犬養万葉今昔―犬養孝先生著「万葉の旅」を訪ねて

犬養孝先生名著「万葉の旅」記載の万葉故地309箇所を訪ね、先生が撮られれたのと同じ場所に立った写真撮影を目指す紀行。

■日めくり万葉集Vol・2(222)酒坏に

2013年10月19日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【二月十五日】放映分
酒杯さかづきに 梅の花け 思ふどち 飲みてののちは 散りぬともよし
梅花うめはなを 酒杯さかづき浮かべ 友同士どうし 飲んで仕舞しもたら 散ってもえわ》
                         ―大伴坂上郎女おおとものさかのうえのいらつめ―(巻八・一六五六)


【万葉歌みじかものがたり】飲みてののち

坂上郎女いらつめは 厳しい説諭せつゆを受けていた
一同集められての訓戒くんかいあと
 大伴家本流は 今や 佐保大納言家 
 跡取りは家持やかもちじゃ
 しかるに いまだ若年 後ろだてとて思うに任せず
 老いけたわしでは 如何いかんとも し難い
  頼むは そなたじゃ
 今後の 家刀自いえとじの役目 そなたに託す
 しかるべき人物とのよしみ築き
 一族をたばねることが肝要ぞ」
石川内命婦いしかわのうちみょうぶの言葉に 身を固くする郎女

 先ず 一族融和を図らねば)
佐保 大納言邸 
連日の 一族結束はかりのうたげ
仕切るは 家刀自坂上郎女いらつめ

「さあ 皆の者 うたげじゃ えんじゃ 
 一族縁者えんじゃの 固めのえんじゃ」
軽口を 飛ばして 郎女がうた

かくしつつ  遊び飲みこそ 草木すら 春は咲きつつ 秋は散りゆく
《草木かて 春に花咲き 秋は散る 飲んで遊んで たのしに暮らそ》
                         ―大伴坂上郎女おおとものさかのうえのいらつめ―(巻六・九九五)

(そうそう 大宰府での 梅花うめはなうたげにあったぞ
 『酒杯さかづき梅』に 『散りぬともよし』)

酒杯さかづきに 梅の花け 思ふどち 飲みてののちは 散りぬともよし
梅花うめはなを 酒杯さかづき浮かべ 友同士どうし 飲んで仕舞しもたら 散ってもえわ》
                         ―大伴坂上郎女おおとものさかのうえのいらつめ―(巻八・一六五六)
つかさにも 許したまへり 今夜こよひのみ 飲まむ酒かも 散りこすなゆめ
《おかみかて かめへんてる 宴会や 酒のみ明かそ 散りなや梅花うめよ》
                         ―こたふる人―(巻八・一六五七)
(よしよし 風紀紊乱びんらんにより 宴酒うたげざけは禁じられておるが 身内酒は 許されておる)

 駿河麻呂殿
 そなた 家持やかもちと同じ年ごろ
 友に 見込みある人物もの 誰ぞあるか
  後ろ盾無き家持のため 友を選んでおきたい」
「それならば 似つかわしい御仁ごじんが 
 葛城王かつらぎおう(後の橘諸兄たちばなのもろえ)の御子息 奈良麻呂殿
 若年ながら 才気さいき煥発かんぱつ人物ひと
 おお 橘三千代様のお孫か 高みじゃのう」
「何を 小母おば様なら
  虎穴に入らずんばですよ」

山守やまもりの ありける知らに その山に しめひ立てて ひのはぢしつ
《山番が るの知らんと 山はいり しるしして仕舞て 恥じかいたがな》
                         ―大伴坂上郎女おおとものさかのうえのいらつめ―(巻三・四〇一)
山主やまもりは けだしありとも 我妹子わぎもこが ひけむしめを 人かめやも
《山番が ってもえで あんた来て 付けたしるしや 誰ほどくかい》
                         ―大伴駿河麻呂おおとものするがまろ―(巻三・四〇二)



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【古事記ものがたり】への誘い
古事記編纂1300年を期し 一大叙事詩を作ってみました
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■日めくり万葉集Vol・2(221)一世には

2013年10月16日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【二月十四日】放映分
一世ひとよには 二遍ふたたび見えぬ 父母ちちははを 置きてや長く が別れなむ
《この世では もう会われへん ととかか 残してくか あの世へひとり》
                    ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻五・八九一)
【万葉歌みじかものがたり】みやこを見むと

肥後国ひごのくに益城郡ましきのこおりの国司の使い 
筑前国府へ突然のおとな
相撲使すもうづかいとして 都のぼりの途上 
若い従者 大伴君熊凝おおとものきみくまこり急死
親元 への 急ぎ使いに 馬をとの要請
一部始終を聞き 熊凝くまこりの心を 思いる 憶良

うち日さす 宮へのぼると 垂乳たらちしや 母が手はなれ つね知らぬ 国の奥処おくかを 百重山ももへやま 越えて過ぎ行き 何時いつしかも みやこを見むと 思ひつつ 語らひれど 
《花の都へ 行くんやと 恋しおんと 別れ来て 知らへん国の 奥深う 山を多数なんぼも 越えて来て その内みやこ 見られると うてみんなと 来たけども》
おのが身し いたはしければ 玉桙たまほこの 道の隈廻くまみに 草手折たをり 柴取り敷きて とこじもの うちして 思ひつつ 嘆きせらく 
《折り悪る病気 なって仕舞て 道端そばで 草や柴 敷いて作った 仮のとこ 倒れ伏し寝て あぁあ言て 横なったまま 思うんは》
国に在らば 父取り見まし 家に在らば 母取り見まし 世間よのなかは かくのみならし いぬじもの 道にしてや いのちぎなむ
故郷くにったら おっあん 家ったなら おっさん 枕そば来て 看取みとるのに ままにならんと 道のはた ここで死ぬんか 犬みたい》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻五・八八六)

たらちしの 母が目見ずて おほほしく 何方いづち向きてか が別るらむ
かあちゃんに 会わんとくか 鬱々うつうつと 何処どこどないして 行ったらんや》
常知らぬ 道の長手ながてを くれくれと 如何いかにか行かむ かりては無しに
《行ったこと い道続く あの世旅 食糧めしも持たんと どないに行くか》
家に在りて 母が取りば 慰むる 心はあらまし 死なば死ぬとも
《家って お看取みとって くれるなら 例え死んでも くやまへんのに》
出でて行きし 日を数へつつ 今日けふ今日けふと を待たすらむ 父母ちちははらはも
《出てからも 今か今かと 指折って 待ってるやろな おとうとおかあ
一世ひとよには 二遍ふたたび見えぬ 父母ちちははを 置きてや長く が別れなむ
《この世では もう会われへん ととかか 残してくか あの世へひとり》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻五・八八七~八九一)

子煩悩こぼんのう憶良に 他人ひとの身とも思えぬ 痛みが走る
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大伴君熊凝おおとものきみくまこりの歌二首】
くに遠き 道の長手ながてを おほほしく 今日けふや過ぎなむ ことどひもなく
故郷くにとおに 来た道中どうちゅうで 心細さみしいに 今日死ぬのんか 親声こえ聞かんまま》
                         ―麻田陽春あさだのやす―(巻五・八八四)
朝露あさつゆの やすきが身 他国ひとくにに 過ぎかてぬかも 親の目を
朝露つゆみたい 消えて仕舞うんか たびぞらで 死ぬに死ねんが 親いとうて》
                         ―麻田陽春あさだのやす―(巻五・八八五)




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■日めくり万葉集Vol・2(220)夕闇は

2013年10月05日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
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【二月十三日】放映分
夕闇ゆふやみは 道たづたづし 月待ちて ませ我が背子 そのにも見む
夕闇ゆうやみは 道あぶないで 月のを 待ったらやん それまでって》
                         ―豊前國娘子ぶぜんのくにのおとめ大宅女おおやけめ―(巻四・七〇九)


【万葉歌みじかものがたり】道たづたづし

日暮れ 来たなら あの人恋し
されど 闇夜は 逢うことできん
今宵 月夜は せめても機会
 よ明こ照れ 雲隠すなよ

 夜目に遠目に 傘の内かな)
み空行く 月の光に ただいち 相見あひみし人の いめにし見ゆる
月明つきあかり したでちらっと 見た人が 夢て来たわ なんでやろうか》
                         ―安都扉娘子あとのとびらおとめ―(巻四・七一〇)

 お前訪ねる 夜道は暗い
 月よ照らせよ この足もとを)

倉橋くらはしの 山を高みか ごもりに る月の かたかた
倉橋くらはしの 山高いんで 月るん おそて待っても 待ち切れんがな》
                         ―沙弥女王さみのおおきみ―(巻九・一七六三)
倉橋の 山を高みか ごもりに る月の 光ともしき
倉橋くらはしの 山高いんで 月出るん おそてなんやら 薄暗うすぐらいがな》
                         ―間人大浦はしひとのおおうら―(巻三・二九〇)
あまの原 け見れば 白真弓しらまゆみ 張りてけたり 夜道よみちけむ
あおいだら 弓張ったな 月出てる 夜道歩くに 大助かりや》
                         ―間人大浦はしひとのおおうら―(巻三・二八九)
らが家道いへぢ ややどほきを ぬばたまの 渡る月に きほひあへむかも
《あの児いえ ちょっと遠いが この月が 照ってるぁに 着けるやろうか》
                         ―阿倍広庭あべのひろにわ―(巻三・三〇二)
しきやし ちかき里の 君むと おほのびにかも 月の照りたる
ちこに住む あんたるのん わかるんか くまう月が 照っとおるがな》(女歌?男友?)
                         ―湯原王ゆはらのおおきみ―(巻六・九八六)

(待つは長いが 逢瀬おうせは早い
 せめても少し うちそば居って)

夕闇ゆふやみは 道たづたづし 月待ちて ませ我が背子 そのにも見む
夕闇ゆうやみは 道あぶないで 月のを 待ったらやん それまでって》
                         ―豊前國娘子ぶぜんのくにのおとめ大宅女おおやけめ―(巻四・七〇九)
雲隠くもがくり 行方ゆくえみと が乞ふる 月をや君が 見まくりする
雲隠くもかくれ そのまま居って 思う月 あんた出て欲し 思とんのんか》
                         ―豊前国娘子ぶぜんのくにのおとめ―(巻六・九八四)

(鳴いてくれるな 夜明けのかけよ)
あます 月読つくよみ壮士をとこ まひむ 今夜こよひの長さ 五百いほ継ぎこそ
てんで照る おっ月さんよ 礼するで 五百ごひゃくばいして 今夜こんやの長さ》
                         ―湯原王ゆはらのおおきみ―(巻六・九八五)



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■日めくり万葉集Vol・2(219)住吉の

2013年10月02日 | 日めくり万葉集
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【二月十日】放映分
住吉すみのえの 粉浜のしじみ 開けも見ず こもりてのみや 恋ひ渡りなむ
からめた 粉浜シジミの 貝みたい わしめ恋を し続けるんか》
                          ―作者未詳―(巻六・九九七)

【万葉歌みじかものがたり】清き浜廻はまび
天平 六年(734)春三月
難波宮行幸みゆき
歌の みなもと訪ねの旅から戻った 赤人
久方ぶり の 従賀であった
この 行幸では
みかどからの 儀礼歌の お召しはなかった
従賀人じゅうがひとそれぞれの 楽しみ 
それ が 新しい行幸の姿となりつつある

大夫ますらをは 御狩みかりに立たし 娘子をとめらは 赤裳あかもすそ引く 清き浜廻はまび
廷臣おとこらは 狩りに行ったで 女官おとめらは 赤い裳裾すそ引き 浜辺遊びや》
                         ―山部赤人やまべのあかひと―(巻六・一〇〇一)

住吉すみのえの 粉浜のしじみ 開けも見ず こもりてのみや 恋ひ渡りなむ
からめた 粉浜シジミの 貝みたい わしめ恋を し続けるんか》
                          ―作者未詳―(巻六・九九七)

まよごと 雲居くもゐに見ゆる 阿波あはの山 けて漕ぐ舟 とまり知らずも
《眉のな 雲の向こうの 阿波山あわやまを 目指し漕ぐ舟 何処どこ泊まるやろ》
                         ―ふなのおおきみ―(巻六・九九八)

茅渟廻ちぬみより 雨ぞ降りる 四極しはつ海人あま 網手あみてしたり 濡れにあへむかも
茅渟浦ちぬらから 雨降ってきた 干したある 四極しはつ漁師の 網大丈夫ええやろか》
                         ―守部王もりべのおおきみ―(巻六・九九九)

子らしあらば 二人聞かむを 沖つに 鳴くなるたづの あかときの声
ったなら おまえと二人 聞けるのに 沖鳴く鶴の 夜明けの声を》
                         ―守部王もりべのおおきみ―(巻六・一〇〇〇)

馬のあゆみ おさとどめよ  住吉すみのえの 岸の埴生はにふに にほひて行かむ
手綱たづな引き 馬止めてんか 住吉の 岸の埴生はにゅうを ふく付けてくに》
                         ―安倍豊継あべのとよつぐ―(巻六・一〇〇二)

しんへの近づきが
ていへの うやまいを深める
今日の行幸に 春の長閑のどかさが加わり
従駕人じゅうがひとの歌に 伸びやかな 明るさが宿る





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