犬養万葉今昔―犬養孝先生著「万葉の旅」を訪ねて

犬養孝先生名著「万葉の旅」記載の万葉故地309箇所を訪ね、先生が撮られれたのと同じ場所に立った写真撮影を目指す紀行。

■日めくり万葉集Vol・2(203)常磐なす

2013年05月29日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【一月十九日】放映分

常磐ときはなす かくしもがもと 思へども 世の事なれば とどみかねつも
何時いつまでも 元気りたい 思うても これが定めや 老いめられん》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻五・八〇五)

【万葉歌みじかものがたり】老男およしをは》
我にかえった憶良
 この歳になって なにを 青いこと
 昔の夢を いつまで だかえているのか
 人の世を 渡ってきた者としての 老成ろうせいの歌を うたってみねば・・・)

世間よのなかの すべなきものは 年月は 流るる如し 取りつつき 追ひるものは 百種ももくさに め寄りきた
《人の世んは ままらん 月日つのん あっゅう間 追い来る老いは 次々と あの手この手で 攻め寄せる》
少女をとめらが 少女をとめさびすと からたまを 手本たもとかし 同輩児よちこらと たづさはりて 遊びけむ 時の盛りを とどみかね すぐりつれ みなわた かぐろき髪に 何時いつか しもの降りけむ くれなゐおもての上に 何処いづくゆか しわきたりし 
《若さはなやぐ 少女むすめらが からたま巻いて 身ぃ飾り 仲好し同士 手ぇつなぎ たわむれ遊ぶ 盛りどき またたく間ぁに 過ぎて仕舞て みどり黒髪 白髪しらが生え 綺麗きれえな顔に しわ増える》
大夫ますらをの 男子をとこさびすと つるぎ大刀たち 腰に取りき 猟弓さつゆみを にぎり持ちて 赤駒に くらうち置き ひ乗りて 遊びあるきし 世間よのなかや つねにありける 
《男盛りを 自慢げに 刀や大刀たちを 腰差して 狩りする弓を 手に持って 馬に鞍置き け乗って 遊び回って れる日々 何時いつまで続く 訳はない》
少女をとめらが さす板戸を 押し開き い辿たどり寄りて 玉手たまでの 玉手さしへ さの 幾許いくだもあられば 
少女むすめら休む 部屋の戸を 押し開け忍び 探り寄り 腕巻き抱いて 寝る夜は 長ごう続かん そのうちに》
つかづゑ 腰にたがねて か行けば 人にいとはえ かく行けば 人ににくまえ 老男およしをは かくのみならし たまきはる 命惜しけど せむすべも無し
《手にした杖を 腰に当て あっちへ行って うとまれて こっち来たなら 嫌われる 年取るんは そんなもん 生きてる限り 仕様しょうがない》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻五・八〇四)

常磐ときはなす かくしもがもと 思へども 世の事なれば とどみかねつも
何時いつまでも 元気りたい 思うても これが定めや 老いめられん》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻五・八〇五)

そこには まだ あきらめきれない 憶良がいた

                         (嘉摩かま三部作の三)

 




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■日めくり万葉集Vol・2(202)天の海に

2013年05月25日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
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【一月十八日】放映分
あめの海に 雲の波立ち 月の舟 星の林に ぎ隠る見ゆ
天海てんうみや 雲は波やで つきふねや ほしはやしやで ぐのん見える》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一〇六八)

【万葉歌みじかものがたり】神代かみようらめし》

舞台天上てんじょう 地上は桟敷さじき 待つは一年ひととせ 上演一夜ひとよ
七夕たなばた劇の 幕引き上がる 固唾かたず見守る 一幕ひとまく浪漫ろまん

【地上】七夕たなばた待って 夢せ仰ぐ

あめの海に 雲の波立ち 月の舟 星の林に ぎ隠る見ゆ
天海てんうみや 雲は波やで つきふねや ほしはやしやで ぐのん見える》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一〇六八)
赤らひく 色ぐはし子を しば見れば 人妻ゆゑに れ恋ひぬべし
ほおこて 色っぽい織姫ひと 見てると 彦星だんなるのに 惚れて仕舞しまうで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・一九九九)
夕星ゆふつつも かよ天道あまぢを 何時いつまでか あふぎて待たむ 月人つきひと壮士をとこ
明星みょうじょうも かよそらみち 仰ぎ見て どんだけ待つか 彦星ひこぼしさんよ》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇一〇)

【天上】悲し定めと あきらめおれど

天の川 やす川原かはらの 定まりて 心きほへは ぎて待たなく
《その昔 安の川原で 隔てられ 心逢いとて 辛抱しんぼうできん》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇三三)
ひさかたの あましるしと し川 へだてて置きし 神代かみようらめし
空中そらなかの 目印めじるし仕様しょうと 枯れ川を 造り隔てた 神代恨むわ》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇〇七)
八千桙やちほこの 神の御代みよより ともしづま 人知りにけり ぎてし思へば
《神代から 滅多めった逢われん 妻として 知れ渡っとる い恋や》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇〇二)
天地あめつちと 別れし時ゆ おのが妻 しかれてあり 秋待つ我れは
 あの子とは 天地別れた 昔から 離れとるんで 秋待っとんや》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇〇五)
万代よろづよに 照るべき月も 雲隠くもがくり 苦しきものぞ 逢はむと思へど
何時いつも照る 月に雲出て ままならん うちらもやで 逢いたいのんに》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇二五)

【天上】相手気に掛け 思いは募る 

がためと 織女たなばたつめの そのやどに 白栲しろたへは りてけむかも
《わしのため 織姫おりひめいえで る布は もう仕上がって 仕舞しもたやろうか》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇二七)
いにしへゆ げてしはたも かへりみず 天の川津かはつに 年ぞにける
往古むかしから り続けた っぽって 岸辺たたずみ 一年った》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇一九)
君に逢はず 久しき時ゆ はたの 白栲しろたへごろも 垢付あかづくまでに
《逢わんまま 長い月日に 織った布 日ぃったんで あか付いて仕舞た》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇二八)



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■日めくり万葉集Vol・2(201)巨勢山の

2013年05月22日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
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【一月十七日】放映分
やまの つらつら椿つばき つらつらに 見つつしのはな 巨勢こせ春野はるの
はるはなの 咲くんおもうて しのぼうや やま椿つばき つらなり咲くん》
                         ―坂門人足さかとのひとたり―(巻一・五四)

【万葉歌みじかものがたり】《つらつら椿つばき

 紀伊行幸】大宝元年(701)九月
藤原宮を出た 行幸みゆき一向は 
巨勢こせ道に掛かっていた
道々に 椿の古木こぼくむれ 
秋のを受けて 照り輝いている

川のの つらつら椿つばき つらつらに 見れども飽かず 巨勢こせ春野はるの
巨勢こせ春野はるの つらなり咲いた 椿つばきはな なんぼ見てても 見飽みあきんこっちゃ》
                         ―春日蔵首老かすがのくらびとおゆ―(巻一・五六)
ここを通る人 周知しゅうちの歌だ 
思いをいたし 歌が口を

やまの つらつら椿つばき つらつらに 見つつしのはな 巨勢こせ春野はるの
はるはなの 咲くんおもうて しのぼうや やま椿つばき つらなり咲くん》
                         ―坂門人足さかとのひとたり―(巻一・五四)

あさもよし 紀伊ひとともしも つちやま 行きと見らむ 紀伊ひとともしも
紀伊きいの人 うらやましいで かえり 真土まつちの山を 見られるよって》
                         ―調首淡海つきのおびとおうみ―(巻一・五五)
妹がため 我れ玉求む おきなる 白玉しらたま寄せ 沖つ白波
《沖の波 白玉しらたま寄せて 持って来い 妻の土産みやげに わし欲しいんや》
                         ―作者未詳 ―(巻九・一六六七)
黒牛くろうしかた 潮干しほひの浦を くれなゐの たますそき 行くはつま
黒牛くろうしの 干潟ひがたで遊ぶ 可愛かいらし児 あか綺麗きれえや 独り身やろか》
                         ―作者未詳 ―(巻九・一六七二)
風莫かざなしの 浜の白波しらなみ いたづらに 此処ここに寄せる 見る人なしに
風莫かざなしの 浜うのんに 白波なみ寄せる 誰も見んのに 寄せては返す》
                         ―作者未詳 ―(巻九・一六七三)
白崎しらさきは さきくあり待て 大船おほぶねに かじ繁貫しじぬき またかへり見む
白崎しらさきよ 白いまんまで ってんか またかじそろえ 見に来るよって》
                         ―作者未詳 ―(巻九・一六六八)
朝開あさびらき て我れは 由良ゆらさき 釣りする海人あまを 見て帰り
《朝よに 船して 由良ゆらさき 釣りの漁師りょうしを 見て来よ思う》
                         ―作者未詳 ―(巻九・一六七〇)
由良ゆらさき 潮干しほひにけらし 白神しらかみの 磯の浦廻うらみを えてぐなり
《わざわざに 白神しらかみ岩礁いわば いでくで 由良ゆらの岬は 潮いとんや》
                         ―作者未詳 ―(巻九・一六七一)
南部みなべの浦 潮なちそね 鹿島かしまなる 釣りする海人あまを 見て帰り
南部みなべうら 潮満ちたあかんで この鹿島しま 釣りする漁師りょうし 見て来たいんで》
                         ―作者未詳 ―(巻九・一六六九)
我が背子せこが 使つかひむかと 出立いでたちの この松原まつばらを 今日けふか過ぎなむ
《あの人の 使い出て待つ う地名 出立いでたち松原はらを 今日きょうどおりか》
                         ―作者未詳 ―(巻九・一六七四)



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■日めくり万葉集Vol・2(200)葦辺行く

2013年05月18日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
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【一月十六日】放映分
葦辺あしへ行く 鴨のひに 霜りて 寒きゆふへは 大和やまとし思ほゆ
《鴨の背に 霜りてるで 寒むそうや しみじみ大和やまと 恋しいこっちゃ》【慶雲三年難波行幸】
                         ―志貴皇子しきのみこ―(巻一・六四)


【万葉歌みじかものがたり】いはばしる》

天智天皇 第七皇子 志貴皇子しきのみこ
天武 ・持統時代に 青年期
時代の子ゆえの 生き方を求められる

歌道うたみちへの 精進しょうじん
  これしか なかろう
 うたげも ほどほど つどい うた披露ひろうも避け
 独り歌 独り修行が 身守りかなめ
 したが 歌作り 中々の 至難しなんみち

葦辺あしへ行く 鴨のひに 霜りて 寒きゆふへは 大和やまとし思ほゆ
《鴨の背に 霜りてるで 寒むそうや しみじみ大和やまと 恋しいこっちゃ》【慶雲三年難波行幸】
                         ―志貴皇子しきのみこ―(巻一・六四)
大原の このいちしばの いつしかと が思ふ妹に 今夜こよひ逢へるかも
何時いつ来たら えるんやろか 待ってたが とうと逢えたで 今夜こんやのお前》
                         ―志貴皇子しきのみこ―(巻四・五一三)
かむの 石瀬いはせもりの 霍公鳥ほととぎす なしの岡に 何時か鳴かむ
いわもり 鳴くほととぎす 何時いつやねん なしの岡に 鳴きるのんは》
                         ―志貴皇子しきのみこ―(巻八・一四六六)

 は まだ浅い
 の残る 山道を
独り辿る 志貴皇子しきのみこ

皇子おうじは 早春が好きだ
 は 冷たく
空気も ぎ澄まされている
木々 を渡る風も キリとして 頬に心地よい

(いつしか 一人歩きが習いになって仕舞しもうた
 歌の道に いそしんできたが
  やっと 実を着けつつあるか
 気楽 がいい 官職はそこそこでよいのだ)
皇子 は 語りかける
 山はいい お前は 何も言わない
 川もいい さらさらと こだわり
 音が 心しか 高こうなったな
 雪解け が 始まったらしい
  は まだ少し先か・・・)

おや  
おお  見つけたぞ
渓流滝けいりゅうだきのそば
わらびだ! わらびの芽だ!
お前は ゆきかげに 隠れていたのか
まさしく  春の芽だ

いはばしる 垂水たるみの上の さわらびの 萌えづる春に なりにけるかも
わらび 渓流ながれの水の 岩陰で 見たで見つけた 春や 春来た》 
                         ―志貴皇子しきのみこ―(巻八・一四一八)

満足の うたり歓びを 微笑ほほえ
皇子は 春のを 胸奥深いっぱいに 吸い込む




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■日めくり万葉集Vol・2(199)若の浦に

2013年05月15日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
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【一月十三日】放映分
若の浦に 潮満ち来れば かたを無み 葦辺あしへをさして たづ鳴き渡る
《潮満ちる 干潟うなる 若の浦 葦ある岸へ 鶴鳴いてくで》
                         ―山部赤人やまべのあかひと―(巻六・九一九)

【万葉歌みじかものがたり】たづ鳴き渡る》

時代 は 既に変わっていた
天皇おおきみが 現人神あらひとがみとされた 壬申じんしん大乱の世
天武の大帝たいてい あとべられし持統帝
御前ごぜんでの 歌み儀式は 
山をめ 川を褒め 宮を褒める
これ  すなわち 
みかどそのものへの讃歌
み儀式は 引き継がれ 
山川褒めは 続きされる 
重きは 景をめるにあり 
みかどへのあがめ 色合いは薄い
行幸みゆきそのものも 君臣和しての遊覧
帝も しんへの 近きを むねとせられる

じん元年冬十月 紀伊国きのくにへの行幸みゆき 
一行は 玉津島頓宮とんぐう背後のてん山に登り 
 に展開する 島々 潮の満ち干を 眺めていた
澄んだ 赤人の 歌声が 流れる

やすみしし 我ご大君おほきみの 常宮とこみやと つかまつれる 雑賀野さひかのゆ 背向そがひに見ゆる 沖つ島 
天皇おおきみの ずうっと続く 宮処みやどこと みんな仕える 雑賀野さいかのの 向こうに見える 沖の島》 
清きなぎさに 風吹けば 白波さわき  潮れば 玉藻たまも刈りつつ 神代より しかたふとき 玉津島山たまつしまやま
《そこの清らな なぎさでは 風が吹いたら 白波なみ立って 潮が引いたら 玉藻刈る 神代からして 尊いで ほんまえとこ 玉津島山たまつしま
                         ―山部赤人やまべのあかひと―(巻六・九一七)

沖つ島 荒磯ありその玉藻 潮干しほひ満ちて いかくりゆかば 思ほえむかも
《沖の島 荒磯ありその玉藻 満潮しお来たら 隠れて仕舞うで 見えんなるで》
                         ―山部赤人やまべのあかひと―(巻六・九一八)
若の浦に 潮満ち来れば かたを無み 葦辺あしへをさして たづ鳴き渡る
《潮満ちる 干潟うなる 若の浦 葦ある岸へ 鶴鳴いてくで》
                         ―山部赤人やまべのあかひと―(巻六・九一九)

惜しみない 讃辞が 広がっていく
 違う 違うぞ 赤人
 これは われの歌ではない)
  
赤人 は 気付いていない
後世 絶讃を受ける 心になおな反歌の誕生を
人麻呂を 追随する懸命さが 目をおおっている




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■日めくり万葉集Vol・2(198)天ざかる

2013年05月11日 | 日めくり万葉集
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【一月十二日】放映分
天離あまざかる ひな長道ながぢゆ 恋ひれば 明石のより 大和島やまとしま見ゆ
《長い道 恋し恋しと 明石来た 海峡かいきょうこに 大和の山や》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・二五五)

【万葉歌みじかものがたり】大和島 見ゆ》

長門をた 人麻呂の公務旅たび
大宰府 への 副次報告を終え
の津からの船は 難波なにわの津を目指していた
時化しけの怖さはあるが 沿岸伝いの船旅ふなたび
陸路の難渋なんじゅうを思えば 安全 この上ない
久方ぶり の 大和の地
はやる心の 人麻呂

 まだ 見えぬのか 大和は)
稲日野いなびのも 行きぎかてに 思へれば 心こほしき 可古かこしま
印南野いなみのの 素通りしと 思う間に 恋し可古かこ島 おお見えとるが》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・二五三)

(淡路島 大きゅうなってきた おお にぎやか 賑やか)
笥飯けひの海の にはくあらし 刈薦かりこもの みだづ見ゆ 海人あまの釣船
うみは いだみたいや 釣り船が バラバラバラと 出てきとるがな》 
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・二五六)

 うわぁ 大和や 大和や)
天離あまざかる ひな長道ながぢゆ 恋ひれば 明石のより 大和島やまとしま見ゆ
《長い道 恋し恋しと 明石来た 海峡かいきょうこに 大和の山や》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・二五五)

小躍こおどりしたい気持ち
それとは 裏腹うらはら
人麻呂の胸に 苦いしるが わだかまる

(このまま 地方の官吏かんりで終わるのか
 あの ほまれは 夢だったのか
 天武帝に召され「大王おおきみは 神にしあれば」とうたったのは わしだ
  統帝の覚えは 目出たかった
 吉野行幸みゆき「山川も依りてつかふる」は絶讃ぜつさんを得た
 皇子みこ達への き歌の数々
 宮めの 寿ことほぎ歌・・・
 あれ は 真のわしであったのであろうか
 時移り 世は変わり 宮廷一の歌人うたびと 柿本人麻呂は どこへ行ったのじゃ
 友もいない ぶん不相応な扱いを受けた わしに 誰も寄りはしなかった
 もう  大和はわしの住むところではないのだ)

石見いわみは い あそこは 人が住んでいる
 依羅娘子よさみのおとめが待っている・・・)

人麻呂の目に 大和島山が にじ




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■日めくり万葉集Vol・2(197)秋田刈る

2013年05月08日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
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【一月十一日】放映分
秋田刈る 仮廬かりいほの宿り にほふまで 咲ける秋萩 見れどかぬかも
《刈り入れの 仮寝の小屋が える程 咲いとる秋萩はぎは ほんま見事や》
                           ―作者未詳―(巻十・二一〇〇)
  

【万葉歌みじかものがたり】く吹き

見事花房 たわわとたた
 に揺れる身 靡かせそよぐ
折って插頭かざそか 野に出て見よか
野末のずえ果てまで はぎはな海か

春されば かすみがくりて 見えずありし 秋萩咲きぬ 折りてかざさむ
《春のうち かすみに隠れ 見えへんだ 秋萩あきはぎ咲いた 折って插頭かざそや》
                           ―作者未詳―(巻十・二一〇五)
  
額田ぬかたの 野辺のへの秋萩 ときなれば 今盛りなり 折りてかざさむ
額田ぬかたの野 秋萩はぎの花咲く 時なった いま盛りやで 折って插頭かざそや》
                           ―作者未詳―(巻十・二一〇六)
  
秋田刈る 仮廬かりいほの宿り にほふまで 咲ける秋萩 見れどかぬかも
《刈り入れの 仮寝の小屋が える程 咲いとる秋萩はぎは ほんま見事や》
                           ―作者未詳―(巻十・二一〇〇)
  
玉梓たまづさの 君が使つかひの 手折たをる この秋萩は 見れどかぬかも
《あのかたの 使者つかいえ持ち 来た秋萩はぎは ほんま見事で 見きんこっちゃ》
                           ―作者未詳―(巻十・二一一一)
  
秋風は く吹き 萩の花 散らまくしみ きほひ立たむ見む
《秋風よ 早よ吹いて来い はぎはなが 散ってなるかと ん見たい》
                           ―作者未詳―(巻十・二一〇八)
  
大夫ますらをの 心はなしに 秋萩の 恋のみにやも なづみてありなむ
《男持つ 心消失うしのて 秋萩はぎになぞ 心奪われ 女々めめしこっちゃで》
                           ―作者未詳―(巻十・二一二二)
  
かりがねの 鳴かむ日まで 見つつあらむ この萩原はぎはらに 雨な降りそね
《雁が来て 鳴くその日まで 見よ思う この萩原はぎはらに 雨降らんとき》
                           ―作者未詳―(巻十・二〇九七)

秋萩に 恋つくさじと 思へども しゑやあたらし またも逢はめやも
《この秋萩はぎに ぞっこんちゃうが もう二度と えん思うと してならんが》
                           ―作者未詳―(巻十・二一二〇)



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