犬養万葉今昔―犬養孝先生著「万葉の旅」を訪ねて

犬養孝先生名著「万葉の旅」記載の万葉故地309箇所を訪ね、先生が撮られれたのと同じ場所に立った写真撮影を目指す紀行。

■日めくり万葉集Vol・2(111)黙居りて

2012年05月30日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【八月三十日】放映分

黙然もだをりて さかしらするは 酒飲みて 酔泣ゑひなきするに なほかずけり
《澄まし込み かしこるより 酒飲んで 泣いてる方が まだ増しちゃうか》
                           ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三五〇)

【万葉歌みじかものがたり】《猿にかもる》

 まあ どう なされたのですか」
散らばる短冊たんざくに あきれかえる 郎女いらつめ
頭をかかえる旅人たびとを 覗きこむ
 こんな 朝早くに 珍しいこと
  おや 朝酒ですか?」
 ・・・いや 酒ではない 水じゃ
 たまには 徳利とくり酒坏さかづきから
 酒気さかけを抜いてやろうと 思うたまでじゃ」

あなみにく さかしらをすと 酒飲まぬ 人をよく見れば 猿にかも
《ああいやや 酒も飲まんと 偉そうに う顔見たら 猿そっくりや》
                           ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四四)
 あれ
 これは まさか 筑前ちくぜんさまのことでしょうか
  お気の毒に 猿だなんて
 あのお方 わたしは 好きですよ
 真面目まじめでいらっしゃる
  お酒飲みの あなたよりもね」
にこりと 微笑ほほえ郎女いらつめに 思わず苦笑した旅人
「では わしも 酒気さかけを抜かねば なるまいて」

あたひ無き たからといふとも 一つきの にごれる酒に あにさめやも
《値けさえ 出ん高値の 宝より 酒一杯が わしにはえで》
                           ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四五)
よるひかる 玉といふとも さけ飲みて 心をるに あにかめやも
夜光やこうだま そんなもんより 酒飲んで さ晴らすが え決まってる》
                           ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四六)
世間よのなかの みやびの道に すすしきは ゑひなきするに あるべかるらし
《風流の 道を極めて 澄ますより 酔うて泣くが えのんちゃうか》
                           ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四七)
この世にし 楽しくあらば には 虫に烏にも 我れはなりなむ
《この世さえ 楽し出たら 次の世は 虫とか鳥に 成ってもえで》
                           ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四八)
けるひと つひにも死ぬる ものにあれば この世なるは 楽しくをあらな
《人何時いつか 死ぬと決まった もんやから 生きてるうちは 楽しゅう過ごそ》
                           ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四九)
黙然もだをりて さかしらするは 酒飲みて 酔泣ゑひなきするに なほかずけり
《澄まし込み かしこるより 酒飲んで 泣いてる方が まだ増しちゃうか》
                           ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三五〇)

郎女いらつめ やはり 酒じゃ 酒を持て
 徳利とくり酒坏さかづきも しょんぼりしてる」 
笑いをこらえて 酒を運ぶ 郎女いらつめ
そこには 剛毅ごうき旅人たびとが 
あごひげを撫でて 待っていた




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■日めくり万葉集Vol・2(110)萩の花

2012年05月26日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
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【九月二十九日】放映分

はぎの花 尾花をばな 葛花くずばな なでしこの花
女郎花をみなへし また藤袴ふぢばかま 朝顔あさがほの花
《萩の花 すすき葛花くずばな 撫子なでしこの花
女郎花おみなえし ふじばかまばな 桔梗ききょうの花や》
                          ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻八・一五三八)

【万葉歌みじかものがたり】 日暮らさむ》

 文庫の中
七夕歌 を 整理した 憶良
なつかしさに 思わず こぼれる

(おお これは 紀伊国きのくに 行幸みゆきの供の時
  持統帝の時代であった
  わしも 若かった 三十一の年か
 磐代いわしろ
 道行く人 皆 思わずにはいない 有間皇子ありまのみこ
 手向たむけの歌)
白波の 浜松の木の むけぐさ 幾代までにか 年はぬらむ
《松の木に 幣布きれを結んで 祈るんは 何時から続く 習慣ならわしなんや》
                          ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻九・一七一六)
天翔あまがけり ありがよひつつ 見らめども 人こそ知らね 松は知るらむ
《空飛んで 皇子みこたましい かよてるで 人間ひと見えんでも 松知っとるわ》
                          ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻二・一四五)

 良 次の歌へと 目をやる
秋の野に 咲きたる花を および折り かき数ふれば 七種ななくさの花
 秋の野に 咲いてる花を 指折って 数えてみたら ほらそれ七つ》
                          ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻八・一五三七)
はぎの花 尾花をばな 葛花くずばな なでしこの花
女郎花をみなへし また藤袴ふぢばかま 朝顔あさがほの花
《萩の花 すすき葛花くずばな 撫子なでしこの花
女郎花おみなえし ふじばかまばな 桔梗ききょうの花や》
                          ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻八・一五三八)
(これは うたじゃ 
  しかし 皆は よき歌という
 人生の苦労も知らず 純粋に若かった
 今に思うと 心に秘めた人を なぞらえしか)

(これは これは また なつかしい)
春されば  まづ咲くやどの 梅の花 独り見つつや 春日暮らさむ
《春来たら 最初さき咲く梅花はなを 独りして 見て春日いちにちを 暮らすんかいな》
                           ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻五・八一八)
(ああ 旅人たびと殿を 思い出す
 天平二年(730)正月の うめはなうたげ
 大宰府だざいふの官人 三十二名つどいし宴
 この歌に 旅人殿 目をうるませておられた
 奥方おくがたを 伴って来られた筑紫
 その地で亡くされ 酒にうたげに ふけられていた
  都戻りの旅 独り戻りを 嘆かれたと聞く
 その 旅人たびと殿も 昨年 この世を去られた
 人は むなしゅうなるが こうして 歌だけは残る)

 良に 人生・社会を 見つめる歌が 増えて行く





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■日めくり万葉集Vol・2(109)あらかじめ

2012年05月23日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
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【八月二十六日】放映分
あらかじめ 君まさむと 知らせば かどにやどにも 玉敷かましを
《前もって 佐為卿あんたのお越し 知ってたら 門や庭にも 玉いたのに》
                          ―門部王かどべのおおきみ―(巻六・一〇一三)



【万葉歌みじかものがたり】かはづ聞かせず》

左為王さいおう 葛城かつらぎ王 弟
さすが に 王族の出 
鷹揚おうようたる 物腰 取り巻き官人に 受けがよい

左為王さいおう様 もうお帰りですか
 宴のたけなわ 今がとうところ を」
「ハハハ もう十分に 堪能たんのう致した
 あとは 皆々で よろしゅうに ご歓談を」

思ほえず ましし君を 佐保川の かはづ聞かせず 帰しつるかも
《珍しい おしやったに 佐保川さほ河鹿かじか 聞かしもせんと なして仕舞しもた》
                       ―按作くらつくり村主のすぐり益人ますひと―(巻六・一〇〇四)

親父おやじ殿 いま一時ひととき おいでになれば
  皆も 喜びましょうに 悪うございますよ」
「お相伴しょうばんが 物うでない
 おぬし 馳走ちそうが しいのであろう
  次じゃ 次の席が 待って居る」

辿たどり着いたは 弾正尹だんじょうのかみ 門部王かどべおうが屋敷
「これは これは 左為王さいおう
 本日は 参向さんこうかなわぬとのおお
  十分なご用意 致しておりませぬ」
「大事ない 腹はもう満腹くちる」

あらかじめ 君まさむと 知らせば かどにやどにも 玉敷かましを
《前もって 佐為卿あんたのお越し 知ってたら 門や庭にも 玉いたのに》
                          ―門部王かどべのおおきみ―(巻六・一〇一三)
子息むすこ 橘文成あやなりが 応じる
一昨日をとつひも 昨日きのふ今日けふも 見つれども 明日あすさへ見まく しき君かも
一昨日おとついも 昨日きのう今日きょうも うたのに 明日あすも逢いたい 門部王あんたさんです》
                          ―橘文成たちばなのあやなり―(巻六・一〇一四)
玉敷 きて 待たましよりは
 たけそかに きた今夜こよひし 楽しく思ほゆ《用意して 待つのんよりか 突然とつぜんに られるんも うれしもんです》
                          ―榎井王えのいのおおきみ―(巻六・一〇一五)
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左為王婢さいのおおきみがまかだちの歌】
左為王さいおう近く つかえの侍女じじょは 
つときつうて 夜昼なしで
宿がれんと おっとに逢えず 
鬱屈うっくつまり 恋焦こがれが募る
ある夢見に おっとでて 
やれうれしやと 双手もろてを伸ばし
抱きつきみるに くう切るかいな 
糠喜ぬかよろびに 気付いた侍女じじょ
嘆きいや増し 叫びてうたう 

いひめど うまくもあらず
 ぬれども 安くもあらず
 あかねさす 君が心し 忘れかねつも
めしたかて 美味うもうない
  寝てはみるけど うつうつや
  あゝ思うんは うちの人
やさし心の うちの人》
                       ―左為王婢さいのおおきみがまかだち―(巻十六・三八五七)
聞いた左為王さいおう あわれに思い 
泊まり勤めを 長きにゆる




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いよいよ本になります!!

2012年05月19日 | 日めくり万葉集
平成24年4月19日

万葉歌みじかものがたりが いよいよ本になります。
刊行は5月中旬~下旬です。
主要書店の店頭に並ぶ・・・はず・・・です。
見掛けられない場合は 出版元の「JDC出版」にお問い合わせ下さい。
全十巻構成で まずは第一巻「歴史編」がでます。
表紙は次のようです。



また 宣伝用のパンフレットの表と裏は それぞれ次のようです。
(裏は字が小さくて読みづらいですが 本を買って頂ければよく見えると思います)





■日めくり万葉集Vol・2(108)移り行く

2012年05月19日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
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【八月二十五日】放映分

うつり行く 時見るごとに 心痛く 昔の人し 思ほゆるかも
《時うつり 世うつたびに 胸痛い うなった人 思い出される》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻二十・四四八三)

【万葉歌みじかものがたり】 の人し》

目まぐるしい  状況変化の中
六月二十三日 三形みかたおう屋敷にての うたげ
家持 うたいし心 何処いずれ

うつり行く 時見るごとに 心痛く 昔の人し 思ほゆるかも
《時うつり 世うつたびに 胸痛い うなった人 思い出される》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻二十・四四八三)

昔の人は 橘諸兄もろえなりや
こうしんかなめを偲び 橘諸兄もろえ有りせばか・・・

六月二十九日 最終謀議ぼうぎ 塩汁すすり 蜂起ほうき誓い
七月 二日 夕刻を期し
田村藤原仲麻呂なかまろ邸襲撃
仲麻呂 殺害 
皇太子・皇太后・孝謙帝退しりぞけ 
王位 交替実現

六月末より 密告しき
山背王やましろおう巨勢堺麻呂こせのさかいまろ上道かみつみちの・犬養佐美麻呂・佐味さみの宮守みやもり
蜂起ほうき計画 筒抜け

二日 より 逮捕相次ぐ
拷問ごうもん撲殺ぼくさつ
黄文きぶみおう道祖王ふなどおう・大伴古麻呂・丹比たじひの犢養うしかい・小野東人あずまひと賀茂かものつのたり
 流罪】
安宿あすかべおう夫妻・佐伯さえきの大成おおなり・大伴古慈斐こじひ丹比国人たじひのくにひと・大伴駿河麻呂・答本たほの忠節ちゅうせつ
 失脚・投獄・獄死?】
丹比たじひのいや麻呂まろ・大伴池主・丹比鷹主たじひのたかぬし・大伴兄人えひと

再三誘い受けし 佐伯さえきの全成またなり 自白後自害
くわだて知りし 右大臣藤原ふじわらのとよなり・三男乙縄おとただ 左遷
記録 は触れない 首謀者奈良麻呂
おそらくは 極刑きょっけい免れ得ず

騒然そうぜんたる 変後の 内裏だいり内外
一人  家持は 身を振り返っていた

咲く花は うつろふ時あり あしひきの やますがの根し 長くはありけり
《美しに 咲く花何時いつか おとろえて 菅の根だけは 長う伸びとる》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻二十・四四八四)

時の花 いやめづらしも かくしこそ あきらめめ 秋立つごとに
《秋の花 見事咲いてる 秋ごとに 花見て心 晴らされてたな》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻二十・四四八五)

 花も移ろい 時も移ろい 人もまた・・・
 伴造とものみやつこ役目の心決め 悔いはせぬが・・・
 独り 残って仕舞しもうた
  あの人も この人も
  花見ての 心晴らし されていたに
  見ても 晴れぬわ)



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■日めくり万葉集Vol・2(107)ひぐらしは

2012年05月16日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
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【八月二十四日】放映分

ひぐらしは 時と鳴けども 片恋かたこひに 手弱女たわやめれは ときわかず泣く
ひぐらしは 鳴きどき今と 鳴くけども 片恋かたこいのうち 泣きどおしやで》【蝉に寄せて】
                           ―作者未詳―(巻十・一九八二)
  

【万葉歌みじかものがたり】つちさへけて》

夏の相聞そうもん 数少し 花に寄せるは たちばな
鳥に寄せるは 霍公鳥ほととぎす 夏草寄せる 四首ある

知りたい 見たい あの人気持ち
伝え届けよ 切無せつない思い
気持ち 無くとも 姿は見せて
日照り続くが 涙はこぼ

ひぐらしは 時と鳴けども 片恋かたこひに 手弱女たわやめれは ときわかず泣く
ひぐらしは 鳴きどき今と 鳴くけども 片恋かたこいのうち 泣きどおしやで》【蝉に寄せて】
                           ―作者未詳―(巻十・一九八二)
  
はなの 咲くとはなしに ある人に 恋ひやわたらむ 片思かたもひにして
卯花はなごて 心開かん 人相手 うちがれんか 片思かたもいままで》【花に寄せて】
                            ―作者未詳―(巻十・一九八九)
  
よそのみに 見つつ恋ひなむ くれなゐの 末摘花すゑつむはなの 色にでずとも
《遠くから そっと見てるわ あの人が え顔せんで ったとしても》【花に寄せて】
                            ―作者未詳―(巻十・一九九三)
  
片縒かたよりに 糸をぞ我がる 我が背子せこが はなたちばなを かむと思ひて
《一本で 糸ってんや あの人に 橘花たちばなとおし したい思うて》【花に寄せて】
                             (あの人に せめて思いを 通そと思て)
                            ―作者未詳―(巻十・一九八七)
  
鴬の かよふ垣根の はなの きことあれや 君が来まさぬ
はなの 鬱陶うっとし気持 させたんか あの人とんと 来てくれんがな》【花に寄せて】
                            ―作者未詳―(巻十・一九八八)
                                          (
  
我れこそば 憎くもあらめ 我がやどの はなたちばなを 見にはじとや
《このうちを 憎い思ても 庭に咲く 橘花はな見にんて そら無いちゃうか》【花に寄せて】
                            ―作者未詳―(巻十・一九九〇)
  
霍公鳥ほととぎす 鳴きとよもす 岡辺をかへなる 藤波ふぢなみ見には 君はじとや
霍公鳥ほととぎす 鳴いてる岡の 藤の花 見にうか あんたほんまに》【花に寄せて】
                            ―作者未詳―(巻十・一九九一)
  
夏草なつくさの つゆごろも けなくに 我がころもの る時もなき
《夏草の 露払うふく 着て無いに わしの袖口 湿しめりっぱなし》【露に寄せて】
                            ―作者未詳―(巻十・一九九四)
  
六月みなつきの つちさへけて 照る日にも 我がそでめや 君に逢はずして
《六月の 地割じわれの日射し 続いても 袖乾かへん あんた逢えんと》【日に寄せて】
                            ―作者未詳―(巻十・一九九五)



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■日めくり万葉集Vol・2(106)天地し

2012年05月12日 | 日めくり万葉集
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【八月二十三日】放映分

天地あめつしの いづれの神を 祈らばか うつくははに またことはむ
天地あめつちの どの神さんを 拝んだら いとしいかかに また逢えるんか》
                        ―大伴部麻与佐おおともべのまよさ―(巻二十・四三九二)

【万葉歌みじかものがたり】ははとふ花の》

子供皆々 乳離ちばなれできぬ
まして別れた たびの空は
思い途切とぎれず 母親思う
恋し恋しい 恋しでお

畳薦たたみけめ が磯の はなりの ははを離れて 行くが悲しさ
磯 岸を離れた 沖の磯 おぁ離れて 行くのんつらい》
                        ―生部道麻呂みぶべのみちまろ―(巻二十・四三三八)
たらちねの ははを別れて まこと我れ 旅の仮廬かりほに 安くむかも
《なぁおかあ おと別れて わし一人 旅空たびぞら宿り まんじり出来できん》
                        ―日下部三中くさかべのみなか―(巻二十・四三四八)
あもも 玉にもがもや いただきて 角髪みづらの中に あへかまくも
《おっさん 玉やったらな ささげ持ち 角髪みずらの中に 巻き込めるのに》
                        ―津守小黒栖つもりのおぐろす―(巻二十・四三七七)
時々ときどきの 花は咲けども 何すれぞ ははとふ花の 咲き出来でこずけむ
時期じき時期じきに 花咲くのんに なんでまた おぁいう名の 花咲かんのや》
                        ―丈部真麻呂はせべのままろ―(巻二十・四三二三)
我がははの 袖もちでて 我がからに 泣きし心を 忘らえぬかも
《おっぁが 袖で頭を でてくれ 泣いてくれたん 忘れられんわ》
                        ―物部乎刀良もののべのおとら―(巻二十・四三五六)
我がかづの 五本いつもとやなぎ 何時いつ何時いつも おもが恋すす なりましつしも
《この今も わし気にけて おっぁが 畑で仕事 しとるんやろか》
                        ―矢作部真長やはぎべのまなが―(巻二十・四三八六)
ばしら ほめて造れる 殿とののごと いませはは おめかはりせず
立派ええ柱 しつらえ建てた 屋敷いえみたい かかよ達者で やつれなさんと》
                        ―坂田部首麻呂さかたべのおびとまろ―(巻二十・四三四二)
天地あめつしの いづれの神を 祈らばか うつくははに またことはむ
天地あめつちの どの神さんを 拝んだら いとしいかかに また逢えるんか》
                        ―大伴部麻与佐おおともべのまよさ―(巻二十・四三九二)

 の無い子は 父親思う
まして 老いたる 父親ならば

橘の 美袁利みをりの里に ちちを置きて 道の長道ながては 行きかてぬかも
たちばなの 美袁利みおりの里に とと置いて 行くんつらいで 道長々と》
                        ―丈部足麻呂はせべのたりまろ―(巻二十・四三四一)




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■日めくり万葉集Vol・2(105)彦星と

2012年05月09日 | 日めくり万葉集
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平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
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【八月二十二日】放映分

彦星ひこほしと 織女たなばたつめと 今夜こよひ逢ふ あま川門かはとに 波立つなゆめ
《彦星と 織姫おりひめさんが 今夜こよい あまの渡し場 波荒れんとき》
                          ―作者未詳―(巻十・二〇四〇)

【万葉歌みじかものがたり】《瀬にで立ちて》

日暮れ近づき 夜帳とばりが下りる
待って 焦がれた 天上二人
星空 見上げ 時待つ地上
 に期待の 幕引き上がる

 地 上】
秋風の 吹きただよはす 白雲は 織女たなばたつめの あま領巾ひれかも
《秋風が 吹きただよわす 白雲は おりひめさんの 領巾ひれなんやろか》
                          ―作者未詳―(巻十・二〇四一)
 地 上】
あまがは 霧立ちのぼる 織女たなばたの 雲のころもの かへる袖かも
あまの川 立っとる霧は おりひめが 着てる雲衣ころもの かえり袖かな》
                          ―作者未詳―(巻十・二〇六三)
 地 上】
彦星ひこほしと 織女たなばたつめと 今夜こよひ逢ふ あま川門かはとに 波立つなゆめ
《彦星と 織姫おりひめさんが 今夜こよい あまの渡し場 波荒れんとき》
                          ―作者未詳―(巻十・二〇四〇)
 地 上】
しばしばも 相見あひみぬ君を あまがは 船出ふなではやせよ けぬ間に
度々たびたびも えんのやから あまの川 よ舟しや けんに》
                          ―作者未詳―(巻十・二〇四二)
 織 姫】
あまがは とほき渡りは なけれども 君が船出ふなでは 年にこそ待て
あまの川 渡し場そんな とおいに あんたの舟出ふなで 一年越しや》
                          ―作者未詳―(巻十・二〇五五)
 織 姫】
彦星ひこほしの 妻呼ぶ舟の づなの 絶えむと君を 我が思はなくに
彦星あんた乗せ ぐ舟の つな切れん うちらの仲も 切れんなあんた》
                          ―作者未詳―(巻十・二〇八六)
 織 姫】
わたもり 舟渡せをと 呼ぶ声の 至らねばかも かぢおとのせぬ
《渡し守 舟してやと さけんでも 届かんかして 梶音かじおとせんわ》
                          ―作者未詳―(巻十・二〇七二)
 織 姫】
秋風の 吹きにし日より あまがは 瀬にで立ちて 待つと告げこそ
《秋風の 吹き始めから 川の瀬に 出て待ってるて 伝えてんか》
                          ―作者未詳―(巻十・二〇八三)
 織 姫】
あまがは 瀬ごとにぬさを たてまつる 心は君を さきく来ませと
あまの川 川の瀬毎に ぬさささげ 祈りするんは 無事ぶじにや》
                          ―作者未詳―(巻十・二〇六九)



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■日めくり万葉集Vol・2(104)朝寝髪

2012年05月05日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【八月十八日】放映分

朝寝髪あさねがみ 我れはけづらじ うるはしき 君が手枕たまくら 触れてしものを
朝乱みだがみ うちかんとく 大好きな あんたさわった 髪なんやから》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五七八)

【万葉歌みじかものがたり】《我はけづらじ》

大人ならでは うたえん歌も
激し思いを たぎらせかせ
まだ共寝足りんと 女は強請せが
寝乱れがみも かんでくと

刈りこもの 一重ひとへを敷きて されども 君としれば 寒けくもなし
こもむしろ 一枚だけの 寝床ねどこやが あんたと共寝たら さむ無いのんや》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五二〇)
  
こも刈る 大野おほの川原がはらの 水隠みごもりに 恋ひいもが 紐く我れは
もぐり水 しのがれて 今やっと ほどいとるんや お前のひもを》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七〇三)
  
沖つ波 辺波へなみる 左太さだの浦の このさだ過ぎて のち恋ひむかも
至福しふくどき あんたうてる この今が 過ぎて仕舞しもたら またがれんか》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七三二)
                                         (左太さださだ

明けぬべく 千鳥ちどりしば鳴く 白栲しろたへの 君が手枕たまくら いまだかなくに
《もう朝と 千鳥鳴きよる まだうちは あんたと共寝るん 足らへんのんに》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二八〇七)
  
あさを 早くな開けそ あぢさはふ 目がる君が 今夜こよひ来ませる
《朝の戸を 早々はやばやけな 昨夜ゆうべから いとしあの人 来てはるんやで》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五五五)
  
人目る 君がまにまに 我れさへに 早く起きつつ すそ濡れぬ
《人目け 帰るあんたに うて 早よに起きたら 裳裾すそ濡れて仕舞た》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五六三)
  
朝寝髪あさねがみ 我れはけづらじ うるはしき 君が手枕たまくら 触れてしものを
朝乱みだがみ うちかんとく 大好きな あんたさわった 髪なんやから》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五七八)



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■日めくり万葉集Vol・2(103)秋さらば

2012年05月02日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【八月十七日】放映分

秋さらば 見つつしのへと 妹が植ゑし やどのなでしこ 咲きにけるか
撫子なでしこの 花咲いとおる 秋来たら 見て楽しもと お前が植えた》
                           ―大伴家持おおとものやかもち―(巻三・四六四)

【万葉歌みじかものがたり】せきも置かましを》

何事 もなく 過ぎていく日々
穏やかな 時間ときが 流れている
 恋とは 気疲れの伴うものよ)
 家がいい)
落ち着き を取り戻した 家持の家

それも つかの間
天平 十一年(739)夏六月
家持 を 悲劇が襲う
妻 おみなめの死
幼馴染おさななじみ 大伴書持ふみもちも駆け付ける

今よりは 秋風寒く 吹きなむを いかにかひとり 長き夜を寝む
《これからは 秋の風吹き 寒いのに 長い夜ひとり どう寝たんや》
                           ―大伴家持おおとものやかもち―(巻三・四六二)

長きを ひとりやむと 君が言へば 過ぎにし人の 思ほゆらくに
 長い夜 独り寝るやて 言うもんで 思い出されて しんみりするわ》
                           ―大伴書持おおとものふみもち―(巻三・四六三)

秋さらば 見つつしのへと 妹が植ゑし やどのなでしこ 咲きにけるか
撫子なでしこの 花咲いとおる 秋来たら 見て楽しもと お前が植えた》
                           ―大伴家持おおとものやかもち―(巻三・四六四)
うつせみの 世は常なしと 知るものを 秋風寒み しのひつるかも
 世の中は 無常なもんと 知ってるが 秋風吹くと 思い出すがな》
                           ―大伴家持おおとものやかもち―(巻三・四六五)

我がやどに 花ぞ咲きたる そを見れど こころも行かず しきやし 妹がありせば 水鴨みかもなす 二人ふたり並び 手折たをりても 見せましものを
《庭で咲く 花を見たかて 面白おもろない もしもお前が ったなら 並んで花を 手折たおるのに》
うつせみの れる身なれば 露霜つゆしもの ぬるがごとく あしひきの 山道やまぢをさして 入日いりひなす かくりにしかば
《人の定めや 仕様しょうなしに 露霜みたい はかのうに 帰らん旅へ 出て仕舞しもて 日ィ沈むに うなった》
そこふに 胸こそ痛き 言ひもえず 名づけも知らず あともなき 世間よのなかにあれば むすべもなし
《思い出すたび 胸痛い 嘆く言葉も 見当たらん 消えてく定め どもならん》
                           ―大伴家持おおとものやかもち―(巻三・四六六)

時はしも 何時いつもあらむを こころ痛く にし我妹わぎもか 若子みどりごを置きて
《人何時いつか 死ぬけどなんで 今やねん わし悲しませ 幼子おさなご残し》
                           ―大伴家持おおとものやかもち―(巻三・四六七)

でて行く 道知らませば あらかじめ 妹をとどめむ せきも置かましを
《もしわしが あの世行く道 知ってたら お前の行く手 ふさいだったに》
                           ―大伴家持おおとものやかもち―(巻三・四六八)
妹が見し やどに花咲き 時はぬ 我が泣く涙 いまだなくに
 時過ぎて お前見た庭 花咲いた わしの涙は まだ乾かんが》
                           ―大伴家持おおとものやかもち―(巻三・四六九)



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