犬養万葉今昔―犬養孝先生著「万葉の旅」を訪ねて

犬養孝先生名著「万葉の旅」記載の万葉故地309箇所を訪ね、先生が撮られれたのと同じ場所に立った写真撮影を目指す紀行。

■日めくり万葉集Vol・2(189)味飯を

2013年03月30日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【十二月十六日】放映分

味飯うまいひを 水にみなし が待ちし 甲斐かひはさねなし ただにしあらねば
美味うまめし かもし酒に 待ってるに 自身来んやて 甲斐あらへんで》
                          ―作者未詳―(巻十六・三八一〇)

【万葉歌みじかものがたり】こもらばともに》

《楽しいとわし 隠れの恋は》

昔男と 美女がた 
共に両親ふたおや 内緒ないしょして 深い恋仲こいなか 成って仕舞た 
そのうち女 おもたんや このまま親に 知らせんと
ったあかんと 考えて これを男に 送ったと 

こもりのみ 恋ふれば苦し 山のゆ でくる月の あらはさばいかに
かくしてて がれん苦し もう不要ええで 出る月みたい 表にそや》
                         ―娘子おとめ―(巻十六・三八〇三)
  
ここに一人の 女た 両親ふたおや内緒ないしょ 男出来でき
逢瀬おうせかさねて おるうちに 相手男の こころなか
親の叱責しかりを こわがって 躊躇ためらい心 まれたを
知った女が 歌作り 男けしかけ 贈る歌

事しあらば 泊瀬ばつせ山の 石城いはきにも こもらばともに な思ひそ我が背
《何んや もしもの時は 二人して 墓の中でも かくれよあんた》
                         ―娘子おとめ―(巻十六・三八〇六)

 悲し懐かし 未練の心》

昔ひとりの 娘子おとめた 
愛夫おっとおとずれ 遠退とおのいて がれ思いで としした 
やがて男は 別妻つまめとり 訪ねん日ィ 続いたが
(今日はこのうち まれの日 もしや来んかの 望み抱き)
酒を造って 待つもとに 思い掛けない 贈り物
やれうれしやの 気もしたが 心尽こころづくしの 酒悲し
  
味飯うまいひを 水にみなし が待ちし 甲斐かひはさねなし ただにしあらねば
美味うまめし かもし酒に 待ってるに 自身来んやて 甲斐あらへんで》
                          ―作者未詳―(巻十六・三八一〇)

《任にかれし 恋仲夫婦》

昔男が ひとりた こんむすびて なしやに 
えきうま任務 くだり来て 遠い任地に 行かされた
任務休み 次々で 妻に逢う日の いままに
嘆き悲しみ 暮らすうち 妻はやまいで とこ
年をかさねた 任てて 帰る旅路は 雪しき
かんに報告 終えたのち 妻のもとへと おもむくに
花のかんばせ やつて おとろえし その姿
驚き嘆き 如何いかばかり 涙むせびて 声も

かくのみに ありけるものを 猪名川ゐながはの おきを深めて が思へりける
《いつまでも 元気でると 思てたに こんなやつれて 可哀想かわいそしたな》
                          ―作者未詳―(巻十六・三八〇四)
  
つれの声聞き す妻は 頭もたげて 歌返す

ぬばたまの 黒髪濡れて 沫雪あわゆきの 降るにやます 幾許ここだ恋ふれば
ゆるしてね うちががれて 思うから 雪降る中を かみずぶれで》
                         ―娘子おとめ―(巻十六・三八〇五)





――――――――――――――――――――
【古事記ものがたり】への誘い
古事記編纂1300年を期し 一大叙事詩を作ってみました
こちらを ご覧下さい。
【古事記ものがたり】へ

【万葉歌みじか物語】はこちら



<万葉歌みじかものがたり>へ




■リンク先

      
      

■日めくり万葉集Vol・2(188)我がやどの

2013年03月27日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【十二月十五日】放映分

我がやどの いささむら竹 吹く風の 音のかそけき このゆふへかも
《庭の小藪やぶ 風おとう 吹き抜ける この夕暮れの さみしさ何や》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻十九・四二九一)


【万葉歌みじかものがたり】こころかなしも》

どき 花どき
あたたかさ増す 風は
 の心を 浮き立たせる
しかし  また
淀む霞は だるさ呼び
物思い  深める

(雪の内裏だいり
 あの快活かいかつ歌は キリとした 寒さ故か
  越の春
 身引き締まる寒さ 宿やどしていた
  都の春
 この 物憂ものう
  昔も こうであったろうか)

付き合いづよくなったと 思う家持
我慢 虚勢きょせいの歌みが
知らずと 心むしばみを 呼んでいた

一番の 気りは 仲麻呂様うたげ
にらまれせぬかの 警戒ごころ
次いでは 奈良麻呂殿うたげ
誘い込まれせぬかの 用心ごころ
橘諸兄もろえうたげは 気は許せるものの
度重たびかさねは 誰の目が光るやもの 気遣いごころ
かと言って 友同士うたげ 
心寄せ いずれにかの 猜疑さいぎごころ

春の野に 霞たなびき うら悲し このゆふかげに うぐひす鳴くも
《春の野に 霞なびいて 鶯の 声よいや 沈む心に》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻十九・四二九〇)

我がやどの いささむら竹 吹く風の 音のかそけき このゆふへかも
《庭の小藪やぶ 風おとう 吹き抜ける この夕暮れの さみしさ何や》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻十九・四二九一)
                                 【二月二十三日】

うらうらに 照れる春日はるひに 雲雀ひばり上がり こころかなしも ひとりし思へば
《日ぃうらら 雲雀ひばりさえずる 春やのに 心はずまん 思い尽きんで》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻十九・四二九二)
                                 【二月二十五日】

沈み心 そのままを
さら なる底に 沈み込む
しかるのち
声殺しの 心うち吟じが
うつさんじ となる
気付かずがまま 家持は会得えとくしていた



――――――――――――――――――――
【古事記ものがたり】への誘い
古事記編纂1300年を期し 一大叙事詩を作ってみました
こちらを ご覧下さい。
【古事記ものがたり】へ

【万葉歌みじか物語】はこちら



<万葉歌みじかものがたり>へ




■リンク先

      
      

■日めくり万葉集Vol・2(187)やすみしし

2013年03月23日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【十二月十四日】放映分

やすみしし 我ご大君の あしたには とりでたまひ ゆふへには いり立たしし らしの あづさの弓の 中弭なかはずの 音すなり
とうさんが 朝の早よから でさすり ゆうおそうに 引き寄せる ご自慢弓の つるの音》
朝狩りに 今立たすらし 夕狩りに 今立たすらし らしの 梓の弓の なかはずの 音すなり
《朝狩り行くに 響いてる 夕狩り出るに 聞こえくる ご自慢弓の つるの音》
                         ―中皇命なかつすめらみこと―(巻一・三)

【万葉歌みじかものがたり】 智の大野に》

間人皇女はしひとのひめみこは 目を覚ました
 ビン ビン ビィーン・・・」
 ああ 父上の弓だわ
 今日 も 狩りに お出掛けなさる
 力強い響き たくましいおとうさま)

大王おおきみ 皇女ひめさまから 歌が」
一息入れた 舒明じょめい大王だいおうに 間人連はしひとのむらじおゆが 差し出す

やすみしし 我ご大君の あしたには とりでたまひ ゆふへには いり立たしし らしの あづさの弓の 中弭なかはずの 音すなり
とうさんが 朝の早よから でさすり ゆうおそうに 引き寄せる ご自慢弓の つるの音》
朝狩りに 今立たすらし 夕狩りに 今立たすらし らしの 梓の弓の なかはずの 音すなり
《朝狩り行くに 響いてる 夕狩り出るに 聞こえくる ご自慢弓の つるの音》
                         ―中皇命なかつすめらみこと―(巻一・三)

(どんな ご様子での 狩りかしら 朝霞あさがすみのなか 馬を並べて・・・)
たまきはる 宇智うちの大野に 馬めて 朝ますらむ その草深野くさふかの
《草茂る 宇智の大野で 馬って 狩りしてはるか 朝露あさつゆ踏んで》
                         ―中皇命なかつすめらみこと―(巻一・四)

「さすが わしの皇女ひめじゃ」
「わしの 狩りを見ていたようではないか のうおゆ
間人連はしひとのむらじおゆは 平伏したまま 申しあげる
「はい まことに 殿の雄々おおしい姿 そのままなお歌」
大王だいおうは 大きくうなずくと 命じた
 さあ 仕上げの 追い狩りだ ゆくぞ!」

朝霧あさぎりも晴れ 草深野に 夏の日差し




――――――――――――――――――――
【古事記ものがたり】への誘い
古事記編纂1300年を期し 一大叙事詩を作ってみました
こちらを ご覧下さい。
【古事記ものがたり】へ

【万葉歌みじか物語】はこちら



<万葉歌みじかものがたり>へ




■リンク先

      
      

■日めくり万葉集Vol・2(186)我が岡の

2013年03月20日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【十二月十三日】放映分

我が岡の  おかみに言ひて 降らしめし 雪のくだけし そこに散りけむ
《そらちゃうで うちの神さん お願いし 降らしてもろた 雪のカケラや》
                         ―藤原夫人ふじわらのぶにん―(巻二・一〇四)

【万葉歌みじかものがたり】大雪降 れり》

朝夕 の冷え込みが 
 の訪れを告げていた
香久山の 黄葉もみじも 散り
連れ呼ぶ 鹿の声も 
 の冷気に吸い込まれていく
(この分だと 今宵こよいは 
 白い ものがやってくるかな)
天皇てんのう天武は 
夕飼ゆうげの酒のめを 少しく覚えた

朝 きよ御原みはら宮庭みやにわは 
薄い雪衣ゆきころもをまとっている
 やはり降ったか
 そう じゃ 
  やつのところは どうであろう
 おお  いいのを 思いついたぞ 
  じゃ 筆をこれへ)

ふみ使づかいが 
里帰りの藤原夫人ふじわらのぶにんへと 急ぐ
 まあ 朝早いというに 
 天皇おおきみから文だわ)
我が里に 大雪降れり 大原の りにし里に 降らまくはのち
《わしの里 大雪降った お前る そっちの田舎 まだまだやろな》
                         ―天武天皇てんむてんのう―(巻二・一〇三)
 まあ これは 
 これっぽっち の雪を 
 大雪 だなんて)

十町じゅっちょうばかり先の 大原の里 
使い の戻りは すぐであった
 早速の返し文か 
 さすがに 才けたやつよ 
 なになに 
我が岡の  おかみに言ひて 降らしめし 雪のくだけし そこに散りけむ
《そらちゃうで うちの神さん お願いし 降らしてもろた 雪のカケラや》
                         ―藤原夫人ふじわらのぶにん―(巻二・一〇四)
 ははは これは 一本取られた 
 わし の負けじゃわい)

 の庭に 
久方ぶりの朝日が 照りえていた



――――――――――――――――――――
【古事記ものがたり】への誘い
古事記編纂1300年を期し 一大叙事詩を作ってみました
こちらを ご覧下さい。
【古事記ものがたり】へ

【万葉歌みじか物語】はこちら



<万葉歌みじかものがたり>へ




■リンク先

      
      

■日めくり万葉集Vol・2(185)水鳥の

2013年03月16日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【十二月十二日】放映分

水鳥の ちの急ぎに ちちははに ものにて 今ぞくやしき
《水鳥が 飛ぶバタバタで ととかかに 何も言わんと 来て悔しがな》
                         ―有度部牛麻呂うとべのうしまろ―(巻二十・四三三七)


【万葉歌みじかものがたり】《言ひし言葉けとばぜ》

唐突きゅうな呼びだし 猶予ゆうよもなしで
あたふた 準備 そこそこ別れ
残す父母ちちはは 気になるい身
残る父母ちちはは 子の無事祈る

水鳥の ちの急ぎに ちちははに ものにて 今ぞくやしき
《水鳥が 飛ぶバタバタで ととかかに 何も言わんと 来て悔しがな》
                         ―有度部牛麻呂うとべのうしまろ―(巻二十・四三三七)
旅行たびゆきに 行くと知らずて あもししに ことまをさずて 今ぞくやしけ
《長旅に 成るん知らんと かかととに 言わんでたん 悔やまれるがな》
                         ―川上老かわかみのおゆ―(巻二十・四三七六)
ちちははが かしら掻きで くあれて 言ひし言葉けとばぜ 忘れかねつる
ととかか 頭をぜて 無事でなと 言うてくれたん 忘れられんわ》
                         ―丈部稲麻呂はせべのいなまろ―(巻二十・四三四六)
ちちははも 花にもがもや 草枕 旅は行くとも ささごて行かむ
ととかか 花であったら えのにな 旅行く道を げて行くのに》
                         ―丈部黒當はせべのくろまさ―(巻二十・四三二五)
大君の 命畏みことかしこみ 磯にり 海原うのはら渡る ちちははを置きて
《国からの 仰せを受けて 磯伝い 海を行くんや ととかか置いて》
                         ―丈部人麻呂はせべのひとまろ―(巻二十・四三二八)
ちちははが 殿との後方しりへの 百代ももよぐさ 百代ももよいでませ 我がきたるまで
《家うしろ 咲く百代ももよぐさ ととかかよ 百まで生きて わし帰るまで》
                         ―生玉部足國いくたまべのたりくに―(巻二十・四三二六)
忘らむて 野行き山行き れど 我がちちははは 忘れせのかも
《目ぇつぶり 野山を越えて わし来たが おとうかあを 忘れられんわ》
                         ―商長首麻呂あきのおさのおびとまろ―(巻二十・四三四四)
月日つくひやは ぐはけども あもししが 玉の姿は 忘れせなふも
《月日だけ 過ぎて行くけど かかととの 尊い姿 忘れは出来できん》
                         ―中臣部足國なかとみべのたりくに―(巻二十・四三七八)
大君の みことにされば ちちははを 斎瓮いはひへと置きて ゐでにしを
《国からの 仰せやからに ととかかを うやまい残し やって来たんや》
                         ―雀部廣嶋さざきべのひろしま―(巻二十・四三九三)



――――――――――――――――――――
【古事記ものがたり】への誘い
古事記編纂1300年を期し 一大叙事詩を作ってみました
こちらを ご覧下さい。
【古事記ものがたり】へ

【万葉歌みじか物語】はこちら



<万葉歌みじかものがたり>へ




■リンク先

      
      

■日めくり万葉集Vol・2(184)磯城島の

2013年03月13日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【十二月九日】放映分

磯城しき島の 大和やまとの国に 人ふたり ありとし思はば 何か嘆かむ
《この国に なんであんたは 一人やん 多数ようけったら 嘆かへんのに》
                          ―作者未詳―(巻十三・三二四九)


【万葉歌みじかものがたり】《恋ひやかさむ》

恋のり取り 相聞歌そうもんか 人間模様 様々さまざま
使い待つのに 何故にん この袖濡れて ぐっしょりや
せて細るは 誰の所為せい 結ぶこの帯 三重みえの巻き
好いた あの児は 千里でも 夏草分けて 汗かいて


人間ひとなかばは 男と女
何故なぜに一人が 恋しゅてならぬ

磯城しき島の 大和やまとの国に 人さはに 満ちてあれども 藤波の 思ひまつはり 若草の 思ひつきにし 君が目に 恋ひや明かさむ 長きこの
《ここ日本やまと 人は仰山ぎょうさん るけども うちの心に まとい付き うちの心が 寄り付いた あんた一人に 逢いとうて がれ続けて 明かすんか 長いこのを 一人して》
                          ―作者未詳―(巻十三・三二四八)
                         (藤波の=藤の枝はまつわり付く)
                          (若草の=若草は青々と目に付く)
磯城しき島の 大和やまとの国に 人ふたり ありとし思はば 何か嘆かむ
《この国に なんであんたは 一人やん 多数ようけったら 嘆かへんのに》
                          ―作者未詳―(巻十三・三二四九)
   
じかえたら しずまるうが
しずまるもんか 恋うもんは

蜻蛉あきづ島 大和やまとの国は かむからと 言挙ことあげせぬ国 しかれども 我れは言挙ことあげす
日本やまとの国は わんでも 神さん加護かごを くれる国 そやけどうわ うちはう》
天地あめつちの 神もはなはだ が思ふ 心知らずや 行く影の 月もゆけば 玉かぎる 日もかさなりて 思へかも 胸の苦しき 恋ふれかも 心の痛き
天地てんち神さん 一寸ちょっとでも うちの思いを 知っとんか 月はむなしに っていく 日ィはどんどん 過ぎて行く 思い続けて 胸苦し 心痛いで がれてて》
すゑつひに 君にはずは 我がいのちの けらむきはみ 恋ひつつも 我れは渡らむ かがみ 直目ただめに君を 相見あひみてばこそ が恋やまめ
《逢えんで終わる うんなら いのちの果てる その日まで がれ続けて 死ぬ覚悟かくご そうは言うても 今此処ここで あの人じかに 逢えたなら こんな恋焦こがれは 止むのんに》
                          ―作者未詳―(巻十三・三二五〇)
大船おほぶねの 思ひ頼める 君ゆゑに つくす心は しけくもなし
《頼ってる あんたのために 尽すのん うちは一寸ちょっとも しことないで》
                          ―作者未詳―(巻十三・三二五一)
ひさかたの 都を置きて  草枕 旅行く君を いつとか待たむ
《このみやこ 離れて旅を 行くあんた うちは何時いつまで 待ったらんや》
                          ―作者未詳―(巻十三・三二五二)



――――――――――――――――――――
【古事記ものがたり】への誘い
古事記編纂1300年を期し 一大叙事詩を作ってみました
こちらを ご覧下さい。
【古事記ものがたり】へ

【万葉歌みじか物語】はこちら



<万葉歌みじかものがたり>へ




■リンク先

      
      

■日めくり万葉集Vol・2(183)高円の

2013年03月09日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【十二月八日】放映分

高円たかまとの 秋の野のうへの なでしこの花
うら 若み 人のかざしし なでしこの花

《秋の野で 綺麗きれに咲いてた 撫子なでしこばなを 
 可愛かいらしと んだん誰や 撫子なでしこばなを》
                         ―丹生女王にうのおおきみ―(巻八・一六一〇)


【万葉歌みじかものがたり】たつも》

旅人たびともと みやこからの便りが届く
丹生女王にうのおおきみ? おお あのお人か なつかしや)

高円たかまとの 秋の野のうへの なでしこの花
うら 若み 人のかざしし なでしこの花

《秋の野で 綺麗きれに咲いてた 撫子なでしこばなを 
 可愛かいらしと んだん誰や 撫子なでしこばなを》
                         ―丹生女王にうのおおきみ―(巻八・一六一〇)
 なでしこ?
 そうか 昔 出うたとき
 『ほんに 撫子なでしこのようじゃ』
と言うたのを 覚えてったか
  それにしても
 大伴郎女いらつめへの 弔辞ちょうじも添えられておる・・・
 坂上郎女いらつめめ 余計よけいなことを
 丹生女王にうとの一件 知っておったか・・・)
(ようし 礼に 美味うまい酒を送ってやろう
 わしに劣らずの 酒豪おおざけのみであったからのう)

やがてのこと 丹生女王にうのおおきみからの 返書

あまくもの 遠隔そくへきはみ 遠けども 心し行けば 恋ふるものかも
《身ぃとおに 離れてるけど しととるよ 心は飛んで かよてんねんで》
                         ―丹生女王にうのおおきみ―(巻四・五五三)
古人ふるひとの こせしめたる 吉備きびの酒 めばすべなし 貫簀ぬきすたばらむ
《吉備の酒 昔馴染なじみと 飲んだ酒 もう飲めんから 貫簀ぬきすをおくれ》
                         ―丹生女王にうのおおきみ―(巻四・五五四)

 わからん歌じゃ
 筑紫で名高い竹細工の貫簀ぬきすじゃと?
「病めば」は「老齢としで昔のように飲めん」か・・・
 ぬきす?」「ぬきしゅ」そうか「抜き酒」か
 もう酒は止めた」というか
 昔に変わらず軽口かるぐちの達者な お人じゃ)

旅人と丹生女王にうのおおきみの 便りの行きは続く

たつも 今も得てしか あをよし 奈良の都に 行きてため
《都まで 行って帰って たいんで あまけ馬を 今すぐ欲しな》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻五・八〇六)
たつを れは求めむ あをよし 奈良の都に む人のため
あまける 馬うちきっと 見つけるわ 都たいと うてる人に》
                          ―作者未詳―(巻五・八〇八)
うつつには 逢ふよしも無し ぬばたまの よるいめにを ぎて見えこそ
《逢うのんが 出来でけへんよって せめてもに 毎晩夢に 出て来て欲しで》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻五・八〇七)
ただに逢はず らくも多く 敷拷しきたへの 枕らずて いめにし見えむ
《逢わへんの ごなったけど 思慕おもてるで そやから夜毎よごと 夢出たるがな》
                          ―作者未詳―(巻五・八〇九)
軽妙けいみょう洒脱しゃだつの り取り
旅人の うつは 霧消けしとんでいた 



――――――――――――――――――――
【古事記ものがたり】への誘い
古事記編纂1300年を期し 一大叙事詩を作ってみました
こちらを ご覧下さい。
【古事記ものがたり】へ

【万葉歌みじか物語】はこちら



<万葉歌みじかものがたり>へ




■リンク先

      
      

■日めくり万葉集Vol・2(182)秋の田の

2013年03月06日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【十二月七日】放映分
秋の田の 穂田ほだの刈りばか か寄りあはば そこもか人の ことさむ
《秋の田の 稲刈りどきに そば寄ると もうそれだけで うわさなるかな》
                         ―草嬢くさのおとめ―(巻四・五一二)

【万葉歌みじかものがたり】そこ もか人の》

恋の様相ようそう 様々あるよ
初心うぶな乙女は 恥じらうばかり
鳴く鹿声と 恋焦こがれの競い
年増としま女を かまうやないで

 近く来たなら 胸ときめくよ
その声聞くと もうたまらんわ)

秋の田の 穂田ほだの刈りばか か寄りあはば そこもか人の ことさむ
《秋の田の 稲刈りどきに そば寄ると もうそれだけで うわさなるかな》
                         ―草嬢くさのおとめ―(巻四・五一二)
佐保渡り 我家わぎへうへに 鳴く鳥の 声なつかしき しき妻の子
《お前声 あいくるしいで 佐保山さほ越えて 家の上て 鳴く鳥みたい》
                         ―安都年足あとのとしたり―(巻四・六六三)

逢瀬おうせ叶うて まだ日が浅い
  ぎこちないのが これまた嬉し)

須磨すま海女あまの しほきぬの ふぢころも どほにしあれば いまだ着なれず
須磨すま海女あまの 塩焼しおやふくは ふじごろも 隙間すきまいんで 着慣きなれがせんわ》
(付きうて うてから まだあの児 わしにれんが まあ仕様しょがないか) 
                         ―大網人主おおあみのひとぬし―(巻三・四一三)

いとしあんたを 慕うてると
鹿 が鳴いてる 逢いたい見たい)

宇陀うだの野の 秋萩しのぎ 鳴く鹿も 妻に恋ふらく 我れにはさじ
宇陀うだの野で 秋萩はぎ踏み分けて 鳴く鹿も 妻にわしほど 恋焦こがれはせんで》
                         ―丹比真人たじひのまひと―(巻八・一六〇九)
あしひきの 山下とよめ 鳴く鹿の ことともしかも 我が心つま
《鹿の声 ふもとひびいて 聞こえてる うち聞きたいで あの人の声》
                         ―笠縫女王かさぬいのおおきみ―(巻八・一六一一)

(恋するのんに 年齢としあるかいな
 思うてみるが 気になるじわ

かむさぶと 不許いなにはあらず 秋草の 結びしひもを くは悲しも
年増としやから 遠慮えんりょするわけ ちゃうんやで (独り寝の)決心ちかいやぶるん 悲しいだけや》 
                         ―石川賀係女郎いしかわのかけのいらつめ―(巻八・一六一二)
今のごと 心を常に おもへらば まづ咲く花の つちに落ちめやも
《今みたい 分別ふんべつ心 持ってたら 咲いたうめはな 散らさんかった》(若気わかげいたりで 恋しくじった) 
                         ―縣犬養娘子あがたいぬかいのおとめ―(巻八・一六五三)



――――――――――――――――――――
【古事記ものがたり】への誘い
古事記編纂1300年を期し 一大叙事詩を作ってみました
こちらを ご覧下さい。
【古事記ものがたり】へ

【万葉歌みじか物語】はこちら



<万葉歌みじかものがたり>へ




■リンク先

      
      

■日めくり万葉集Vol・2(181)世間の

2013年03月02日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【十二月六日】放映分
世間よのなかの すべなきものは 年月は 流るる如し
 取りつつき 追ひるものは 百種ももくさに め寄りきた

《人の世んは ままらん 月日つのん あっゅう間
 追い来る老いは 次々と あの手この手で 攻め寄せる》
少女をとめらが 少女をとめさびすと からたまを 手本たもとかし 同輩児よちこらと たづさはりて 遊びけむ 時の盛りを
 とどみかね すぐりつれ みなわた かぐろき髪に 何時いつか しもの降りけむ
 くれなゐおもての上に 何処いづくゆか しわきたりし 

《若さはなやぐ 少女むすめらが からたま巻いて 身ぃ飾り 仲好し同士 手ぇつなぎ たわむれ遊ぶ 盛りどき
 またたく間ぁに 過ぎて仕舞て みどり黒髪 白髪しらが生え 綺麗きれえな顔に しわ増える》

【万葉歌みじかものがたり】老男およしをは》

我にかえった憶良
 この歳になって なにを 青いこと
 昔の夢を いつまで だかえているのか
 人の世を 渡ってきた者としての 老成ろうせいの歌を うたってみねば・・・)

世間よのなかの すべなきものは 年月は 流るる如し 取りつつき 追ひるものは 百種ももくさに め寄りきた
《人の世んは ままらん 月日つのん あっゅう間 追い来る老いは 次々と あの手この手で 攻め寄せる》
少女をとめらが 少女をとめさびすと からたまを 手本たもとかし 同輩児よちこらと たづさはりて 遊びけむ 時の盛りを とどみかね すぐりつれ みなわた かぐろき髪に 何時いつか しもの降りけむ くれなゐおもての上に 何処いづくゆか しわきたりし 
《若さはなやぐ 少女むすめらが からたま巻いて 身ぃ飾り 仲好し同士 手ぇつなぎ たわむれ遊ぶ 盛りどき またたく間ぁに 過ぎて仕舞て みどり黒髪 白髪しらが生え 綺麗きれえな顔に しわ増える》
大夫ますらをの 男子をとこさびすと つるぎ大刀たち 腰に取りき 猟弓さつゆみを にぎり持ちて 赤駒に くらうち置き ひ乗りて 遊びあるきし 世間よのなかや つねにありける 
《男盛りを 自慢げに 刀や大刀たちを 腰差して 狩りする弓を 手に持って 馬に鞍置き け乗って 遊び回って れる日々 何時いつまで続く 訳はない》
少女をとめらが さす板戸を 押し開き い辿たどり寄りて 玉手たまでの 玉手さしへ さの 幾許いくだもあられば 
少女むすめら休む 部屋の戸を 押し開け忍び 探り寄り 腕巻き抱いて 寝る夜は 長ごう続かん そのうちに》
つかづゑ 腰にたがねて か行けば 人にいとはえ かく行けば 人ににくまえ 老男およしをは かくのみならし たまきはる 命惜しけど せむすべも無し
《手にした杖を 腰に当て あっちへ行って うとまれて こっち来たなら 嫌われる 年取るんは そんなもん 生きてる限り 仕様しょうがない》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻五・八〇四)

常磐ときはなす かくしもがもと 思へども 世の事なれば とどみかねつも
何時いつまでも 元気りたい 思うても これが定めや 老いめられん》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻五・八〇五)

そこには まだ あきらめきれない 憶良がいた

                         (嘉摩かま三部作の三)



――――――――――――――――――――
【古事記ものがたり】への誘い
古事記編纂1300年を期し 一大叙事詩を作ってみました
こちらを ご覧下さい。
【古事記ものがたり】へ

【万葉歌みじか物語】はこちら



<万葉歌みじかものがたり>へ




■リンク先