犬養万葉今昔―犬養孝先生著「万葉の旅」を訪ねて

犬養孝先生名著「万葉の旅」記載の万葉故地309箇所を訪ね、先生が撮られれたのと同じ場所に立った写真撮影を目指す紀行。

■日めくり万葉集Vol・2(033)磯の上に

2011年07月30日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【五月十一日】放映分

磯のうへに ふる馬酔木あしびを らめど 見すべき君が 在りと言はなくに

 《岸に咲く 馬酔木あしびの花を りたいと おもても見せる お前は居らん》
                         ―大伯皇女おおくのひめみこ―(巻二・一六六)



【万葉歌みじかものがたり】二上山ふたかみやまを》

夕暮れ迫る磐余いわれの池のほとり
岸辺に 馬酔木あしび 
たわわな房 こうべをたれるかに咲かせている
水面みなもを 二羽の鴨が行く
静かに 広がるみな

 弟も あの鴨を 見たのだろうか
  鴨は いい
  人の世の 定め 知らぬげに)

ももづた  磐余いはれの池に 鳴く鴨を 今日けふのみ見てや 雲隠りなむ
                         ―大津皇子おおつのみこ―(巻三・四一六)
磐余いわれいけ 鳴く鴨見るん 今日だけや 定めやおもて この世を去るか》

 弟の 覚悟は 出来ていたのだ
 こうして 鴨をいつくしむ歌を 残したのだもの)

大伯皇女おおくのひめみこは 西を見上げる
目にうつる あかねに染まる二上ふたかみの山

 弟は どうして あのお山に 移されたの
 仏の教えに言う 西方さいほう浄土じょうどを 望む西の山だから?
 たたりを 恐れた あのお方の お知恵?)

 もう いいの
  私の心では あのお山は お前
  いいわね 大津・・・)
うつそみの 人にある我れや 明日あすよりは 二上山ふたかみやまを 弟世いろせと我が見む
明日あしたから 二上山ふたかみやまを 弟と おもうて暮らそ この世でひとり》
                         ―大伯皇女おおくのひめみこ―(巻二・一六五)
雄岳おだけ雌岳めだけ鞍部くらぶに 赤い日が沈む
墓所はかしょも あけに染まっているに違いない

大伯皇女おおくのひめみこ たたずむかたわら 
馬酔木 の花が 揺れている

磯のうへに ふる馬酔木あしびを らめど 見すべき君が 在りと言はなくに
《岸に咲く 馬酔木あしびの花を りたいと おもても見せる お前は居らん》
                         ―大伯皇女おおくのひめみこ―(巻二・一六六)

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 大津皇子の歌】
たてもなく ぬきも定めず 娘子をとめらが 黄葉もみちばに 霜な降りそね
仙女おとめらが たてよこ糸も しにる 黄葉もみじにしきに 霜りるなよ》
                         ―大津皇子おおつのみこ―(巻八・一五一二)
 懐風藻漢詩(大津皇子)】
天紙風筆画雲鶴 天紙てんしふうひつうんかくを描き
山機霜杼織葉錦 さんそうちょようきんを織る
《大空の紙に  風の筆勢で 雲翔ける鶴を描き》
《山姿のはたに 霜の飛びで 紅葉の錦を織る》



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■日めくり万葉集Vol・2(032)生ける人

2011年07月27日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
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【五月十日】放映分

けるひと つひにも死ぬる ものにあれば この世なるは 楽しくをあらな

 《人何時いつか 死ぬと決まった もんやから 生きてるうちは 楽しゅう過ごそ》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四九)



【万葉歌みじかものがたり】《猿にかもる》

 まあ どう なされたのですか」
散らばる短冊たんざくに あきれかえる 郎女いらつめ
頭を抱える旅人たびとを 覗きこむ
 こんな 朝早くに 珍しいこと
  おや 朝酒ですか?」
 ・・・いや 酒ではない 水じゃ
 たまには 徳利とくり酒坏さかづきから
 酒気さかけを抜いてやろうと 思うたまでじゃ」

あなみにく さかしらをすと酒飲まぬ 人をよく見れば 猿にかも
《ああいやや 酒も飲まんと 偉そうに 言う顔見たら 猿そっくりや》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四四)
 あれ
 これは まさか 筑前ちくぜんさまのことでしょうか
  お気の毒に 猿だなんて
 あのお方 わたくしは 好きですよ
 真面目まじめでいらっしゃる
  お酒飲みの あなたよりもね」
にこりと 微笑ほほえ郎女いらつめに 思わず苦笑した旅人
「では わしも 酒気さかけを抜かねば なるまいて」

あたひ無き たからといふとも 一つきの にごれる酒に あにさめやも
《値付けさえ 出けん高値の 宝より 酒一杯が わしにはえで》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四五)
よるひかる 玉といふとも さけ飲みて 心をるに あにかめやも
夜光やこうだま そんなもんより 酒飲んで さ晴らすが え決まってる》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四六)
世間よのなかの みやびの道に すすしきは ゑひなきするに あるべかるらし
《風流の 道を極めて 澄ますより 酔うて泣くが えのんちゃうか》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四七)
この世にし 楽しくあらばには 虫に烏にも 我れはなりなむ
《この世さえ 楽し出たら 次の世は 虫とか鳥に 成ってもえで》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四八)
けるひと つひにも死ぬる ものにあれば この世なるは 楽しくをあらな
《人何時いつか 死ぬと決まった もんやから 生きてるうちは 楽しゅう過ごそ》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四九)
黙然もだをりて さかしらするは 酒飲みて 酔泣ゑひなきするに なほかずけり
《澄まし込み かしこるより 酒飲んで 泣いてる方が まだ増しちゃうか》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三五〇)

郎女いらつめ やはり 酒じゃ 酒を持て
 徳利とくり酒坏さかづきも しょんぼりしてる」 
笑いをこらえて 酒を運ぶ 郎女いらつめ
そこには 剛毅ごうき旅人たびとが 
あごひげを撫でて 待っていた



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■日めくり万葉集Vol・2(031)若の浦に

2011年07月23日 | 日めくり万葉集
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【五月九日】放映分

わかうらに そでさへ濡れて 忘れ貝 ひりへど妹は 忘らえなくに

 《若浦わかうらで 袖まで濡らし 忘れ貝 ろたがあの児 忘れられんが》
                           ―作者未詳―(巻十二・三一七五)



【万葉歌みじかものがたり】いそ越す波に》

磯を歩けば 波すそ濡らす
がれいやそと 忘れの貝を
拾ろおした袖 波また濡らす
恋し涙が 頬まで濡らす
  
我妹子わぎもこに るとはなしに 荒磯ありそに 我が衣手ころもでは 濡れにけるかも
《妻れん まま過ごした わしの袖 荒磯ありそめぐりで 濡れて仕舞しもたで》
                           ―作者未詳―(巻十二・三一六三)
   
わかうらに そでさへ濡れて 忘れ貝 ひりへど妹は 忘らえなくに
若浦わかうらで 袖まで濡らし 忘れ貝 ろたがあの児 忘れられんが》
                           ―作者未詳―(巻十二・三一七五)
   
わかうらに そでさへ濡れて 忘れ貝 ひりへど妹は 忘れかねつも
若浦わかうらで 袖まで濡らし 忘れ貝 ろたがあの児 忘れ出来んで》
                           ―作者未詳―(巻十二・三一七五 或る本)
   
むろうらの 瀬戸せとさきなる 鳴島なきしまの いそ越す波に 濡れにけるかも
むろの浦 瀬戸せとさきにある 鳴島なきしまの 涙やろうか 波に濡れたで》
                           ―作者未詳―(巻十二・三一六四)
   
あしひきの 山は百重ももえに 隠すとも 妹は忘れじ ただに逢ふまでに
《山々が 幾重いくえかさなり かくしても お前忘れん じかうまでは》
                           ―作者未詳―(巻十二・三一八九)
   
み雪降る こし大山おほやま 行き過ぎて いづれの日にか 我が里を見む
《雪の降る こし大山おおやま 越え行って 何時いつになったら 故郷くに見られんや》
                           ―作者未詳―(巻十二・三一五三)


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■日めくり万葉集Vol・2(030)東の

2011年07月20日 | 日めくり万葉集
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【五月六日】放映分

ひむがしの いち植木うゑきの 木垂こだるまで はずひさしみ うべ恋ひにけり

 《ひがしいち 植えた木の枝 れるまで ずっと逢わんで ほんま恋しで》
                         ―門部王かどべのおおきみ―(巻三・三一〇)



【万葉歌みじかものがたり】まをはやさね》

ひむがしの いち植木うゑきの 木垂こだるまで はずひさしみ うべ恋ひにけり
ひがしいち 植えた木の枝 れるまで ずっと逢わんで ほんま恋しで》
                         ―門部王かどべのおおきみ―(巻三・三一〇)

平城ならの都の にぎわいは 東の市に 見るごと
緑茂れる の下に 出来る黒山 人集ひとだかり 

いとこ 汝背なせの君 りて 物にい行くとは 韓国からくにの 虎といふ神を 生け捕りに つ捕り持ち その皮を たたみし 八重やへたたみ 平群へぐりの山に 四月うづきと 五月さつきとのに 薬狩くすりがり つかふる時に 
《さあさそこなる 立ち会いしゅうよ やすしてるに 出掛でかけはからい(つらい) から韓国からくに そこむ虎の おそろしやつを 八頭やつ生け捕って 皮ぎ取って たたみ(敷物)に作る 山たたなずく 平群へぐりの山で 四月しがつ五月ごがつと もよおしされた 鹿角しかつの取りの 狩行きし折》 
あしひきの この片山かたやまに 二つ立つ いちひもとに 梓弓あづさゆみ 八つ手挟たばさみ ひめかぶら 八つ手挟み 鹿しし待つと 我がる時に さを鹿しかの 立ちなげかく 
《山のふもとの くぬぎ根本ねもと 弓を八つと 鏑矢かぶらや八つ かえこのわし 待ちとこに 牡鹿おじか現れ 嘆きて言うに》  
たちまちに 我れは死ぬべし 大君おほきみに 我れはつかへむ 我がつのは み笠のはやし 我が耳は み墨のつぼ 
《「やがてこのわし られて死ぬる この身なにとぞ 大君もとに わしのこのつの 御笠みかさの飾り この耳どうか すみつぼに」 
我が目らは ますみの鏡 我が爪は み弓の弓弭ゆはず 我が毛らは みふみてはやし 我が皮は み箱の皮に 我がししは みなますはやし 我がきもも みなますはやし 我がみげは みしほのはやし 
《目玉鏡に 爪弓弭ゆみはずに 毛ぇは筆先ふでさき 皮はこおもて 肉ときもとは なますとなして この胃袋は 塩辛しおから材料ねたに》
老いたるやっこ 我が身一つに 七重ななへ花咲く 八重やへ花咲くと まをはやさね まをはやさね
いさらばえし この身であるが ここに死に花 咲かしてつと 声高々たかだかに 奏上そうじょう願う 声高々たかだかに 奏上そうじょう願う」(さあさ立ち会い 買わんか鹿肉にくを)》
                         ―乞食者ほかいびと―(巻十六・三八八五)

 乞食者に関する説】
 一)乞食者(ほかいもの)と読んで
 門付け芸人説から 路上芸人で芸を見せて報酬を得た者
・鹿(蟹)献上人の搬入歌とし 搾取さくしゅに苦しむ民衆に代わり今の世を風刺したとする

 二)乞食者(こつじきもの)と読んで
・宗教者を示し 釈迦の「捨身しゃしん飼虎しこ」(自らの身を捧げ飢えた虎の餌となる)の教えをしめす
の両説があるが 語調・内容の深刻さから街頭市での「物売り口上」とした



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■日めくり万葉集Vol・2(029)家人の

2011年07月13日 | 日めくり万葉集
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【五月五日】放映分

いへびとの 待つらむものを つれもなき 荒磯ありそを巻きて やせる君かも

 《家でみな 待ってるやろに 旅空たびぞらの 荒磯ありそ枕で せてる人よ》
                          作者未詳―(巻十三・三三四一)
   



【万葉歌みじかものがたり】《名だにもらず》

高山やまへだてに 入江を枕
何処どこから来たか る人よ 
名はなんちゅんや る人よ
待つ は妻かや 子供は親は
  
玉桙たまほこの 道にで立ち あしひきの 野行き山行き ただうみの 川行き渡り いさ取り うみでて
《旅に出掛でかけて 道を来て 野ぉを越え来て 山越えて 川を渡って 海路うみじ行く》
吹く風も おほには吹かず 立つ波も のどには立たぬ かしこきや 神の渡りの しき波の 寄する浜辺はまへに 高山たかやまを へだてに置きて 浦ぶちを 枕に巻きて うらもなく やせる君は
《吹き来る風は 並やて 立つ波ひどて 尋常つねい こわ難所なんしょの 待つとこで しきりに波が 寄せる浜 高山やまへだてに 身ィ隠し 入り江枕に せる人》
おもちちが 愛子まなごにもあらむ 若草わかくさの 妻もあらむと いへ問へど いへも言はず 名を問へど 名だにもらず
ははちちとって いとしの子 待ってる妻も あるやろに 家を聞いても 道わん 名前聞いても こたえへん》
ことを いたはしとかも とゐ波の かしこき海を ただ渡りけむ
《誰の約束 気にけて うねりの波の 恐い海 いそぎ無理して たんやろ》
                          作者未詳―(巻十三・三三三九)
  
おもちちも 妻も子どもも 高々たかたかに むと待つらむ 人の悲しさ
 母や父 妻も子供も 首伸ばし 帰り待つのに 悲しいこっちゃ》
                          作者未詳―(巻十三・三三四〇)
   
いへびとの 待つらむものを つれもなき 荒磯ありそを巻きて やせる君かも
《家でみな 待ってるやろに 旅空たびぞらの 荒磯ありそ枕で せてる人よ》
                          作者未詳―(巻十三・三三四一)
   
浦ぶちに やせる君を 今日けふ今日けふと むと待つらむ 妻し悲しも
《入り江はま る人を まだかなと 帰り待ってる 妻可哀想かわいそや》
                          作者未詳―(巻十三・三三四二)
   
浦波うらなみの する浜に つれもなく やせる君が いへ知らずも
《入り江なみ 寄せ来るはまに 一人して せてる人の 帰道みち分かれへん》
                          作者未詳―(巻十三・三三四三)
  


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■日めくり万葉集Vol・2(028)去年の春

2011年07月09日 | 日めくり万葉集
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【五月四日】放映分

去年こぞの春 へりし君に ひにてし 桜の花は 迎へけらしも

 《去年きょねん春 うたあんたを 恋いしたい 迎え咲いたで 桜の花が》
                          作者未詳―(巻八・一四三〇)



【万葉歌みじかものがたり】《にほひはもあなに》
寒さこらえて つつましに咲く
梅花うめに続いて 春いろどるは
ぱっと咲く花 爛漫らんまん
染まる 色香に 浮き立つ心

うちなびく 春きたるらし 山のの とほ木末こぬれの 咲きゆく見れば
《春さかり てるようやで 山間やまあいの 遠く咲く桜花はな 日々ひびえてくで》
                         ―尾張連おわりのむらじ―(巻八・一四二二)
春山の 咲きのををりに 春菜はるな摘む 妹がしらひも 見らくしよしも
春山はるやまの 桜花はなく下で む児 白紐ひも光ってる あぁはるなんや》 
                         ―尾張連おわりのむらじ―(巻八・一四二一)

若宮年魚麻呂わかみやのあゆまろ 口誦こうしょう歌】
娘子をとめらが 插頭かざしのために 風流士みやびをの かづらのためと 敷きませる 国のはたてに 咲きにける 桜の花の にほひはもあなに 
娘子おとめこぞって 髪にす 伊達だてな男が かづらする このもとの 国中くになかに ち咲く花の さくらばな そのえの 見事みごとなことよ》 
                          作者未詳―(巻八・一四二九)
去年こぞの春 へりし君に ひにてし 桜の花は 迎へけらしも
去年きょねん春 うたあんたを 恋いしたい 迎え咲いたで 桜の花が》
                          作者未詳―(巻八・一四三〇)

春雨はるさめの しくしく降るに 高円たかまとの 山の桜は いかにかあるらむ
《春の雨 しきり降ってる 高円たかまどの 桜散らんと まだ有るやろか》
                         ―河辺東人かわべのあずまひと―(巻八・一四四〇)
沫雪あわゆきか はだれに降ると 見るまでに 流らへ散るは 何の花ぞも
沫雪あわゆきが はらはらると 見えるに 吹き散るのんは なんの花やろ》
                         ―駿河釆女するがのうねめ―(巻八・一四二〇)

ぬるむ川辺に 山吹咲いて
 馬酔木あしび花房 たわわと垂れる)

かはづ鳴く 神奈備かむなび川に 影見えて 今か咲くらむ 山吹の花
《今頃は 河鹿かじか鳴く川 神奈備川かんなびに 山吹花やまぶきかげを うつしてるかな》
                         ―厚見王あつみのおおきみ―(巻八・一四三五)
押し照る 難波なにはを過ぎて うちなびく 草香くさかの山を ゆふれに 我が越えれば 山もに 咲ける馬酔木あしびの 悪しからぬ 君をいつしか きて早見む
難波なにわぃを 通り過ぎ 草香くさかの山を 夕暮ゆうぐれに わしが越えよと 来たときに 山道やまみちおおい 咲く馬酔木あしび かんとしたう あのかたに そのうちはよう 逢いたいもんや》
                          作者未詳―(巻八・一四二八)
                            馬酔木=あしび→悪<あ>)


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■日めくり万葉集Vol・2(027)夢の逢ひは

2011年07月06日 | 日めくり万葉集
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【五月三日】放映分

いめあひは 苦しかりけり おどろきて き探れども 手にも触れねば

 《目ぇまし 手探てさぐりしても さわられん 夢でうんは もどかしこっちゃ》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻四・七四一)



【万葉歌みじかものがたり】千引ちびきいはを》

逢えぬ 苦しみ
朝明け と共に 相手を思い
日中ひなか一日 逢わんとの手立てあれこれ
 破れての 落ち込み
日の暮れが さらなる傷心いたみを誘う
延べるとこやみ 浮かぶ面影のらめき
  
いめあひは 苦しかりけり おどろきて き探れども 手にも触れねば
《目ぇまし 手探てさぐりしても さわられん 夢でうんは もどかしこっちゃ》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻四・七四一)
いめにだに 見えばこそあらめ かくばかり 見えずしあるは 恋ひて死ねとか
《せめてもに 夢に出んかと 待ってても 出てえへんの 恋死ね云うことか》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻四・七四九)
かくばかり 面影おもかげのみに 思ほえば いかにかもせむ 人目しげくて
《面影が 浮かび浮かんで 仕様しょうないで どしたらんや 人目いのに》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻四・七五二)
一重ひとへのみ 妹が結ばむ 帯をすら 三重みへ結ぶべく 我が身はなりぬ
《してくれる 帯は一重で ったのに 三重結ぶほど 恋せしたで》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻四・七四二)

人間  追い詰められれば
覚悟 が決まる
 こうなれば もう 逢うしかない
  逢っても逢わなくても 世間は 許さない
 腹をくくるが 上策)
開き直り に 活路を見い出そうとする 家持

恋死こひしなむ そこも同じぞ 何せむに 人目ひとめ他言ひとごと 言痛こちたがせむ
恋死にそやで 他人ひと非難うわさを 逃れと 逢うんめても おんなじこっちゃ》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻四・七四八)
わが恋は 千引ちびきいはを ななばかり 首にけむも 神のまにまに
《かまへんで 千人引きの 石七つ 首掛けるな 苦し恋でも》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻四・七四三)


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■日めくり万葉集Vol・2(026)ほととぎす

2011年07月02日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【五月二日】放映分

霍公鳥ほととぎす 初声はつこゑは 我れにもが 五月さつきの玉に まじへてかむ

 《霍公鳥ほととぎす 初鳴き声を わしにくれ くすだまぜて とおすによって》
                          作者未詳―(巻十・一九三九)



【万葉歌みじかものがたり】何処いづくいへと》

夏の雑歌ぞうかを 仕切るのは はなたちばなと 霍公鳥ほととぎす
た鳴けよ 霍公鳥ほととぎす たちばなはなを 散らし鳴け

 近づくと 気は落ち着かん
懐かし声よ 何時何時いついつ聞ける
 に行こうか 野に出て待とか
やっと 来た来た 早よ声聞かせ

霍公鳥ほととぎす 初声はつこゑは 我れにもが 五月さつきの玉に まじへてかむ
霍公鳥ほととぎす 初鳴き声を わしにくれ くすだまぜて とおすによって》
                          作者未詳―(巻十・一九三九)
  
あさがすみ たなびく野辺のへに あしひきの 山霍公鳥ほととぎす いつか鳴かむ
あさがすみ なびく野原に 山霍公鳥ほととぎす 何時いつ来るやろか 何時いつ鳴くやろか》
                          作者未詳―(巻十・一九四〇)
  
月夜つくよよみ 鳴く霍公鳥ほととぎす 見まくり 我れくされり 見む人もがも
《月んで 鳴く霍公鳥ほととぎす 見とて来た じっくり待つで ひとり来たけど》
                          作者未詳―(巻十・一九四三)
  
くれの 夕闇ゆふやみなるに 霍公鳥ほととぎす 何処いづくいへと 鳴き渡るらむ
えだ茂り 夕闇ゆうやみ迫り 霍公鳥ほととぎす ここやに 何処どこ鳴いとんや》
                          作者未詳―(巻十・一九四八)
  
うれたきや しこ霍公鳥ほととぎす 今こそば 声のるがに 来鳴きとよめめ
《この時に 声らすほど 鳴かんかい あほ霍公鳥ほととぎす 仕様しょうないやっちゃ》
                          作者未詳―(巻十・一九五一)
  
朝霧あさぎりの 八重やへやま越えて 霍公鳥ほととぎす はなから 鳴きて越え
霍公鳥ほととぎす 山多数よけ越えて はなの 野ぉ越えここへ 来たがなやっと》
                          作者未詳―(巻十・一九四五)
  
もとつ人 霍公鳥ほととぎすをや 珍しく 今かが来し 恋ひつつれば
《懐かしい あの霍公鳥ほととぎす いことに 今ここたで 慕うていたら》
                          作者未詳―(巻十・一九六二)


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