犬養万葉今昔―犬養孝先生著「万葉の旅」を訪ねて

犬養孝先生名著「万葉の旅」記載の万葉故地309箇所を訪ね、先生が撮られれたのと同じ場所に立った写真撮影を目指す紀行。

■日めくり万葉集Vol・2(092)夏麻(なつそ)引く

2012年02月29日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【八月二日】放映分

なつ引く 海上うなかみがたの 沖つ
               鳥はすだけど 君はおともせず


                                   

【万葉歌みじかものがたり】箱根 飛び越え》

近江 若狭は 畿内に近い
気楽気持が ただよい見える
東山道とうさんひがし さすがに異郷いきょう
見聞き のすべて 珍し見える

 東山道 近江】
近江あふみの海 港は八十やそち 何処いづくにか 君が舟て 草結びけむ
近江おうみ海 港多数よけある その何処どこに あんた船め 宿してんやろ》
                          ―古集―(巻七・一一六九)
楽浪ささなみの 連庫山なみくらやまに 雲れば 雨ぞ降るちふ 帰り我が背
連庫なみくらの 山くも出たら 雨やう 帰っといでや なぁお前さん》
                          ―古集―(巻七・一一七〇)
大御船おほみふね ててさもらふ 高島の 三尾みをの勝野の なぎさし思ほゆ
《見えてるん 大君おおきみふねの 風待ちの 三尾の勝野の あのなぎさやで》
                          ―古集―(巻七・一一七一)
                        (大君が行幸時に雲の具合で船待ちをした三尾)
何処いづくにか 舟乗りしけむ 高島の 香取かとりの浦ゆ 漕ぎる舟
《あの船は 何処どこの港を 出て来たか 香取かとりの浦を とおり漕ぐんは》
                          ―古集―(巻七・一一七二)
高島の 安曇あど白波は さわけども 我れは家思ふ いほり悲しみ
安曇川あどがわの 白波なみ騒がしが 耳そぞろ わし家恋し 旅さみしいて》
                          ―古集―(巻七・一二三八)

 北陸道 若狭】
若狭わかさなる 三方みかたの海の 浜きよみ い行きかへらひ 見れど飽かぬかも
若狭わかさくに 三方みかたの海は 浜清い 行きつ戻りつ 見きん景色》
                          ―古集―(巻七・一一七七)

 東山道 飛騨】
飛騨ひだ人の 真木まき流すといふ 丹生にふの川 ことかよへど 舟ぞ通はぬ
飛騨人ひだひとが 流す丹生川にうは 瀬ぇはげし 声届くけど 船かよわんで》
                          ―古集―(巻七・一一七三)

 東海道(東) 常陸・下総・相模】
あられ降り 鹿島かしまの崎を 波高み 過ぎてや行かむ 恋しきものを
鹿島かしま崎 波高いから 素通すどおりや 寄って行きたい おもとったのに》
                          ―古集―(巻七・一一七四)
なつ引く 海上うなかみがたの 沖つに 鳥はすだけど 君はおともせず
海上潟うなかみの 沖の砂州さすには 鳥つどい 五月蝿うるさいが あんたおとし》
                          ―古集―(巻七・一一七六)
足柄あしがらの 箱根飛び越え 行くたづの ともしき見れば 大和やまとし思ほゆ
足柄あしがらの 箱根を越えて 鶴行くで 大和こてる わしうらやまし》
                          ―古集―(巻七・一一七五)


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■日めくり万葉集Vol・2(091)天雲を

2012年02月22日 | 日めくり万葉集
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【八月一日】放映分

天雲あまくもを ほろに踏みあだし 鳴神なるかみ
           今日けふまさりて かしこけめやも


 

【万葉歌みじかものがたり】 な踏みそね》

久米広縄ひろつな殿 聞き及びしに 
 そなた いにしえの歌集めに 執心しゅうしんよし
  どうかな 雪の歌 何か ござらぬか」
家持のうながしに 久米広縄ひろつな
されば と かねて用意の歌 披露に及ぶ

大殿おほとのの このもとほりの 雪な踏みそね
 しばしばも 降らぬ雪ぞ 
  山のみに 降りし雪ぞ 
   ゆめ寄るな  人や な踏みそね 雪は

《お屋敷の まわりの雪を 踏まんとき
 滅多めったらん 雪やから
 山しからん 雪やから
  そこのお前ら 近づくな 踏んだらあかん その雪を》
                         ―三形沙弥みかたのさみ―(巻十九・四二二七)

ありつつも し給はむぞ 大殿おほとののこのもとほりの 雪な踏みそね
《いつまでも 見よとなされる 雪なんや 御殿ごてんまわりの 雪踏みないな》
                         ―三形沙弥みかたのさみ―(巻十九・四二二八)

「これなん 藤原房前ふささき様 お召により 三形沙弥殿 お読みの歌 伝えたは 笠子君かさのこぎみ殿」

得意説明の ひろつなに 
家持 たわむれかかる
「さすが ひろつな殿
  それでは 『雪』に似た字に『雷』があるが
  これは どうじゃ 広縄殿」
得たり と 広縄
おそれ多くも その昔 聖武みかどに奉りし 
 犬養命婦みょうぶ(橘三千代)様の御歌」

天雲あまくもを ほろに踏みあだし 鳴神なるかみも 今日けふまさりて かしこけめやも
蹴散けちらして 雲粉にくだく かみなりも 今日の畏怖おそれに 勝つこと出来できん》
                         ―縣犬養三千代あがたいぬかいのみちよ―(巻十九・四二三五)

 では 私めも」
と 遊行女婦うかれめ蒲生がもうも 続ける

天地あめつちの 神は無かれや うつくしき 我が妻さかる 光る神 鳴りはた娘子をとめ たづさはり 共にあらむと 思ひしに こころたがひぬ 
《この天地 神さんほんま らんのか あいらし妻は 死んで仕舞た 光る娘子おとめの 可愛かわい児と 手ぇたずさえて 生きてこと おもてたのんに ごて仕舞た》
言はむすべ すべ知らに 木綿ゆふたすき 肩に取りけ 倭文しつぬさを 手に取り持ちて なけそと 我れは祈れど きて寝し 妹が手本たもとは 雲にたなびく
《言うもるんも からんで 木綿もめんたすきを 肩掛けて 倭文しつぬのぬさ 手に持って ってれなと 祈ったが 手枕てまくら巻いて 共寝た妻は 雲になったか なびいておるよ》
                          ―作者未詳―(巻十九・四二三六)
うつつにと 思ひてしかも 
いめのみに 手本巻き寝と 見ればすべなし

《生きてこそ 意味あるのんに ゆめなかで 手枕てまくら共寝ても 甲斐かいないこっちゃ》
                          ―作者未詳―(巻十九・四二三七)


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■日めくり万葉集Vol・2(090)潮満たば

2012年02月18日 | 日めくり万葉集
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【七月二十九日】放映分

潮満たば いかにせむとか
          海神わたつみの 神が手渡る 海人あま娘子をとめども


 

【万葉歌みじかものがたり】糸鹿いとかの山の》

 なし国の 大和の人は
ひらけ明るい 紀伊きのくに海に
あこがれ来ては 嬉々ききして遊ぶ
めぐって 南紀に出れば
黒潮おどり 岩礁いわ噛む波頭はとう

 南海道 紀伊(紀ノ川河口周辺)】
藻刈もかり舟 沖漕ぎらし 妹が島 形見かたみの浦に たづかける見ゆ
いもしまの 形見かたみの浦で 鶴飛ぶよ 沖でりの 船漕いでんや》
                             ―古集―(巻七・一一九九)
玉津島たまつしま よく見ていませ 青丹あをによし 奈良なる人の 待ちはばいかに
《景色え 玉津の島を う見とき 奈良で待つ人 聞くかも知れん》
                             ―古集―(巻七・一二一五)
玉津島たまつしま 見てしよけくも 我れはなし 都に行きて 恋ひまく思へば
《玉津島 景色見てても うれしない なら帰ったら 焦がれるよって》
                             ―古集―(巻七・一二一七)
名草山なぐさやま ことにしありけり が恋ふる 千重ちへ一重ひとへも なぐさめなくに
名草なぐさ山 名ぁばっかしや うちの恋 千の一つも なぐさ出来できん》
                             ―古集―(巻七・一二一三)

 南海道 紀伊(有田川河口近辺)】
安太あだへ行く 小為手をすての山の 真木まきの葉も 久しく見ねば 苔にけり
安太あだへ行く 途中小為手おすての 山の樹々きぎ ご見んうちに 苔してるで》
                             ―古集―(巻七・一二一四)
足代あて過ぎて 糸鹿いとかの山の さくらばな 散らずもあらなむ 帰りるまで
足代あてとおり 糸我いとが峠の 桜花はな綺麗きれえ 散らんといてや わし帰るまで》
                             ―古集―(巻七・一二一二)
潮満たば いかにせむとか 海神わたつみの 神が手渡る 海人あま娘子をとめども
《潮ちて 来たらどすんや 海人あま娘子おとめ そんなあぶない 岩礁いわばって》
                             ―古集―(巻七・一二一六)

 南海道 紀伊(南紀)】
風早かざはやの 三穂みほ浦廻うらみを 漕ぐ舟の 舟人ふなびとさわく 波立つらしも
《風早い 三穂みほうらとおる 船の上 みなあわてとる 波たんやで》
                             ―古集―(巻七・一二二八)
磯に立ち 沖辺おきへを見れば 藻刈めかぶね 海人あま漕ぎらし 鴨かける見ゆ
《磯立って 沖の見たら 鴨ぶよ りの漁師 船したらし》
                             ―古集―(巻七・一二二七)
荒磯ありそゆも まして思へや 玉の浦 離れ小島こしまの いめにし見ゆる
荒磯ありそより え思うんか 玉浦の 離れ小島が 夢出てんは》
                             ―古集―(巻七・一二〇二)
三輪みわの崎 荒磯ありそも見えず 波立ちぬ 何処いづくゆ行かむ き道はなしに
三輪みわの崎 磯見えんほど 波立つよ どない行くんや みちいで》
                             ―古集―(巻七・一二二六)

 




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■日めくり万葉集Vol・2(089)梓弓

2012年02月15日 | 日めくり万葉集
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【七月二十八日】放映分

梓弓あづさゆみ 引きみゆるへみ
        ずはず そをなぞ ずはばそを


 

【万葉歌みじかものがたり】ずはばそを》

ねる女は わずらわしいで
軽く あしらう 男も悪い
女気持ちを もてあそぶんか
もしやあの人 離れんちゃうか

あひ思はず 君はあるらし ぬばたまの いめにも見えず うけひてれど
《うちのこと おもとらんのや 夢さえも 出てもんがな ごうて寝るに》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五八九)
  
梓弓あづさゆみ 引きみゆるへみ ずはず そをなぞ ずはばそを
れん どっちやねんな はっきり 来るなら来ると んならんと ― 弓を引いたり ゆるめたりして》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六四〇)
  
つきくさの れるいのちに ある人を いかに知りてか のちも逢はむと言ふ
ひといのち かりのもんやと 知っとって うたんかいな その内またて》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七五六)
  
三島江みしまえの 入江のこもを 刈りにこそ 我れをば君は 思ひたりけれ
《三島江の こも刈るんや ないけども うちを思たん 仮初かりそめなんか》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七六六)
                                  (り→仮初かりそめ)

手作てづくりを 空ゆ引き越し とほみこそ 目言めことるらめ 絶ゆとへだてや
《遠くり うもはなすも へんが 離れ別れよ 思てやいな》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六四七)
                        (手作り布を高くさらす空が遠い)

波のゆ 見ゆるしまの 浜久木はまひさぎ 久しくなりぬ 君に逢はずして
ひさし なって仕舞しもたで わんまま あんた小島の 浜の久木ひさぎか》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七五三)
                                     (久木ひさきひさしく)


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■日めくり万葉集Vol・2(088)我のみや

2012年02月08日 | 日めくり万葉集
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【七月二十七日】放映分

我れのみや ふねは漕ぐと 思へれば
             おきかたに かじおとすなり


 

【万葉歌みじかものがたり】ふねは漕ぐと》

夜の航行ふなゆき 行かぬがつね
 の明かりに 誘われしたか
船は長門ながとの 浦漕ぎ出して
る海に 漁火いさりびとも

つくよみの 光りをきよみ 夕凪ゆふなぎに 水手かこの声呼び 浦廻うらまぐかも
《月綺麗きれえ 光さやかや 夕凪に 声掛けうて 浦漕いでくで》
                          ―遣新羅使人―(巻十五・三六二二)
山のに 月傾けば いざりする 海人あまともし 沖になづさふ
《山のはし 月かってる りする 漁師の漁火ぃが 沖見えかくれ》
                          ―遣新羅使人―(巻十五・三六二三)
我れのみや ふねは漕ぐと 思へれば おきかたに かじおとすなり
《わしらだけ 夜船よぶね漕ぐかと 思うたら はるかな沖で 楫音かじおとしとる》
                          ―遣新羅使人―(巻十五・三六二四)

波音なみおと立てず 漕ぎゆく船は
 の明かりを 頼りて進む
静寂しじま引き連れ ただよい行けば
古挽歌こばんか使い 一人寝嘆く

ゆふされば 葦辺あしへさわき 明ければ 沖になづさふ 鴨すらも 妻とたぐひて 我が尾には 霜なりそと 白栲しろたへの はねさしへて 打ちはらひ さとふものを 
《夕方葦辺あしべ 鳴き立てて 朝方あさがた沖で ただよてる 鴨かてつがい 一緒り 霜よ着くなと っぽを 互い重ねて 払い合い ねむりに着くと うのんに》
く水の かへらぬ如く 吹く風の 見えぬが如く あとも無き 世の人にして 別れにし 妹が・・・
《流れる水が 戻らんと 吹く風には 見えんに 何も残らん 人の世で 死に別れした わしの妻・・・》 
・・・別れにし 妹が着せてし ごろも 袖片敷そでかたしきて 一人かも
《・・・別れ旅来た わしの妻 その妻着せた ごろも 袖を枕に 一人か》
                         ―丹比大夫たぢひのまえつきみ―(巻十五・三六二五)
たづが鳴き 葦辺あしへをさして 飛び渡る あなたづたづし 一人されば
《葦辺へと 鶴鳴きながら 飛ぶ声が 一人寝てると わびしてならん》
                         ―丹比大夫たぢひのまえつきみ―(巻十五・三六二六)


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■日めくり万葉集Vol・2(087)もののふの

2012年02月04日 | 日めくり万葉集
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【七月二十六日】放映分

もののふの 八十やそがはの 網代あじろに いさよふ波の ゆくへ知らずも

 

【万葉歌みじかものがたり】志賀津しがつの子らが》

(あの日の湖畔こはん さざ波が光っていた
 出仕しゅっしして まだ日も浅い 近江おうみの宮
 何知らぬ 若僧わかぞうに 絢爛きらきらしい宮であった
 それにも増して 遠くにちらと見た 采女うねめ
 あぁ吉備津きびつの采女
 美麗きらきらしい限りであった)

秋山の したへるいも なよ竹の とをよる子らは いかさまに 思ひれか たくなはの 長きいのちを 
《秋の黄葉もみじが 照るようで しなやか竹の ような児が 何を思たか 分からんが はかのうなって たんや》 
露こそば あしたに置きて ゆふへは ゆといへ 霧こそば ゆふへに立ちて あしたは すといへ
《露うのんは 朝結び 夕方なると 消えるう 霧言うもんは 夕方ばん立って 朝来た時に 消えて仕舞う》 
あづさゆみ おと聞くわれも おほに見し ことくやしきを 敷栲しきたへの 手枕たまくらまきて つるぎ大刀たち 身にけむ 若草の そのつまの子は 
《あの児評判うわさは 聞いてたが 気に留めせんと ったんや 手枕てまくらて 仲うに 並んで寝てた 連れ合いは》 
さぶしみか 思ひてらむ くやしみか 思ひ恋ふらむ 時ならず 過ぎにし子らが 朝露あさつゆのごと 夕霧ゆふきりのごと
さみしゅう思て 寝てんかな くやしゅう思て 偲ぶんか 寿命じゅみょう待たんと 死んだ児は まるで朝露 夕霧や》
                          ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻二・二一七)
楽浪ささなみの 志賀津しがつの子らが まかの 川瀬かはせの道を 見ればさぶしも
楽浪さざなみの 滋賀しがのあの児が 水死んだ云う 川の瀬の道 見てたらさみし》
                          ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻二・二一八)
そらかぞふ 大津おほつの子が 逢ひし日に おほに見しかば 今ぞくやしき
《大津の児 気にもめんと 見てた日が 今となったら 悔しでしきり》
                          ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻二・二一九)

いにしえ思う人麻呂
ぎるは キラキラしい 宮 采女うねめ

楽浪ささなみの 比良ひら山風の 海吹けば りする海人あまの そで返る見ゆ
比良山ひらやまの 吹き下ろし風 うみに吹き 漁師りょうしの袖が ひるがえっとる》【槐本つきもとの歌一首】
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻九・一七一五)
もののふの 八十やそがはの 網代あじろに いさよふ波の ゆくへ知らずも
《宇治川の 網代あじろの木ぃに 寄る波は よどみたゆたい 何処どこ行くんやろ》
                          ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・二六四)
いもらがり 今木いまきみねに 茂り立つ つま松の木は ふるひと見けむ
今木いまきみね 枝葉えだはしげらし 立つ松を むかしの人も 見たんやろうか》
                        ―作者未詳(人麻呂作?)―(巻九・一七九五)
                        (宇治若郎子うじのわかいらつこ-仁徳異母弟-の宮処〈宇治〉にて)

懐古かいこ感懐かんかい胸底むなそこに秘め 人麻呂は 帰路きろを辿る


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■日めくり万葉集Vol・2(086)この世にし

2012年02月01日 | 日めくり万葉集
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【七月二十五日】放映分

この世にし 楽しくあらばには 虫に烏にも 我れはなりなむ

 

【万葉歌みじかものがたり】《猿にかもる》

 まあ どう なされたのですか」
散らばる短冊たんざくに あきれかえる 郎女いらつめ
頭をかかえる旅人たびとを 覗きこむ
 こんな 朝早くに 珍しいこと
  おや 朝酒ですか?」
 ・・・いや 酒ではない 水じゃ
 たまには 徳利とくり酒坏さかづきから
 酒気さかけを抜いてやろうと 思うたまでじゃ」

あなみにく さかしらをすと 酒飲まぬ 人をよく見れば 猿にかも
《ああいやや 酒も飲まんと 偉そうに う顔見たら 猿そっくりや》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四四)
 あれ
 これは まさか 筑前ちくぜんさまのことでしょうか
  お気の毒に 猿だなんて
 あのお方 わたしは 好きですよ
 真面目まじめでいらっしゃる
  お酒飲みの あなたよりもね」
にこりと 微笑ほほえ郎女いらつめに 思わず苦笑した旅人
「では わしも 酒気さかけを抜かねば なるまいて」

あたひ無き たからといふとも 一つきの にごれる酒に あにさめやも
《値けさえ 出ん高値の 宝より 酒一杯が わしにはえで》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四五)
よるひかる 玉といふとも さけ飲みて 心をるに あにかめやも
夜光やこうだま そんなもんより 酒飲んで さ晴らすが え決まってる》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四六)
世間よのなかの みやびの道に すすしきは ゑひなきするに あるべかるらし
《風流の 道を極めて 澄ますより 酔うて泣くが えのんちゃうか》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四七)
この世にし 楽しくあらばには 虫に烏にも 我れはなりなむ
《この世さえ 楽し出たら 次の世は 虫とか鳥に 成ってもえで》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四八)
けるひと つひにも死ぬる ものにあれば この世なるは 楽しくをあらな
《人何時いつか 死ぬと決まった もんやから 生きてるうちは 楽しゅう過ごそ》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四九)
黙然もだをりて さかしらするは 酒飲みて 酔泣ゑひなきするに なほかずけり
《澄まし込み かしこるより 酒飲んで 泣いてる方が まだ増しちゃうか》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三五〇)

郎女いらつめ やはり 酒じゃ 酒を持て
 徳利とくり酒坏さかづきも しょんぼりしてる」 
笑いをこらえて 酒を運ぶ 郎女いらつめ
そこには 剛毅ごうき旅人たびとが 
あごひげを撫でて 待っていた


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