかんで このはこと きつきつうに 言うたんや 
墨吉すみのえに 帰りきたりて 家見れど 家も見かねて 里見れど 里も見かねて あやしみと そこに思はく 家ゆ出でて 三歳みとせほとに 垣も無く いえせめやと
《帰ってたら 家はない 村もあれへん 奇怪おっかしな 家を出てから 三年で 家がうなる はずないで》
この箱を 開きて見てば もとのごと 家はあらむと 玉篋たまくしげ 少し開くに 白雲の 箱より出でて 常世辺とこよべに たな引きぬれば 
《もしやこのはこ 開けたなら 元戻るかと はこ開けた 湧きでる煙 白煙 海神宮りゅうぐう殿じょうへ 流れてく 
立ち走り 叫び袖振り 反側こひまろび 足ずりしつつ たちまちに こころ消失けうせぬ 若かりし はだもしわみぬ 黒かりし かみしらけぬ ゆなゆなは 息さへ絶えて のちつひに 命死いのちしにける
あわて走って 叫び転倒こけ 地団駄じだんだ踏んで 悔しがる みるみる元気 うなって しわくちゃ顔で 白髪しらがなり 息えで 死んで仕舞た》
水江みづのえの 浦島の子が 家地いへどころ見ゆ 
《あのあたり むかし浦島 住んでたところ》 
                         ―高橋虫麻呂歌集たかはしのむしまろがかしゅう―(巻九・一七四〇)
常世辺とこよべに 住むべきものを 剣大刀つるぎたち が心から おそやこの君
海神娘おとひめと 死なんとなごう 暮せたに ほんまアホやで 浦島はんは》 
                         ―高橋虫麻呂歌集たかはしのむしまろがかしゅう―(巻九・一七四一)

 の波が ゆたりゆたりと 寄せては返している


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■日めくり万葉集Vol・2(021)我が妻も

2011年06月15日 | 日めくり万葉集
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【四月二十五日】放映分

我がつまも き取らむ いづまもが 旅行くれは 見つつしのはむ

 《お前の絵 ひま欲しで 持ってくと 途中見ながら しのべるのんに》
                         ―物部古麻呂もののべのこまろ―(巻二十・四三二七)



【万葉歌みじかものがたり】《行くはと》

あずまの国の たみ百姓ひゃくしょ 国の守りの 防人さきもり
国それぞれに 集められ 難波なにわ目指して 旅に出る
勤め三年みとせと 言うけれど 三年みとせを過ぎる ことしき
旅路費用は 自分持ち 武器食料も 手弁当べんと
年貢 免除も 受けられず 残る家族は 食いかねる
難波湊で 船準備 整備修繕 勤めうち
やがて 船出の 時迎え 見送る人も 見ず知らず
目指す筑紫は  雲向こう 無事の帰りは 運次第

何故なぜにこのわし 防人当たる
あなた どうして 防人される
知らせ 受けたら 思いは悲痛
逃げすべの 無いのが悔し

ふたほがみ しけ人なり あたゆまひ 我がする時に 防人さきもりにさす
《役人は 悪いやつやで 病人の わし防人に させやがってに》
                         ―大伴部廣成おおともべのひろなり―(巻二十・四三八二)
しほふねの そ白波 にはしくも おふたまほか 思はへなくに
《船の舳先を 越す白波なみみたい やぶからに お召しになるか おもてもせんに》
                         ―丈部大麻呂はせべのおおまろ―(巻二十・四三八九)
かしこきや みことかがふり 明日ゆりや かえがむた寝む 妹なしにして
《迷惑な おおもろうて 明日から 草と寝るんか お前と離れ》
                         ―物部秋持もののべのあきもち―(巻二十・四三二一)
今日けふよりは かへりみなくて大君おほきみの しこ御楯みたてと 出で立つ我れは
《今日からは みなうち捨てて わし行くで 国の守りの 兵隊なって》
                         ―今奉部与曽布いままつりべのよそふ―(巻二十・四三七三)
今年行く 新島守にひしまもりが 麻衣あさごろも 肩のまよひは たれか取り見む
《新任の 防人さきもり行く子 着てるふく ほつれて仕舞たら 誰直すやろ》
                          古歌集―(巻七・一二六五)
防人さきもりに 行くはと 問ふ人を 見るがともしさ 物もひもせず
《防人に 行くんは誰の 旦那やと も思わんで 憎らし》
                          作者未詳―(巻二十・四四二五)
我がつまも き取らむ いづまもが 旅行くれは 見つつしのはむ
《お前の絵 ひま欲しで 持ってくと 途中見ながら しのべるのんに》
                         ―物部古麻呂もののべのこまろ―(巻二十・四三二七)
道のの うまらうれに まめの からまる君を はかれか行かむ
道端みちばたの いばら巻き付く 豆のつる からまるお前 置き行くのんか》
                         ―丈部鳥はせべのとり―(巻二十・四三五二)


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■日めくり万葉集Vol・2(020)あかねさす

2011年06月11日 | 日めくり万葉集
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【四月二十二日】放映分

あかねさす 昼は田びて ぬばたまの よるいとまに めるせりこれ

 《昼間ひるまには け仕事で いそがして よるひま見付け 摘んだせりやで》
                         ―橘諸兄たちばなのもろえ―(巻二十・四四五五)


【万葉歌みじかものがたり】《吹きき敷ける》

  勝宝七年(755)八月 
大極殿南院 孝謙天皇催しの 内裏だいり
群臣 列席の中
安宿王あすかべおう 女官のきらびやかを詠う

娘子をとめらが たま裾引く この庭に 秋風吹きて 花は散りつつ
《乙女達 すそを引いて 歩く庭 秋の風吹き 萩花はな散っとおる》
                         ―安宿王あすかべのおおきみ―(巻二十・四四五二)

家持  歌作るも 用向きあって中座 奏さず

秋風の 吹きき敷ける 花の庭 清き月夜つくよに 見れどかぬかも
《秋風が 吹き飛ばしした 花庭はなにわは 月さわやかで おもむき深い》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻二十・四四五三)
                                    八月十三日】

十一月 
さて 問題のうたげ 奈良麻呂邸

高山の いはほふる すがの根の ねもころごろに 降り置く白雪
《高山の 岩にえてる 菅根すがねやで びっしり白雪しらゆき 積もってるがな》
                         ―橘諸兄たちばなのもろえ―(巻二十・四四五四)
                                    十一月二十八日】

この 
先月 よりの 聖武上皇 病状深刻に
 もしやのこと 有りし時 云々』
の 憂慮ゆうりょ言の葉 発せし 橘諸兄もろえ
これが 曲解きょっかい生み 策に利用されしか

上皇侮蔑ぶべつが件 経緯いきさつ聞いた 家持 
筑紫 で見た 苦悩旅人の顔 思い出す
(あれは 確かじん六年(729)二月
 藤原氏陰謀により 長屋ながやおう追い込まれ自害
 長屋王おうも左大臣であられた
  なんたる因縁 
 ひそかに聞くところ
 奈良麻呂殿 画策かくさくの 盟主候補
 黄文きぶみおう 安宿あすかべおうは 長屋王の御子おこ
  これまた 因縁)

もしやと家持 歌綴りを
(おう あったぞ あの頃の橘諸兄もろえ様の歌
 八月 改元の 天平元年(729)か
 なん と 長屋王様事件と 同年ではないか)
  
あかねさす 昼は田びて ぬばたまの よるいとまに めるせりこれ
昼間ひるまには け仕事で いそがして よるひま見付け 摘んだせりやで》
                         ―橘諸兄たちばなのもろえ―(巻二十・四四五五)

大夫ますらをと 思へるものを 大刀たちきて 可尓波かには田居たゐに せりぞ摘みける
《役人の くせしてからに 大刀たちいて かには田んぼで せり摘んだんか》
                         ―薩妙觀せちみょうかん―(巻二十・四四五六)


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■日めくり万葉集Vol・2(019)まかなしみ

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【四月二十一日】放映分

かなしみ ればこと さなへば 心のろに 乗りてかなしも

 《きな児と 共寝たら五月蝿うるさい 寝なんだら 胸が詰って せつてならん》
                          東 歌―(巻十四・三四六六)



【万葉歌みじかものがたり】《よにもたよらに》

 にした恋は 嬉しいが なんぼうても せつないで

いとしあの児と 結ばれしたが
 の不思議さ 結ばれた後
恋しせつい 逢いたい心
逢えば 逢うほど 切なさ募る

芝付しばつきの 御宇良崎みうらさきなる ねつこぐさ 相見ずあらば れ恋ひめやも
御宇良崎みうらさき えるねつこの 草ちゃうが うて共寝んけりゃ 恋焦こがれはせんに》
                          東 歌―(巻十四・三五〇八)
かみ 伊奈良いならの沼の 大藺草おおゐぐさ よそに見しよは 今こそまされ
大藺草おおいぐさ はげしに繁る わしの恋 知る以前まえよりも 今が激しで》
                          東 歌―(巻十四・三四一七)
 柿本朝臣人麻呂歌集に出づ)
足柄あしがりの 安伎奈あきなの山に こ船の しりかしもよ ここばがたに
安伎奈山あきなやま 船ろすんは うしろ引き 朝帰るんも 後髪うしろ引きやで》
                          東 歌―(巻十四・三四三一)
足柄あしがりの 土肥とひ河内かふちに 出づる湯の よにもたよらに 児ろが言はなくに
《足柄の 土肥とひみたい 揺れるな 気持あの児が 持つもんかいな》
                          東 歌―(巻十四・三三六八)
栲衾たくぶすま 白山風しらやまかぜの なへども 子ろが襲着おそきの ろこそしも
《山風が 寒て寝られん あの児欲し あの児の上着うわぎ あるだけしか》
                          東 歌―(巻十四・三五〇九)
かなしみ ればこと さなへば 心のろに 乗りてかなしも
きな児と 共寝たら五月蝿うるさい 寝なんだら 胸が詰って せつてならん》
                          東 歌―(巻十四・三四六六)
昨夜きそこそば 児ろとさしか 雲のうへゆ 鳴き行くたづの 間とほく思ほゆ
昨晩さくばんに 共寝たとこやのに 雲上くもうえの い鶴のや えろ以前まえみたい》
                          東 歌―(巻十四・三五二二)
春へ咲く ふぢ末葉うらばの 心安うらやすに さる夜ぞなき 児ろをしへば
《春来ても 心安らに 寝るない お前思うて 悶々もんもんとして》
                          東 歌―(巻十四・三五〇四)


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■日めくり万葉集Vol・2(018)暁の

2011年06月04日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【四月二十日】放映分

あかときと がらす鳴けど この岡の 木末こぬれうへは いまだ静けし

 《夜明けすぐと がらす鳴くが 山の上 こずえ静かや 夜明よあけまだやで》
                          古歌集―(巻七・一二六三)



【万葉歌みじかものがたり】みしがからに》

誘い の歌に 拒絶の歌に
後朝きぬぎぬ別れ 引き留め歌に
夫浮気の なじりの歌に
果て は歌垣 しくじり歌に

 時に臨みて】
佐伯山さへきやま はな持ちし かなしきが 手をし取りてば 花は散るとも
佐伯さえきやま はな持つ児 え児やで 手ぇつなごかな 花散るやろが》
                          古歌集―(巻七・一二五九)
時ならぬ まだらころも しきか 島の榛原はりはら 時にあらねども
時期じきちゃうが まだらふく 着てみたい はんどき ちがうんやけど》
                          古歌集―(巻七・一二六〇)
(まだ若い おぼこの児やが まあとするか)

道のの くさふか百合ゆりの 花みに みしがからに 妻と言ふべしや
《うちちょっと 百合ゆりばなみたい 微笑わろたけど その気なりなや あつかましいに》
                          古歌集―(巻七・一二五七)
つきくさに ころもむる 君がため まだらころも らむと思ひて
《露草で ふく染めてんや あんたにと まだらふく 作ろともて》
                          古歌集―(巻七・一二五五)
春霞 うへただに 道はあれど 君に逢はむと たもとほ
湧水わきみず場 とおる真っすぐ 道あるが あんたいとて 遠回とまわりで来た》
                          古歌集―(巻七・一二五六)
あかときと がらす鳴けど この岡の 木末こぬれうへは いまだ静けし
夜明けすぐと がらす鳴くが 山の上 こずえ静かや 夜明よあけまだやで》
                          古歌集―(巻七・一二六三)
もだあらじと ことなぐさに 言ふことを 聞き知れらくは しくはありけり
《気まずいと もてなぐさめ うのんを かって聞くん つらいもんやで》
                          古歌集―(巻七・一二五八)
やまもりの 里へかよひし 山道ぞ 茂くなりける 忘れけらしも
やまもりが 里かよとった 山道は ろ繁ったで 道忘わすれたらしな》
                          古歌集―(巻七・一二六一)
(よう来てた あの人んと なごなって仕舞た)

あしひきの 山椿咲く 越え 鹿しし待つ君が いはづまかも
《椿咲く 峰々みねみね越えて 鹿を待つ あんたのうちは かざりの妻か》
                          古歌集―(巻七・一二六二)
(狩りやて よう出掛けるが 嘘ちゃうやろか)

西にしいちに ただ独りでて ならべず 買ひてし絹の あきじこりかも
西にしいち 一人出掛けて うた絹 見比べせんで 買いこのたで》
                          古歌集―(巻七・一二六四)
(歌垣で 見込み違ごたで 良女ええもたのに)


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■日めくり万葉集Vol・2(017)かからんと

2011年06月01日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
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【四月十九日】放映分

かからむと かねて知りせば 大御船おおみふね 泊てしとまりに しめはましを

 《こうなんの 知っとったなら あんたる 場所に標縄しめなわ (悪霊入らんよう)張っといたのに》
                         ―額田ぬかたのおほきみ―(巻二―一五一)




【万葉歌みじかものがたり】き別れなむ》
稀代きだいの英雄 ここに 死す
 に 天智十年(671)十二月三日

大化 の改新の口火を切り
孝徳・斉明朝 皇太子として 実権を掌握しょうあく
豪族による合議体制から 天皇おおきみ中心政治への道筋
内憂ないゆう外患がいかんの日々
白村江はくすきのえの大敗
これ を 機に 近江大津へ 遷都
天智天皇おおきみとして即位
即位 後五年
四十六年 の生涯であった
弟 大海人おおあま皇子おうじとの 確執かくしつ
大海人おおあまが 吉野に隠遁いんとんしたのは 二か月前
大友皇子に 後をたくしたものの
不安に駆られた 臨終りんじゅうであったろう

額田王 は ありし日々を 思い描いていた
大王おおきみとの 日々は わたしの生きた 日々
 が いつも あった

宇治の仮廬かりほ
熟田津にきたつの船出
三輪山 との別れ
蒲生野がもうのの薬狩り
春秋競いのうたげ
もう すだれに吹く風を 待つこともないのだ

かからむと かねて知りせば 大御船おおみふね 泊てしとまりに しめはましを
《こうなんの 知っとったなら あんたる 場所に標縄しめなわ (悪霊入らんよう)張っといたのに》
                         ―額田ぬかたのおほきみ―(巻二―一五一)

鏡山かがみやまの麓 
服喪ふくもの人々が 去っていく
やすみしし わご大君の かしこきや 御陵みはかつかふる 山科やましなの 鏡の山に よるはも のことごと 昼はも 日のことごと のみを 泣きつつありてや 百磯城ももしきの 大宮人おほみやひとは き別れなむ
天皇すめらみことの 墓りと 鏡の山に 集まって 夜昼なしに 泣きつづけ 終わって仕舞しもて みんなぬ 散り散りなって 帰ってく》
                         ―額田ぬかたのおほきみ―(巻二―一五五)

人々の 去るのを見届け 額田王おおきみは 静かに 鏡山をあとにする
その後 額田王おおきみの行方は 定かでない


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